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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
444:はるら 2004/04/17(土) 14:09 ■平和なひと時■ 「だぁ〜〜〜〜〜!!!遅〜れ〜る〜!!!」 平穏そのものの学園に一人の少女の声が響き渡る。 「あっ、伯珪先輩!!どうかしたん〜!!」 「やや、玄徳!お前こそ何やってる?きょう授業あるぞ!!」 「ええぇ!!!!先輩マジ!?」 「嘘ついてど〜すんだよ!!!また盧植先生に怒鳴られるぞ!!・・・てもういないし」 伯珪と呼ばれた少女はまた駆け出した。 所変わって盧植先生の部屋。 「……遅い………」 盧植先生が呟いたその時、 「ギリギリセ〜フ!」劉備が部屋に猛ダッシュで突入した。 「いえ、47秒遅いです」 「ってえぇ〜!!なんで秒単位なん!?」 「…まぁ、1分以内ですから特赦としましょう」 そう言って盧植先生、ドアを閉める。 ドドドドドドォ〜〜!!!!! 「えっ??何かしら???」 その時公孫サンがドアにスライディングをかまし、ドアが吹っ飛び、 盧植先生に激突した!! 「どりゃ!!!よっしゃ〜!!ギリギリセ〜フ!!!」 劉備心の声「(どこがやねん!?)」 「は、は、伯・珪〜〜〜〜!!!!!!」 「え、えぇ〜??(先生キレちゃったよ、ちょっとドア吹っ飛ばしただけじゃん)」 「あなたはどうしてもっとおとしやかにできないんですか!?」 公孫サンため息をつきながら 「い、いや、先生それは先生だって・・・」 「なにか?」盧植先生、先手を打つ。 「う、(先生、顔は笑ってるけど目まで笑ってない。む、むしろ怖い…)」 劉備心の声「(っは!これはピンチや!!伯珪先輩にとってもあたしにとっても!!)」 「(こりゃ、なんとかせな・・・!!あれや!!!)」 「せんせ〜!このクッキー食べていい〜!?」劉備が話を変えようとする。 「な、げ、げ、玄徳〜〜!!!!!」 「は、はぅ〜!?(ミ、ミスった〜)」 公孫サン心の声「(馬鹿でしょ!?)」 ―何だかんだで2時間経過― 「…………わかりましたか?二人とも!」 公孫サン「へぇ〜い」 劉備「(先輩、やる気ねぇ〜)は、はい!!」 「よろしい」 「本来なら今日は英作文のテストをしようと思っていましたが、 あなたがた二人のせいで見事潰れてしまいました」 公孫サン&劉備の心の声「(イヤッホ〜〜〜!!!!!)」 「なので今日は不本意ながら英単語のテストをしましょう♪」 「大差ねぇ〜」公孫サンがやる気のない声をあげる。 劉備心の声「(鬼や、本物の鬼がおる・・・!!)」 「コンコン」ノックが鳴る。 「どなたですか??」 「しーちゃん元気ぃ〜!?」朱儁が現れた!! 公孫サン心の声「(先生が、先生が『しーちゃん』!?)」公孫サンは吹き出した。 しかし劉備が公孫サンの口をふさいだ。 「伯珪先輩、今度こそ死んじゃいますよ!?」 「…しーちゃん、あの子達…」朱儁が劉備と公孫サンを指をさす。 盧植の目は恐ろしく凍りついている。 「こーちゃん、お願いだからちょっと部屋から出ててくれない???」 「…えっ、いいけど。……あの二人かわいそーに」そう言って朱儁は部屋を出た。 