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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
156:教授2003/01/24(金) 00:41AAS
■■帰宅部解散 〜非業の烈女〜■■
「なんで…なんでなんだよ!」
会議室に轟く怒声と打撃音。
声色に違わぬ形相の少女は、主であり実の姉でもある少女に詰め寄る。
「劉シンさん、落ちついてください!」
周りにいた幹部達が怒りの炎に燃え上がる彼女を宥めにかかる。
「うるさい! どけっ!」
少女は幹部達を押しのけ、姉の前に仁王立ちする。
彼女の名は劉シン。
帰宅部の創設者、劉備玄徳の妹だ。
熱く潔い性格は帰宅部内から益州校区でも有名だった。
最も、どれほど小さい事でも納得できない事や卑怯な振る舞いを良しとしない厳しい性格は周りから疎遠を呼ぶ事になっていたが。
その劉シンは今正に怒りの限界点を振り切っていた。
「…禅姉、悪い冗談はよせよ…。降伏? …ははっ、そんなわけないやろ?」
乾いた笑みを浮かべ、姉――劉禅の肩に手を置く。
と、劉シンの手に信じられない感覚が伝わった。
「禅姉…、何で震えてるんだよ…」
「…………」
上目遣いで劉シンを見る劉禅。
その瞳には、怯えの色が見て取れた。
――姉は…自分に怯えている…の?
そんな思いが過った時だった。
「貴方みたいに威圧するだけじゃ駄目なのよん」
人を食ったような口調。
全員が声の主に振り向く。
そこにいたのは、黄皓であった。
「あんた…か? 禅姉にいらん事吹きこんだんわ!」
劉シンの怒りは、黄皓に向いた。
今にも飛びかからんばかりの勢いだ。
しかし、劉禅の口から劉シンを絶望させるに十分な言葉が飛び出した。
「シンちゃん…恐いから遠く行って…」
「禅…姉…」
劉シンは愕然とすると同時に体の力が抜けていった。
「禅姉は…この…玄姉や孔明さんや張飛さんや関羽さん達が必死に守ってきた帰宅部を…そんなあっさり放棄するんか…?」
つぅ…と劉シンの頬を涙が伝う。
それは鮮烈な赤だった。
――血涙を流す程の訴え。
だが、それが劉禅に伝わる事はなかった。
劉禅は俯き、妹と顔を合わせないように背け続けていたのだ。
「ほら、部長命令よん。さっさと出て行ってね〜」
黄皓が劉シンの背をぽんっと押す。
その顔には勝ち誇ったような嫌らしいものが浮かんでいた。
その場にいた幹部達も顔を背け、誰一人として劉シンを見ていなかった。
「こんなん…納得できん…」
震える小さな声、小刻みに揺れる肩。
「…こんな…こんな運命に従うくらいやったら…」
劉シンは階級章を引き千切る。
「こんなもんいらへん!」
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