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138:岡本 2003/01/20(月) 02:54 ■中天の星々(2)■ 皇甫嵩こそが英雄と断じ、生徒会に成り代わって学園を導くようと進言した娘がいた。彼女・閻忠も、自分なりに蒼天学園の行く末を案じた上の進言だった。学園内で声望高い皇甫嵩が生徒会会長ひいては蒼天会会長に立てば学園に平安を取り戻すことができると信じていたのだ。が、皇甫嵩は、自らが立つ気が無かったことに加えて、仮にたったとしても生徒会を創りかえる方向性が把握できない以上蒼天学園を支え平安を取り戻すことはできないという気がしていたため、閻忠の進言を入れなかった。結局、閻忠は皇甫嵩自身によって追われた王国に首魁として担ぎ出されたが、自らの理想と現実のギャップに耐え切れず自己返済するに及んだ。 実際、専ら己の欲望に引きずられていたとは言うものの現生徒会へ不信感をいだき、学園のトップに立つことが学園を導くことだと考えていたものは多くいた。 涼州校区にて反旗を翻した王国、 徐州校区下邳棟で新蒼天会会長を自称した闕宣、 そして最たるは菫卓。 各騒乱の鎮圧では様々な不手際を示し、常に皇甫嵩の風下にいた菫卓は、生徒会会長就任後、彼女を呼び出した。 『うふ〜。卓ちゃんの方が凄いって義真ちゃんにも分かったでしょ〜。』 『あなたがここまでくるとは正直思いもよらなかったわ。』 『卓ちゃんは前から凄かったのよぉ〜。義真ちゃんが知らなかっただけだよぉ。』 『昔は、2人とも虎だったが、今あなたが獅子になったということよ。』 半分は本心だった。自ら餌をとる虎に対して、ライオンのオスはハイエナや他の群れのライオンを追い払うが自らは餌をとらない。菫卓は、諸悪の根源であった生徒会執行部員“十常侍”の残余を駆逐し、王允等著名な生徒を役員として抜擢、生徒会の運営を自分の恣意に反しない範囲で活動させた。自分には“十常侍”を処断する決心は付かなかったし蒼天会や生徒会役員を利用しようという考えも起こらなかった。結局菫卓は、生徒会に寄生することで残された余力を食いつぶした。 そしてその獅子、いや餓狼の食べカスを4頭のハイエナが争っている。自分が奪おうとしている舞台は、最早自力で立つこともできない状況にあることを理解しようとしていない。自分が舞う機会を作ってくれた舞台が倒れるのを見るに偲びないという理由で、倒壊確実の柱を支え続けている皇甫嵩も、蒼天会や生徒会の幻想から逃れられない点では彼女らとかわりない。 生徒会会長辞任に付属する様々な事務手続きを済ませていると、朱儁や楊彪が押しかけてきた。李傕の暴挙に悲憤慷慨する彼女らに皇甫嵩は心に期していたことを告げる。 「幕を下ろすべきときがきたのよ。もとより地位に執着していたわけじゃなく、蒼天学園の安寧を願い戦ってきた。その点では人後に落ちるつもりはない。李カクの如き小人に最後までいいようにされる気はないわ。連中の暴挙を認めたわけではないことをこの身で 示す。」 「義真、まさか…。」 皇甫嵩と共に幾多の騒乱を潜り抜けてきた朱儁には彼女の思案が読み取れた。 「あなた一人だけ逝かせる訳に行かないでしょう!私も...。」 「駄目よ。」 ピシャリと朱儁の口を封ずる。 「一人なら、あの連中も意味を深くは考えないでしょう。」 「だからといって、黙って耐えられるか...。」 「ここで全員が軽挙妄動して、劉協会長にご迷惑をかけるわけにはいかないのよ。」 彼女らをなだめているうちに時間が流れ、学生寮についたのは夜遅くになってしまった。 休むことなく机に向かうと封筒を取り出し、宛先をしたためる。 中華研究学園都市 蒼天学園事務部学生課 御中 便箋を一葉抜き、ペンを走らせる。修辞とは縁のない用件は一行で事足りた。 − 一身上の理由により、課外活動の終了を申請いたします。− 胸の階級章を取り、折った便箋と共に封筒へ収め、口を閉じる。 上着を羽織って、封筒片手に外へでる。今夜は冷え込みそうだ。 