盧植先生、足早に二人を間合いに詰める。 「あっ、先生!……いつもながらスマイルが素敵ですね!!」劉備は適当に誤魔化した。 「ふふふ、ありがと、玄徳。……と・こ・ろ・で伯珪、どこに行くのかしら??」 さっさとエスケープを試みる公孫サンに魔の手が!!! 「…えっ!!あ、あ、先生……、いやちょっと…」口ごもる公孫サン。 その時、公孫サンは秘計を閃いた!! 公孫サン心の声「(こ、これだ!!)」 「あっ!!!先生このクッキー食べていいですか!?」 劉備心の声「(何考えてんねん!?)」 「あなたもですか!?……あなた達二人はそんなにクッキーが食べたいのですか!?」 盧植は怒りを通り越して泣きかけている。そんな盧植の様子を見かねた朱儁が 「ほら!しーちゃん!!しっかりして!!!嫌なことは皆で飲み明かして吹っ飛ばそうよ!!…ね」 「あなた達も飲みあかそ〜♪」 かなり陽気な朱儁を前に公孫サンは怖気づいた。 「い、いえ遠慮させてもらいます。仲のいい先輩二人で飲んでください。な、なぁ玄徳!?」 「あ、そりゃええ!先輩方二人でど〜ぞ!」 「ふ〜ん、じゃ、しんちゃんと建ちゃんも誘って飲もぉ〜!!!」 盧植と朱儁は部屋を出て行った。と思ったら盧植がドアからひょっこり顔を出して言った。 「…伯珪、玄徳、今日はまともな授業ができなくて申し訳なかったと思います。 ………しかし、宿題は出させてもらいます。 …今日の反省文を400字詰めの作文用紙10枚以上で書いてくること。今日はこれだけにします。 くれぐれも体には気をつけるように。……では、また明日」そう言って盧植は行ってしまった。 部屋に沈黙が漂う・・・。 「な、なぁ玄徳、盧植先生まだ怒ってるよ」 「せやね、いつもの1.5倍は宿題でとるで」 「しかも明日までって先生あたし達を殺すきか!?」 ―5時間後、皇甫嵩の部屋― 「で、なんで私の部屋なんだ!?」 「うっわ〜!!義真、ひっど〜い!!! しんちゃんのセンチメンタルな感情を蔑ろにするつもり!?」 「そうそう!!しんちゃんがかわいそーだよ!!!」 「け、建陽、おまえもか!!」 「……ぎ、ぎし〜ん!!もうやだよぉ〜!!!」 「って、し、子幹……!?」 盧植に思いっきり抱きつかれ困惑する皇甫嵩。 それを見て笑っている朱儁と丁原。 ―同時刻、劉備と公孫サンは・・・― 「…玄徳、何枚終わった??」 「………二枚。先輩は??」 「……一枚半……」 ひたすら文を書きまくる劉備と公孫サン。・・・でもあまり進まない。 色々あったけど今日も平和な一日でした。 ― 平和なひと時 完―
445:はるら 2004/04/17(土) 14:10 盧植と公孫サンと劉備、どうしてもこの三人の逸話が書きたかったんで書いてみました。 7thさまのスレを一部参考にさせて頂きました。 書いてみてはじめてわかったんですけど、大阪弁ってムズイですね。 何か文章的におかしい部分もあるかと思いますが生暖かいスルーをお願いします(爆
446:惟新 2004/04/19(月) 23:05 盧植先生のありがた〜いご指導には劉備も公孫[王贊]も適わない! はるら様GJ! 勢いを感じさせる作品ですよ〜! 劉備の必死な誤魔化し方とその結果がとても可愛らしいです(*´Д`) そしてクッキーワラタ。なかなかツボを心得ていらっしゃいますよ〜!
