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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
387:那御2003/12/20(土) 01:51
どさどさどさっ。
「あ・・・」
鍋が見る間に真っ赤に染まっていく。
中蓋が取れて、七味が一瓶、鍋の中に投入されたのだった。
「うわ〜、こりゃあ辛いぞ。」
顔は全然深刻では無い甘寧が、言う。
「あたしは辛いの平気だもん。」
「俺様も平気だが。」
「モーちゃんも大丈夫だったよね?」
「うん。」
彼女らは、調理台で顔面蒼白になっている陸遜には、全く気付かずにいる。
(あぁ・・・舌が死ぬ・・・)
陸遜は、辛いものが大の苦手だったりするのだった。
「これってさぁ・・・どっかの民族料理に近いよな。」
「インド料理だよね・・・誰がやったのよ!」
「子敬がやったんじゃん・・・」
特に深刻さを感じない三人は、ずっとこの調子である。
「そういえば秋刀魚は?」
「あれ、切ってある。残念!これも鍋に投げ込んでやろうと思ったのに・・・」
「じゃあ、教科書にある、蒲焼のタレっていうヤツを作るとするか。」
呂蒙が、教科書を片手に、
「醤油と水と砂糖で作るんだとよ。」
「砂糖醤油じゃんかよ!餅でも焼いて食うか?」
「ハハハハ!」
秋刀魚に小麦粉をつけて、ようやくひと段落、と落ち着いた陸遜だったが、
目の前にある光景を見て、再び昏倒しかけた。
あきらかに、蒲焼のタレが多い。
鍋いっぱいに蒲焼が満たしてあるのだ。
「ちょ、ちょっと・・・蒲焼って焼いてる秋刀魚にタレをかけて作るものじゃなかったですか?」
「ん?しらねぇよ。とりあえず伯言、秋刀魚貸せよ。」
甘寧は、魯粛の手から、秋刀魚の皿を奪い取ると、それを一気に鍋に放り込んだ。
「あ・・・」
秋刀魚の蒲焼は、一瞬にして秋刀魚の蒲茹でと化し、グラグラと鍋の中で茹でられていくのであった。
「ご飯どう?」
「噴いてる噴いてる!」
「火ィ止めろ!」
「え・・・、止めるんですか?」
「当たり前だろ!噴いてるんだから!」
(蒸らさない気だ・・・)
陸遜は、白飯ですらマトモに食べられないであろう、自分の不運をまた呪うのだった。
「いよ〜しっ!かんせ〜い!」
魯粛が大きく伸びをして言った。
「うわ・・・」
陸遜は、わが目を疑った。
豚汁とは思えない、燃えるように赤いスープ。野菜は粉々である。
さらに、蒲焼とは程遠い、煮物に近い秋刀魚。茹で過ぎたために、身はボソボソになってしまっている。
そして、白飯も、水を吸っていないうえ、蒸らしてもいない。かなりの覚悟が必要だろう。
「さぁ〜て、食うか!」
甘寧が音頭をとっての、食事タイム開始である。
まずは、魯粛が、豚汁入り七味スープをすする。
ずずず・・・。
「・・・うげっほ!げふん!げふん!」
むせ込んで座り込む魯粛。
「ありゃ?おい、子敬?」
「げほん!げふん!」
(うわぁ・・・魯粛さんでもああなる代物を・・・)
陸遜は、数分後に自分の身に降りかかるであろう、この惨劇を、三度呪った。
「甘寧・・・ちょっとまずかったんじゃないか?」
「でも・・・子敬が自分でやっちまったんじゃん。」
「まぁね・・・」
「じゃ〜、残りのスープを誰が飲むか、きめようぜ!」
「え!?」
甘寧は、これを飲まない気である。
(ひ、卑怯だ・・・)
「じゃあ、ジャンケンだな。」
「せ〜の、だっさなきゃ負けよ〜、さ〜いしょ〜はパー!」
・・・ぱー?
「よっしゃ!陸遜の負け!」
「やったぁ、助かった〜!」
「そ、そんなぁ・・・」
(今時、「最初はパー」で勝負してくる人間がいるとは、予想だにしなかった・・・)
「さぁ〜て、まだまだたくさんあるからな、陸遜、頼んだぜ!」
「あぁ・・・」
「ってか、俺らこれから魯粛を保健室に連れて行くから、お前一人で全部食べとけ。」
「えぇーーーーっ!!?」
「じゃ、そういうことだから。」
ピクリとも動かない魯粛を抱え、甘寧と呂蒙が走り去っていく。
「・・・そんな殺生なぁ・・・」
翌日、陸遜が喉と胃の痛みにより欠席したのは、言うまでもない・・・
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