Sacrifice統合質問スレッド【ネタバレ注意】
18:つばさ2008/01/27(日) 01:07:53 ID:9A7O3erl [himoris@hotmail.com]
Sacrifice=良いことのために何かを犠牲にするまたは犠牲になること。そして良いことを起こす、または悪いことを断ち切るために、神の前に生贄を捧げる儀式。この物語において、「Sacrifice」とは何を意味するのでしょうか?

妹が村人の犠牲になったと考えるのが一番自然。でも、私はそれだけではないと思います。このSacrificeの主人公は姉。私は姉にとってのSacrificeの意味を考えたいのです。

神に愛され、生まれつき幸せだった妹。誰からも愛される妹。妹は障害者であるという説もあるようですが、私はそうは思いません。姉はそれを妬ましく思い、さらに自分を惨めに思い、妹への嫉妬で苦しむのです。障害のある妹であれば、いくら美しくてかわいがられても、自分が健常であることに救いを見出すでしょうし、ここまで苦しむでしょうか?私は、その逆で、妹は姉にそんなささやかな救いの余地も与えないほど、どこからどこまで完璧な存在だったと思うのです。妹は文字通り、神に愛されて生まれた子。生まれつき神の子として村人から崇められ、恐れられる存在だったのではないでしょうか。だから、「一人では何もできない可愛い天使」。生まれたときから崇められ、妹が何かしようとすると、誰もが手伝ったのでしょう。

もう一つの鍵は今際の時の母の言葉。
「妹は他人とは違うから お姉ちゃんが助けてあげてね。」
死ぬ寸前まで母が気にかけ、言わなければならなかった「違い」。それはとても大きな「違い」。
村人から崇められる娘と一緒にいて、この母親は毎日どういう気持ちだったでしょう。
自分の子としてかわいいながらも、神の子として恐れ多く、また人間を超越する気味の悪い存在。恐らく、姉と同様、母親も心の中に沸き起こる様々な暗い気持ちに葛藤したことでしょう。
神の子とちやほやされているうちは、姉が助ける必要も無いでしょう。しかし、母親は、娘に対する異常なまでの村人の崇拝の行く末、娘の将来に大きな不安を感じていたのです。

妹が高熱で倒れた、それは神の子を身ごもったときだったのではないでしょうか。
そして、この母親はいち早くそれに気が付いたはずです。
その日から母親はそれをひた隠しにしたのでしょう。
娘を守りながらも、心のどこかでは信じられない。
そうこうするうち、急に自分が病に倒れる。
これは神の罰に違いない。主よ、私はあなたの子を信じ、守ることができなかった。
母親は、自分が果たせなかった役割をもう一人の娘に託します。

母親の死により、姉妹の境遇も変わります。
貧しいながらも片寄せ合って暮らすのは、村人が妹に距離を置き始めたから。
神の子の母親が突然死んだ違和感。そして目には見えない妹の変化。
男たちは優しかったが、女たちは次第に冷たくなっていく。
彼女たちは、きっと妹の変化に敏感に気づいていったに違いありません。

ある夜、妹の妊娠が明るみに出ます。
神の御子を宿したと言っても誰も信じてくれません。
「あれだけ世話を焼いたのに、恩知らず。」
神父でさえ、悪魔といって怒声を浴びせます。そしてお腹の子供ごと火あぶり。

いくら敬虔なキリスト教でも、婚姻前に子供を身ごもっただけで火あぶりにはなりません。
それは妹が「人とは違う」絶大な存在だったから。
村人たちがこれまで信じ、尽くしてきたから。
その信仰を裏切った。実は魔女で悪魔の子をみごもったに違いない!
妹は、これまでも、村人たちにとって、愛するべきものであると同時に、恐れ、気味の悪いものだったでしょう。それがこの一件で、一転して憎むべきものに変わってしまったのです。

それでも妹は村人たちを許し、その罪を一身に引き受けて死んでいきます。最後に「ありがとう」という一言を残して。
姉は妹の死を悲しみ、村人を恨みました。しかし、それだけではありません。同時に別な感情もありました。
自分を殺す村人を許す妹、死ぬって時に礼を言うなんて、どこまでお人よしで、ばかなの?私はそんなあなたを守ってやることができなかった。母との約束を守れなかった。あなたは死んでまで私を惨めな思いで苦しめるの?

葛藤で苦しむ姉はそれを解き放つために、儀式を行う。
私は「違う」。村人とは違う。私は妹を信じる。悪いのはみな村人だ。
私は「違う」。妹とは違う。私は村人を許さない。
「あなた達」がやらないのなら、私がやる。
私は「あなた達」とは「違う」。そう、私が罰を与える。

心を覆い尽くす悲しみ、憎しみ、怒り、そしてこの狂った世界を断ち切るように荒れ狂う炎。奈落に落ちていく彼女。それが彼女にとってのSacrificeの本当の意味ではないでしょうか。
以上、長くてすみません。私の妄想と笑ってください。

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