447:★ぐっこ@管理人 2004/04/20(火) 01:14 はるらさま、グッジョブ!!(b^ー°) 盧植とて、後輩たちのまえでは先生でいたいようですし(^_^;) 昔劉備と公孫瓉が机を並べていた光景って、こんなカンジだったのでしょうね〜。 あのころは朱儁も皇甫嵩も丁原も居なかったので、非常にスムーズに授業が… 出来る分けないか、この二人が生徒なら(^_^;) 盧植先生は、学三的にもっと書き込みたいキャラ。演義の無口っ娘はできれば無しの 方向で…
448:那御 2004/04/20(火) 01:42 いやぁ、はるらさまGJ! 相変わらず人気抜群の盧植先生、そして最強(笑。 両名、「頭はさほど悪くないのに授業を聞かないからできない」を地で行ってますな。 そして言い訳でスベりまくる二人に爆笑。
449:国重高暁 2004/04/20(火) 16:41 [takaaki@wb3.so-net.ne.jp] ■■ 将軍の飼い方 ■■ 「呂奉先さん、いらっしゃいますか?」 「いるよ。入っといで」 いつもどおりのぶっきらぼうな口調で、安楽いすの呂布は来客を室内に迎えた。 ここは、下ヒ棟の徐州校区総代室。 元来の校区総代である劉備が、関羽らを率いて袁術を攻めた隙に、棟を守っていた張飛らを呂布が駆逐し、この地を制圧したのである。 「そりゃそうと、あんたはどこの何者よ?」 「お初にお目にかかります。私は、蒼天会の役員で韓胤と申します」 「そ、蒼天会?!」と呂布はマルボロを一服噴かした。 「蒼天会って、もはや袁グループのお嬢様に乗っ取られるほど権威が墜ちてるじゃんか。今更そんなとこから使いをよこすなんて……一体どういう風の吹き回し?」 「申し上げます。実は、その袁お嬢様が、妹をあなたのプティスールにしたいとの思し召しで……」 「プティフール?! 旨そうじゃん。あたいにもちょうだい」 「いえ、そうではございません。プティスール、つまり、妹分にしていただきたいので……」 「あんたを?」 「私ではございません。袁お嬢様の妹でございます」 袁お嬢様とは、もちろん、先日から蒼天会長を勝手に名乗り始めた袁術のこと。 自分の宿敵たる劉備を呂布が庇護したので、妹を彼女のプティスールにさせて懐柔し、地盤の安定を図ろうというのである。 しかし、呂布は首を縦に振らなかった。 「韓胤ちゃん、あたいをプティスールなんか取る柄だと思って?」 「では、一昨年、丁建陽さんのプティスールになられたのはどこのたれでしょう?」 「うっ……」呂布は困惑した。 丁建陽は名を原といい、もと生徒会執行部員の一人である。 しかし、董卓が会長職を奪うと、プティスールの呂布に裏切られ、階級章まで剥奪され、今春、失意のうちに高等部を卒業していた。 「確かに、丁先輩はあたいのグランスールだったけど……あんなもん、出世の手がかりにすぎなかったわ!」 「奉先さん、なんということを……」 「とにかく、嫌といったら嫌だかんね!」 「あの、ケホッ……そんなに、ケホッ、ケホッ……嫌ですか?」 呂布の噴き出す紫煙に咽びながら、韓胤は更に言葉を続けた。 「袁お嬢様は、妹をプティスールにする見返りとして、あなたを蒼天会書記に任命するとの思し召しですが……」 「そんなもんに釣られるあたいじゃないわよ。さあ、とっととお帰り!」 「奉先さん。あくまで固辞するのでしたら、私自らの手であなたの階級章を……」 「聞き分けのない娘ね。みんな、やっておしまい!」 呂布の号令である。たちまち、室内のそこかしこに隠れていた彼女の部下たちが次から次へ飛び出し、逃げ帰ろうとする韓胤を、あっという間にしばきあげた。 捕縛された韓胤は階級章を剥奪された上、制服を引き裂かれ、実にあられもない姿となったのである。 翌日、呂布の部下の一人・陳登は韓胤を連行し、許昌棟の「蒼天通信」編集室へ乗り込んだ。 「編集長、いらっしゃいますか?」 「いるわよ。