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227:雪月華 2003/03/09(日) 23:38 I・G・Vの戦い −後編− 「姉者、もう少しです。静かなことから察するに、誰もいないようですな。」 「それにしても、人がこんなに苦労してる時に憲和はどこいったんや!」 「ここよ。」 「へ?」 劉備が顔をあげると、上では簡雍が微笑んでいた。 「い、いつの間に…」 「自転車道の脇に、昔の戦場の名残の地下道の入口があってさ、そこ辿ったら上に出れたの。出口で何人か竹刀もって警備してたけど、黄巾巻いてたら黙って通してくれたよ。」 「…その手があったか。」 「あんた達じゃダメ。幹部を何人か飛ばしてるから顔を知られすぎてるし。よいしょ。」 簡雍は3人を引っ張り上げながら笑った。 不意にステージの左手から3人が飛び出してきた。張宝の傍に侍立していた2人が誰何の声と共に駆け寄る。短い格闘の後、2人は関羽と張飛に叩き伏せられた。劉備が2人の前にずいと歩み出る。50人の聴衆はあっけにとられて身動きができない。 「貴様ら!生徒会か!?」 「あんたらの暴走によって迷惑をこうむった生徒代表っちゅうところやな。」 「この国賊が…」 女性ながら詰襟の学生服に身を包み、目に血光をみなぎらせた張宝が、日本刀を抜いた。水銀灯の光を照り返し、刃が不吉に光った。真剣である。周囲の空気が凍りつく。 関羽が劉備をかばうように一歩進み出た。右手には木刀が握られている。 「関さん!」 「お任せあれ。」 白刃を目の前にして、驚くほど静かな声。 「その器に見合わぬ力を持てば、その力はその器を砕く。それがその刀であり、多数の黄巾党であった。剣を引け。」 「小生には大和魂がある!亡国の非国民など斬り捨ててくれるわ!」 「聞こえておらぬか…」 「鬼畜米英!天誅を受けよ!」 張宝が袈裟懸けに斬りかかって来た。関羽は一歩踏み込むと無造作に木刀で刀を払う。澄んだ音がして張宝の刀が鍔元10cmを残して折れた。関羽はそのまま張宝の左手側に抜ける。続いて張飛が踊りかかり、例の三節棍で残った刀を叩き落として、右手側に抜けた。 「浪速の一撃!受けてみいや!」 劉備の愛用のハリセンが野球のアッパースイングの要領で張宝の顎に叩き込まれた。 20人を連れて前線についた時、後方で騒ぎが起こった。風も弱まってきている。劉備達にキャンプファイヤーが消され、張宝が飛ばされたか、と厳政は思った。うろたえる50人に対し、厳政は怒鳴った。 「地公主将が飛ばされた!神風ももうすぐやむ。逃げたい者は講堂の背後から陽城棟へ逃げるといい!」 「厳政先輩はどうなさるのです!?」 「あたしはここに残る。残って一人でも多く生徒会の連中を飛ばす。」 もとからいた30人が逃げ去っていった。残ったのは連れてきた20人だ。 「あなたたちも、ばかね。」 「ばかで結構です。がんばりましょう!」 風が弱まったことに気づいた下の生徒たちが、50人ほどで登ってくるのが見えた。 ぎりぎりまで引きつけ、ありったけの石を一斉に投げつけた。不意を疲れた50人は大混乱に陥る。石がなくなり、鍔無しの竹刀をとった厳政は白兵戦の指示を出した。 戦闘が収まり、二十数人を倒された生徒会は撤退していった。厳政の部下も7人が倒れ、苦しげにうめいている。それを見て厳政は心が痛んだ。 「もういい。あなた達も逃げなさい。」 「できません!」 「あたしは張宝とは物心ついたときから友達やってる。せめて、最後まで付き合ってやる義務があるのよ。あなた達はあたしについて2ヶ月しかたっていない。最後まであたしに付き合う必要はないわ。」 「たった2ヶ月でも部下は部下で…」 「利いたふうな口きいてんじゃねえよっ!!」 思い切り頬を張った。その女生徒は2m吹き飛んで気絶した。 「いいか、これ以上あたしに「いい人」をやらせてくれるな。まだわからないなら、あたしがあなた達を飛ばす!わかった!?」 「…」 「わかったなら、そいつら連れてさっさと逃げなさい。」 そういって背を向けた。しばらくして、背後の人の気配が消えた。 「やられた!?あの厳政って女…やるわね。どうしようか…」 「人海戦術。それしかあるまい。20、30と小出しにしても地形を利用されて犠牲者が増えるだけだ。幸い、風もやんでいる。障害はほとんどないはずだからな。」 人海戦術。中国人民解放軍お得意の戦法であり、少数の強敵に対して圧倒的な大軍をぶつけるのである。とにかく飛びかかり、のしかかり、引きずり倒す。 「全員突撃!一気に陽城棟まで押し切る!」 皇甫嵩のハスキーボイスが鉄門峡にこだました。 山道の麓から黒い川が逆流してくるように厳政は見えた。400人の突撃である。 「来ると思ったけど、いざ実際に見ると凄いわ…」 厳政は呟くと竹刀を構えた。下から道幅一杯に広がって400人が川のように走り登ってくる。不意にその川が二つに分かれた。あっけにとられる厳政の左右を数十人が駆け上った時、後ろから右肩に誰かが抱き付いてきた。もう一人に竹刀がもぎ取られる。反射的に振り上げた左手に二人が抱きついてきた。腹部に鈍い衝撃が走り、地面に引きずり倒された。意識が遠のく… 「張宝…義理は果たしたわ…お前が一日も早くまともに戻ることを…期待するわ。」 厳政の意識はそこで途切れた。 こうして、張角の入院からわずか2日で、張宝、張梁の姉妹は共に飛ばされた。まとまりを失った黄巾党は生徒会によって駆逐されてゆき、学園には束の間の平和が訪れることになる。 次の日、冀州校区総合病院の門の前に一人の女生徒が立った。皇甫嵩である。 蒼天学園。実地で覇を学ぶこの学園では、その校風ゆえ入院患者が発生しやすい環境にあるため、保健室では間に合わず、各校区にひとつずつ、入院設備の整った病院が誘致されている。学園医師会の医師が常時詰めているが、医師会会長の「神医」華陀は非常勤であり、興味の引く患者のいる校区を行ったり来たりしている。 張角は反乱の首謀者ではない。だが、学園を混乱させた元凶としての処分は与えねばならない。本当は温厚な魯植に行ってもらいたかったが、生徒会を退いた後、夏風邪を引いて寝込んでいた。頼める状況ではなかった。 「気の重い仕事だ…手負いの天使を狩らねばならんとはな…」 そう呟くと、皇甫嵩は病院の門をくぐった… −−−−−−−−−−−−−−−−− ふと浮かんだので、鉄門峡の戦い(横光風に劉備軍奇襲、張宝戦死)を書いてみました。 厳政がかなりかっこよくなってますが、原典どおりに、形成不利になって親玉の首を差し出した、ではなんとなく学三の雰囲気にそぐわないので、少年ジ○ンプ風に友情、努力、熱血をアレンジしてみました。結果的には裏切ったことになってるし。 簡雍、何気に大活躍(^^;)。あんなこと書きましたが、未成年の飲
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