寮の外は春先で寒かった。加えて深夜ということもあり、明かりのついている寮も少なくしんと静まり返っている。 カタン、パサッ ポストに投函するだけの作業だ。だが静寂の中、封筒の落ちる音は想像以上に耳に響いた。 ふと、頬に眦から毀れた温かいものが伝うのを感じる。 「未練など、とうに振り切ったものと思っていたが…。」 ピッと、頬に伝う液体を指でぬぐい上を向く。満天の星空だ。13校区の上に輝く1つ1つの星は、混乱期の今まさに勢力拡大を推し進める各地の群雄のようだ。その中には、将来の生徒会を担うものと嘱望されたものの、何進政権崩壊後の菫卓の横暴から現生徒会での立身を断念し、菫卓に抗った者たちがいる。彼女らは自分と違い、蒼天会の伝統という呪縛に過度に捕らわれてはいない。忘恩の徒と評されようと彼女らなりに学園を導こうとする活気が今は必要とされているのだ。大地を支えることができるものは巨人か英雄。 河北の巨人、汝南の巨人、兗州の英雄。 ・・・袁紹、袁術、曹操・・・この学園のこと、頼むわね・・・。 中天にて他を圧倒せんと輝きを競う数多の星々にともすればかき消されそうではあるが、長安棟を守護するかのごとくその上に確かに蒼く瞬いていた数個の星。その1つが今、堕ちた・・・。
139:岡本 2003/01/20(月) 02:58 >教授様、アサハル様 正に、一服の清涼剤!! 堅い文章しか書けなくなっている私には甘露ですね。 >郭攸長若様、惟新様 お2人の作品に触発されて書いて見ましたが、お邪魔なだけ だったかもしれません。参考になれば幸いです。
140:惟新 2003/01/20(月) 19:15 >教授様 おまけ2とは…ありがたい! うはぁ〜またもや艶やかな! 憐れ孫乾、悲惨な姿に(^_^;) でもって簡雍また沸いて出たか(w いいキャラですわ、簡雍タン… >郭攸長若様 伝説は終わらない! 皇甫嵩第二弾!! 身の毛のよだつような董卓と、カコイイ皇甫嵩タンの対比がいいですね〜! >そろそろ「せっていすと〜り〜」は止めて普通に投稿 お待ちしてます〜! >岡本様 援護射撃キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!! 心底ありがたいっす!! ぜひ参考にさせていただきます〜 これほどの名作にストーリー上で続くのが私の駄文というのが申し訳ないですが(^_^;) やっぱり皇甫嵩ほどの大人物にはこうした花道を用意すべきですね〜 私ナンゾガテケトーニ挿入センデヨカタヨ… にしても…やっぱカッコいいわ、義真タン…
141:惟新 2003/01/20(月) 19:59 >ぐっこ様 >アサハル様 >「旭記念日」 これは確実に祭りになりますね。 では、我らの責務として当日もしくは翌日の朝までに我らが聖地「南北本命テイクオフ」神宮を訪れる「旭詣」をいたしましょう。 可能な者は旭姫にご挨拶すること。挨拶では三村つっこみ必須(マジかよ さらに可能ならばご供物を捧げ、それがSSならば事前にしょーとれんじすと〜り〜スレッドに奉納、神のご降臨を待つこと。 …いや、出来ればの話ですよ、挨拶と供物は(^_^;) それと、向こうの方々にご迷惑をおかけしないようにしましょう(お前が言うなよ
142:★ぐっこ 2003/01/21(火) 00:11 うおっとお! またしても逸作が数々投下されている! 皆々様感謝! >アサハル様 (;´Д`)ハァハァ…いま小細工考え中…。アレの方はやはり隠しつくって… >郭攸様、岡本様 そして皇甫嵩! にわかに義真祭ですが(^_^ いずれの作品も非常にイイ! 案外まったりしてる董卓もそうですが、皇甫嵩 にしても通底する意思は他人には読みづらい。 そのなかでも、皇甫嵩は一本の道を守ったのですから…もっとファンが増えて しかるべき人物ですな… >惟新様 委細承知。
143:★ぐっこ 2003/01/21(火) 00:14 ていうか、今頃13,16日くらいのメールがパラパラ到着。 惟新様の鍾ヨウたんの続きあり! 諸君ら期待せよ!