入っといで」呂布そっくりの応対である。 「お久しぶりです。下ヒ棟の陳登と申します」 「あら、こちらこそ……って、その縛られてる娘は一体?」 編集長の曹操が韓胤に目配せすると、それまで押し黙っていた彼女が漸く口を開いた。 「韓胤でございます。南陽棟の袁お嬢様の思し召しで、彼女の妹をプティスールにしていただくべく、呂奉先さんの所へ参ったのですが……」 ここで、陳登がすかさず縄目を解く。 「固く拒絶された上、私をこのような姿に……シク、シク」 慟哭する韓胤の制服はズタボロに裂かれ、階級章もついていなかった。 「さすが奉先ちゃん、ひどい仕打ちね……それはそうと、元龍ちゃん」 「はい?」曹操の突然の質問に、陳登は驚きを隠せない。 「将軍の飼い方について、あなたはどうお考えかしら?」 「しょ、将軍の飼い方ですか……」彼女はしばし考え込んだ。 やがて、陳登は自分の脳内を整理すると、曹操にこう語った。 「将軍を飼うのは、虎を飼うようなもんだとわたしは考えてます」 「それはなぜかしら?」 「満腹時、つまり任務を負ってる時はいいんですが、空腹時、つまり任務のない時は、ひたすら暴れ回って手がつけられません」 「なるほど……」と曹操が小さくうなずいた次の瞬間、彼女の反論が陳登を襲った。 「あいにく、わたしはそうは思わないわ」 「とおっしゃいますと?」 「将軍を飼うのは、鷹を飼うようなもんよ」 「と、鳥の鷹……ですか?」 「ええ、そうよ」 「それはなぜでしょう?」 「獲物、つまり野望があるうちは必要だけど、それがなくなれば不要になっちゃうからよ」 「正に『狡兎死して走狗烹らる』ってわけですね」 「そういうこと」 曹操は私見を説き終えると、大きく伸びをしてから、傍らの缶コーラを一気に空けた。 続いて、陳登が先刻とあべこべに曹操へ質問する。 「孟徳さん。あなたは、呂奉先さんをどんな方だと思いますか?」 「うーん、あいつは……ボブ=サップみたいな娘ね。タイマンで勝負させたら、かなうやつなどたれもいやしない。蒼天じゅうが『学園に呂布あり』などと誉めそやすのもうべなるかなって感じ」 曹操の回答は正鵠を射ていた。実際、呂布は「鬼姫」と渾名されていて、喧嘩の強さはおろかバイクの運転技術も学園一……というのが専らの評判である。 しかし、イバラにもとげあり。 陳登は、そんな彼女の無二の汚点を見抜いていた。 「あいにく、わたしはそうは思いませんね」 「っていうと?」 「はっきり言って、彼女は……接着剤みたいな娘です!」 「せ、接着剤?!」 狐につままれたような曹操に、陳登は呂布の本心を打ち明ける。 「呂奉先さんは、ただ強いだけで計画性のかけらもないんです。目先の利益に流されるまま、昨日はあの娘、今日はこの娘と接着を繰り返してきました」 「それで?」 「新学期に入ってからも、劉玄徳さんを追い落として徐州校区総代の座を奪い、ただ今は南陽棟の袁お嬢様を飛ばして、蒼天会長の称号を我が手に収めんと必死になってます」 「ふーん……それで、あたしにどうしろと?」 「孟徳さん! 彼女を飛ばすため、早急に軍を下ヒ棟へ差し向けてください。わたし、いざとなればあなたに寝返りますから」 「わかったわ。南陽棟を奪う前に下ヒ棟を押さえとけば、いい行きがけの駄賃になるし」 一礼すると、曹操は何やら文書を作り始めた。 「元龍ちゃん、今日は奉先ちゃんの本心を暴いてくれてありがとう……さあ、今すぐこれへサインして」 陳登は、彼女の示した文書に目を通すと、二つ返事で署名捺印した。 新たなる広陵棟長の誕生が、「鬼姫」退学の端緒を開いた瞬間であった。 糸冬
450:国重高暁 2004/04/20(火) 16:54 [takaaki@wb3.so-net.ne.jp] いかがでしたでしょうか。 今回の出典は「綱鑑」です。 曹操と陳登との談義が実に 面白いので、SS化してみました。 政略結婚については公式設定がない(?) ようなので、「マリア様がみてる」風に 「スール(義姉妹)の契り」と表現して みましたが……これで宜しかったでしょうか? 以上、国重でした。
