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185:岡本 2003/02/16(日) 22:16 雪月華様に触発されたSSです。西暦と学園暦の間の時間関係が 怪しくなりますし、版権とかの問題もあるかもしれませんのでこちらに。 ■広宗のG・P・M(1)■ ここは豫州校区は鉅鹿棟。その一室で20名ほどの生徒たちが卓に着いて なにやら話をしている。現在、広宗に展開している張角の妹・地公主将の 張梁が率いる軍団との戦いに備えた生徒会軍の作戦会議中である。波才を 破った皇甫嵩をもってしてもこの軍団を討伐することは難事であった。 数が多いこともあったが、最大の難点は張角の「天使の声」にあった。 張角が肉声で歌えなくなった今でも、オーディオで流される“天使の声” の威力は健在で、 蒼き 美空に 影落ちて 我ら いまこそ 黄を纏え 時は 来たれり 甲子に 平和 いや増す 学園に 揃いのT-シャツ、黄色のバンダナ装備の黄巾軍がこの張角の歌う“黄巾の マーチ”をBGMに意気をあげ、彼女らも歌いながら遮二無二進軍してくるの である。恐怖以外の何物でもない。 「ウチ、思うんですけど、歌には歌で対抗する、というのはどないでしょう。」 黄巾軍討伐に義勇の徒として参加した劉備新聞部という総員4名の超弱小 サークルの長が発言した。生徒会の役職はおろかまだ、10円玉階級章す ら得ていないが、黄巾軍の大方(大隊長級)の一人・程遠志をその副官の 茂ともども飛ばし、潁川地区長社棟付近で暴れていた波才の撃破にも功が あったということで席を与えられていたのである。 「…それは考えはしたんだけどね…。」 その場にいた生徒会軍の指揮官たちが全員、苦笑する。 正規軍だけでも生徒会軍全体の3倍はある黄巾軍はカリスマ歌手・張角の 歌声をその行動力の基幹としている。生徒会軍にもその影響は強く、ひど いときには耳栓をつけて戦ったこともあるくらいだ。これを断ち切れば黄 巾軍は瓦解する。が、相手は“天使の声”の持ち主だ。これを超える歌い 手は存在しない。だから、これまで生徒会軍は張角の歌声が届かないとこ ろでの戦いはよく挑み、勝利をしてはいた。が、数が利せてなおかつ大型 オーディオの投入が可能な大会戦は不利と見て挑まなかったのだ。 何とか“天使の声”を封じ、張梁との大会戦に挑む。これが懸案事項であった。 歌には歌で対抗するというのは封じる方法のひとつではある。 決まれば一発で戦いの趨勢が決まるが、外れれば目も当てられない。 まさにハイリスク・ハイリターン。誰もが考えはするが、やろうとし なかった所以である。 「一人でやろうとするから駄目なんで、皆でやったら何とかなるんとちゃいますぅ?」 “そう単純にいかないと思うけどねぇ…。” 提案こそしなかったが、曹操も真っ先に考えた案であった。だが、難問がある。選曲だ。 誰もが歌いやすく、ノリがよく、知名度が高いというのが軍歌の必須条件だ。 全員が一種の没我状態にならないと意味が無い。それに勢いにのっている相手を揺さぶる ためには、相手に聴かせる必要がある。それなりの声の持ち主がリーディングで必要だ。 つまり、最初の問題に立ち戻ってしまう。 なまじ本人にも詩や音楽の才能があるため、相手の強さが身にしみて理解できるのだ。 「…あのぉ、ウチらに任してもらえんやろか…。」 言いだしっぺということを超えてこの生徒は食い下がってくる。勝算があるのか? 「何か、考えがあるのでしょう。彼女らに先行させてやらせてみてはどうです?」 曹操の助言もあった。4名を先に出して、とりあえず効果のほどを見ようというのだ。 生徒会軍総指揮官・皇甫嵩は作戦の是否を思案してみる。 成功すれば儲けもの。失敗しても全軍と別に先行させた4名が飛ばされるだけ。 「よし、分かった。明日の会戦に先立って試行してもらおう。」 「関さん、翼徳、憲和。やったで、明日、試してみぃってことになった。」 劉備の帰りをまっていた3名に会議の決定を嬉々として報告する。案が通るか 不安で待ちくたびれていたこともあり、よっしゃぁ、やりぃと張飛と簡雍は歓 声を上げる。作戦案を出した関羽は表には出さなかったが、流石に気を揉んで いたのだろう、落ち着いた態度は崩さないが安堵の表情が浮かぶ。 「ところで、関さんに出だし頼みたいんやけど…。」 「えー!!姉貴ぃ、オレじゃ駄目なのかぁ?」 やる気満々の張飛が口を出す。 「翼徳、カラオケやろうというんとちゃうんやで。それとも何か、 選曲これやけど、あんたやったら最初っからノリノリで外さんと いけるんか?!」 「ウゲッ、これでやるんか?うらむぞ、憲和。」 「違う、選んだのは玄徳よ!!」 「確かにこの案を出したは私ですが…。本気ですか、姉者。」 関羽と張飛は選曲として、数曲をあげていた。そこから劉備と簡 雍で選んだのだが…。いや、関羽自身が歌には歌で対抗すると考 えついた時点で最初に頭にうかんだ候補ではあった。 誰もが歌いやすく、ノリがよく、知名度も高いという軍歌に必要 な条件は満たしている。だが、余りも素で歌うにはこっ恥ずかし い歌なのだ。 “…そういう時だけ私に頼みますか…。” 劉備に策を述べた時点でこうなる覚悟はしていた。ただ、やるには条件がある。 「ひとつ伺いますが、明日はどこで迎え撃ちます?」 もしこの策が当たればやり方次第では殲滅戦にできる可能性がある。 しかし、黄巾軍の中で本当に学園騒乱の責任を取らねばならない人物 は限られている。おそらく劉備は殲滅戦はとらないだろうが、関羽と してはこの義姉の真意を確認しておきたかった。 「ウチは正面から行くつもりや。失敗しても後ろにおる皇甫嵩先輩に 迷惑はかからへん。それに、深く考えんと勢いで黄巾に参加した連中 はできる限り逃がしてやりたいしなぁ。」 罠を張らず正面から挑むなら黄巾軍の真後ろは空っぽだ。総崩れにな った際に逃げ切れる数は多い。 “この人に任せて間違いはなかったな…。” 「分かりました、その役承ります。」 「後言っとくけど、2人とも明日この格好して指示通りやってな。」 「かーっ、マジ?!赤っ恥を曝せってか?」 「…毒を喰らわば皿までですか…。」 劉備に指示書を見せられて、天を仰ぐ張飛に額を押さえる関羽。 「さすがにあれはやりすぎなんじゃない?」 肩を落として出て行く二人を心配そうに見ていた簡雍がたしなめ るが、劉備は気にした様子はない。 「憲和、心配せんでもええって。大丈夫、あの2人いざとなった らノリノリでやるから。あ、そうそう、あんたにも大事な役ある からそのつもりでなぁ。」 「…あのね…。」
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