★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
342:★教授2003/09/14(日) 23:09AAS
■■ 帰宅部連合夏の陣! 〜第三章〜 ■■


「あの〜…これでいいんでしょうか…?」
 孫乾がもじもじと恥ずかしそうにプールサイドに現れる。
「スレンダーでええなぁ…うん、よく似合っとる」
 劉備の微妙な褒め言葉。しかし、それも孫乾には嬉しかったらしく素直に安心したようだ。
 ちなみにこの水着は孔明が『こういう事もあろうかと…』とか言いつつどこからか取り出したのだ。
 しかし、その水着はスクール水着。明らかに萌えを狙ったもので『そんかん』と平仮名で書かれたネームラベルが綺麗に縫い込まれていた。その場にいた一同が変な汗を流した一時であった。
「うむ。萌えポイント1000点を献上しよう」
「う、嬉しくないです〜…」
 満足げな孔明の言葉には複雑な顔をする孫乾。
 そんな彼女を二人の刺客が挟撃する。
「よーし、第二ラウンドだーっ!」
「いぇーっ!」
 張飛と雷同が絶妙なテンションで孫乾を担ぎ上げると、そのままプールの中に拉致していった。
「ふぇぇ…」
 困ったような泣き出しそうな表情で大人しく攫われる孫乾。彼女らしいと言えば彼女らしい。
「さて、私達も泳ぎにいきましょうか」
 黄忠と厳顔もゆっくり立ちあがると軽く柔軟体操を始める。
「孔明と子仲はどうするの?」
 すっかり回復した法正が何故か着崩れしていた水着を物陰で直しながら二人に尋ねた。
「私は遠慮しておきましょう」
「私も…もう少し眠ります」
 やんわりと遊泳を拒否する孔明とビ竺。一体何しに来ているのだろう。
「ウチはそろそろ泳ごかな…」
 ストレッチを入念に行いながらメガネを外す劉備。その途端、孔明の目の色が変わった。
「総代! 今日は泳がれない方がよろしいかと!」
「な、なんやねん。ウチが泳ぐくらい別にええがな」
「いいえ。今日のプールには不吉な空気が漂っております! 何かに取り憑かれますぞ!」
 ずずいと劉備に迫る孔明。目がかなり真剣だ。
「さ、さよか…。でも、今泳いでるあいつらにも言うたらな…」
「彼女達ならば大丈夫でしょう。紛がりなりにも我等が帰宅部の強者、凶兆など撃退する事です。しかし、総代にもし何かあれば…私は悔やんでも悔やみきれませぬ!」
「孔明…ウチの事をそこまで考えてくれてんのやな…。よし、分かった! 今日はここで日光浴してる事にするわ」
 孔明の言葉に感銘を受けた劉備はメガネを掛け直すとビニールシートの上に横になった。
「………(ふぅ…これで総代がメガネを外すという緊急事態を回避する事が出来たな。流石は私、見事な口上だ)」
 単にメガネを外されたくなかったらしい孔明は安心しながら自画自賛を脳内で行っていた。
「あっつぅ…」
 簡雍はアイスキャンディーを口にしながら気だるそうにプールサイドで足だけ水に浸けていた。元々インドア派の彼女にはそろそろ夏の日差しがきつくなってきている模様。
「それそれ〜っ」
「きゃーっ!」
 一方、プールでは猛烈な勢いで泳ぐ張飛に引張られる孫乾が可愛い悲鳴を上げていた。
 少し離れた所では雷同が黄忠にラリアットを、厳顔にドロップキックを食らっている。鬼神と化した二人の攻撃によって沈められた雷同の手には二人分の水着の上が握られていた。
 固く握り締められた手を無理矢理こじ開けようと奮闘する黄忠と厳顔。相当焦っている事が誰の目にも明らかだった。当然、こんなおいしい演出を見逃すパパラッチはいない。
「ナイスショット。連写モードで撮るよ〜」
 だらだらとアイスを咥えていた簡雍が突如覚醒。デジカメとビデオを構えて激写し始める。
「こらぁっ!」
 やっと雷同の手から自分達の水着を取り戻した黄忠と厳顔が簡雍に向かって猛然と水を掻き出した。
「あははっ。捕まるようなヘマは私はしないよ〜」
 悪戯っぽく笑うと手提げバッグから『ある物』を取り出して二匹の野獣に投げつける。
「な、なんだ…コレ。…いいっ! 誰の下着だよ!」
 黄忠は掴み上げたその『ある物』…誰かさんの下着に動揺と驚きを隠せない。大人っぽいその黒の下着に完全に困惑しきってしまう。
「ああああっっっっ!!!! それ…私の下着だーっ!!!」
 簡雍と反対側のプールサイドで法正が真っ赤な顔をしながら叫び声を上げた。
「今日は楽しかったよ♪ じゃ、また明日ねー」
 全員に向けて投げキッスを贈ると簡雍はさっさとプール場から出て行く。
「ま、待てえええぇっ!」
 怒りと羞恥で完全に紅潮しきった法正が簡雍を追っかけていく。
「法正まで行っちゃった…。…これ、どーしよ」
 びよーんと下着を広げながらまじまじと見つめる黄忠と厳顔。後で返せばいいと思う。
「もう一本いくぞーっ!」
「うう…もう勘弁してくださいー…っきゃー!」
 半べその孫乾を引張りながら縦横無尽に泳ぎまくる張飛。楽しそうではあるが中々に可哀想な光景だ。
 そんな喧騒を目を細めながら見ている劉備と孔明もいそいそと撤退準備を始めていた。

 こうして、騒がしくも楽しい一日が終わりを迎える。
 乙女達を照らしていた太陽が沈み、再びその姿を現す。
 それは飽くなき戦いの日々の訪れを乙女達に知らせる。
 これより後、今までよりも過酷な運命が彼女達を待ち受けている事を誰も知らない――


――翌日
「待てっ! 憲和ーっ!」
 怒りのオーラを発しながら簡雍を追いかける法正。
「そんなに怒るなよー。…あ、そうだ」
 逃げながら何かを思い出した簡雍。その直後に彼女の口から飛び出した言葉は法正の怒りに油を大量にぶちまける結果になる。
「昨日…『のーぱん』で帰ったの?」
「こ、ここここ…コロスーっ!!!」
 髪を逆立てながら簡雍を追う鬼女、法正。その目は殺意に満ちていた。
 いつもの鬼ごっこを繰り広げる二人が劉備の横を走りぬける。
「…本当にいつも通りやなぁ。さ…漢中制圧作戦、気張ろか…」
 ふぅと溜息を吐くと劉備は静かに会議室のドアを開く――
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