451:はるら 2004/04/20(火) 17:56 国重高暁さまはじめまして、はるらです。 早速ですが読ましていただきました。国重高暁さまグッジョブ!! 呂布が接着剤・・・。思わず「おぉ!!」と感嘆してしまいました(^_^;)
452:岡本 2004/04/20(火) 18:36 ■ 邂逅 ■(1) 「あれっ、憲和。この写真って…。」 帰宅部連合写真部の記録保管庫にて整理作業中に一休みしてアルバムを見ていた法正はその中にあった一枚の写真に目を留めた。アルバム自体もほこりの多い片隅に平積みと保管が悪かったため、ほとんどの写真はセピア色に色褪せていた。 法正が課外活動からの引退を決意したのは高2の12月。帰宅部連合の一員としてやりたいことは先週の漢中アスレチックス攻防戦の勝利で大体終え、受験を考えての惜しまれながらの早期引退を行ったのである。1つ上の悪友というべき簡雍も卒業を控えてほぼ同時期の引退を決意。以後、帰宅部連合を揺り動かす大事件が連続して起こることは神ならぬ彼女らには予想もできなかった。 ともかく、2人は年明け1月の引退を考えた引継ぎ作業に12月の中旬はてんてこ舞いであった。もっとも、主として引き継ぎ作業で忙しかったのは運営の重鎮であった法正の方で、ものぐさな簡雍のほうは帰宅部連合劉備新聞部写真班班長および帰宅部連合写真部部長であったのだが、書類仕事は前々から全部後輩に投げていたので事務上の手続きの手間は実質皆無であった。 なのに今、保管庫の整理を法正がしているのは新聞部と写真部に残された簡雍の管理物品(のはずの物)の整理に駆り出されたからである。当初は簡雍の手伝いをしていたのであるが、肝心の簡雍がすぐにサボるため、法正も途中で忍耐を切らし、気晴らしに古いアルバムを見ていた。 本当に闇に葬らねばならない、墓場まで持っていかねばならないような社会的に政治的にヤバイ代物、あるいは金になりそうな物件は簡雍自身がちゃっかり安全なところにいち早く動かしていたのだが、それ以外のあまり重要でないか重要そうに見えないもの、公的に発表して問題ない物は“やはり”新聞部の私物棚に投げっぱなしになっていた。こういう物件に関して簡雍は自分の手から離れた瞬間存在自体を忘れることも多々あるので、最初のファイル閉じのような整理作業自体も行ったのは実際にその写真を使用した別人であるに違いない。 当然、荊南地区を制覇して正式に帰宅部連合が発足した今年度初頭以前のネガやデータファイルは全て処分されている。片隅に積み上げられていたこのアルバムもそれ以前のものであるため、もはや焼き増しもできず後は朽ちる一方である。 セピア色に色褪せた写真には、満開の桃の花のした、筵に座って甘酒が入っていると思われる器を手にした人物が3人写っている。折りたたんだ三節棍を腰に挿し片膝立てて座り、左手に杯を持ち右手でヴイサインをしている張飛に、刀袋を脇に正座して両手に杯を持ちカメラに向かって穏やかな笑みを浮かべる関羽、そして二人の間で甘酒の入っていると思しき酒瓶と切り分けられた肉料理を載せた皿を前において、胡坐をかいた劉備が右手の張り扇を肩に担ぎ、左手に杯を持って、二カッと朗らかな笑顔を向けていた。また3名とも制服ではなく私服姿である。劉備はトレードマークの赤パーカーを緑のシャツとジーパンの上に羽織っている。関羽は黒のシャツとベージュのチノパンの上にカーキ色のトレンチコート。張飛はオレンジ色のタンクトップの臍だしルックにデニムパンツとジージャン。 日時は3年前の3月3日。劉備、関羽、張飛そして簡雍がまだ中等部3年もしくは新高1としての期待に胸を膨らませていたであろう時期である。それに日付。“桃の節句” 間違いない、“ピーチガーデンの誓い”の写真だ。 