144:アサハル 2003/01/21(火) 00:17 皇甫嵩・・・悲しいほど格好良すぎます・・・(つДT) 萌え〜なんて軽々しく言えません・・・ 何というか、こういう群雄割拠の時代には合わない人だ・・・ ・・・で、岡本様&郭攸長若様に感謝しつつ、また調子に乗ると。 http://homepage2.nifty.com/radiance/g3/post.jpg >惟新様 あにょ〜・・・ 何かこう・・・こそばゆいんですが・・・(;・∀・)
145:教授 2003/01/21(火) 02:34 >郭攸長若様 内に秘めた熱き孤高の魂…皇甫嵩をここまでかっこよく書かれるとは…。 正に見事としか言いようがないです。 皇甫嵩のイメージが更にグレードアップされました! >岡本様 皇甫嵩…感動しました! 一行の短い手紙と涙…それだけでも彼女の心情がひしひしと伝わってきました! 真面目なお話を書ける事は素晴らしい事だと思います。 私はあんまり文章上手くないので、文章構成や創造力に驚くばかりです。 岡本様や郭攸長若様を見習って修行に励もう…。
146:惟新 2003/01/21(火) 19:50 >ぐっこ様 あ〜今ごろ届きましたか(^_^;) 郵送事故か何かだろうと思い、三月にでも手直しして送り直すつもりでしたが… 届いたのならそれでOKです。年明けでお忙しいでしょうから、 お暇なときにでもよろしくお願いします。分量も前作比二倍以上ですし。 なお、第三部は三月にお届けする予定です。 ひょっとしたらもう一部増えるかもしれませんが。 >アサハル様 まぁその、讃える日ということで(^_^;) それはそうとして、涙の義真タン! 素晴らしい… 見ているとぐっと来て、引き込まれるような作品ですよ。 こうした情感溢れる作品を生み出されるのは素晴らしいことです。 てかもの凄く羨ましいです…(←人物しか描けない奴
147:教授 2003/01/21(火) 23:11 ■■法正と眼鏡と写真■■ 「ウチのメガネ知らんか?」 「はい?」 会議室に入ってきた法正。 いきなり帰宅部連合総長、劉備にメガネの所在を尋ねられたのだ。 その劉備は人に尋ねるだけの事はあり、メガネを掛けていない。 法正の目には主がやたらと新鮮に映っていた。 メガネを外した劉備を見るのはこれが初めてだったからだ。 当の劉備はメガネを探して必死な様子。 「メガネって…頭に乗ってるのがそうじゃないんですか?」 法正は含み笑いをしながら答える。 「へ? あーっ! ホンマや!」 頭に手を伸ばし、自分のメガネを確認する劉備。 すちゃっと装備すると、いつものように微笑む。 「おーきにな。まさか、自分の頭に乗っとるなんて思わんかったわ」 「灯台下暗しって言いますし。意外な身近に落とし穴があるんですよね」 相槌を打つと法正は自分の席に移動する。 と、自分の席に置いてあるギンガムチェックの包装紙に包まれた小さな箱に気付いた。 それも、ご丁寧に『法正様専用』と書かれてある。 訝しげにその箱を凝視する法正。 「部長〜。この箱…何ですか?」 取りあえず疑って掛かる法正は部屋にいた劉備に尋ねる。 「さあ…ウチが来た時にはもうあったで」 「そうですか…」 贈り物と思しき正体不明の箱を前に悩む法正。 「これ…開けてもいいのかしら…」 箱を持ち上げて周囲をチェックしながら呟く。 重量は軽すぎと言っても過言でない程無かった。 「ま…いっか」 妥協したのか、包装紙を丁寧に取り除いていく。 そして本体が露わになった箱のフタを開けると…。 「……は?」 そこにはメガネがすまし顔で鎮座していた。 言葉を失う法正。 「なんやったん? …メガネか?」 劉備が後ろから覗き込んでくる。 メガネに興味があるのだろうか、法正に了解を取ってそのメガネを掛けた。 「うわっ…なんやコレ…。度が入ってないやん…」 霞む視界に慌てて自分のメガネを掛け直す劉備。 「度が入ってない? じゃ…伊達メガネなの、これ…」 伊達メガネと聞いて、ある事を思い出す法正。 以前、諸葛亮がメガネを掛ける掛けないで話(一方的だった)を持ちかけてきたのだ。 「…………」 法正は伊達メガネに手を伸ばすと、軽い気持ちで装着した。 すると次の瞬間、ロッカーがけたたましい音を立てて開き… 「もらった!」 …の声と、同時に飛び出してきた簡擁がシャッターを切った。 無論、ファインダーの視点はメガネを掛けた法正。 びっくりしたような顔の劉備と法正。 どうやら事態が呑みこめていないようだ。 それをいい事に簡擁が二度三度とシャッターを切りまくっていた。 フラッシュを何度か浴びると流石に誰でも我に返る。 「簡擁〜!」
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