最近の帰宅部連合の隆盛はすさまじく、劉備、関羽、張飛の所謂“ピーチガーデン三姉妹”の名は蒼天学園でも知らぬものがない。 −我ら三姉妹、蒼天学園に入学した時期は違えど、願わくば同じ年、同じ月、同じ日に引退せん。− “ピーチガーデンの誓い”は彼女らの交誼の固さを示すものとして既に学園の伝説となっている。帰宅部連合の前身である劉備新聞部発足時に、資金・印刷機器と取材の足を提供してくれた張世平と蘇双の縁者が現在、幽州校区における3姉妹関係のグッズやイベントに関しての権利を持っている。例えば、該当地の幽州校区涿地区のピーチガーデンにおいては、“ピーチガーデンの誓い”で当の三姉妹が食したという“桃園結義ランチ”なる便乗メニューがあったりする。 だが、その誓いが存在したかの真偽のほどが疑問とされていた以上、このメニューに付属する話も疑わしい。3人も初期の活動区域は涿地区だったため、ランチ自体はどの時期にかは食べていた可能性はある。つまり決定的な証拠がないのである。 ピーチガーデンの宣伝パンフに“ピーチガーデンの誓い”の説明として、咲き乱れる桃の花のした、劉備が差し上げた張り扇に両脇に居並んだ関羽と張飛がおのおの居合刀と連結式三節棍を交差させている写真が添付されているが、この写真は人差し指を突きつけての“異議あり”の連発である。3名とも蒼天学園“高等部”の制服姿であるし、つけている階級章も当時着けていたと思われる1円玉でなく高額の紙幣章である。第一、3人ともいかにも“やらせ”と分かるぎこちない笑みを浮かべている。この写真自体は実際の年以降、おそらく今年の春に撮影されたものであることは明らかである。 当事者の3名に聞けば一発で分かると思われるが、3名の名がここまで大きくなった今、“あれはあったのですか”と直に聞けるほどの度胸の持ち主はほとんどいない。とはいえ、宴会の席等でぽろっと漏れた情報が皆無というわけでもなかった。法正は、その証言内容を思い起こしてみた…。
453:岡本 2004/04/20(火) 18:37 ■ 邂逅 ■(2) 尋問内容: “3年前の3月3日 幽州校区涿地区ピーチガーデンであったことを証言してください。” 証言その1:赤パーカーと眼鏡着用の張り扇娘 「3年前なぁ、あの年は暖冬で桃の開花が早かったから桃の節句に花が咲いたっちゅうんでピーチガーデンに翼徳とバイトついでに花見に行ったんは覚えとるわ。もうひとりいたような気もするけどな…。そうそう、行った先でたまたま関さんに会うたんやった。“関さん”って呼び出したのもあの日からやったなぁ…。せやせや、関さん昔から年の割りに落ち着いてて貫禄あるから、てっきり上級生と勘違いしてもうてなぁ〜。」 韜晦が巧みなのか、大事な情報は多いものの直接関係のある証言はどうしても引き出せず。ゆさぶればゆさぶるほど脱線するようにも思えたので尋問は中断。 証言その2:長身の美髪嬢 「…私が蒼天学園に入学した日ですね。私は姉者や翼徳に出会い、共に蒼天学園での3年を過ごそうと心に誓いました。それで充分ではないでしょうか。」 核心は突いてるがあまりにも漠然に過ぎる。取り付く島もなくこれ以上の証言は引き出せず。 証言その3:スタイル抜群の格闘娘 「う〜ん、先週の宿題の内容忘れてるアタシが3年も前のこと覚えてると思うか?いや、そこで頷かれるとなんか腹立つんだけど。…あのときから姉貴たちにはほんと頭あがんねぇんだけどな。でも今やったら…。あ、やべ、姉貴や関姉には言うなよ。」 忘れた振りをしているのか本当に忘れているのかが判明しないところもあるが、何かをごまかそうとしているのは確かである。だが、釘を刺していたのが義姉二人らしいので尋問は断念。 はっきり“誓い”が成されたかは証明されなかったものの、3年前の3月3日に幽州校区涿地区ピーチガーデンの桃の花見で3人が出会ったことは間違いない。 興味深いのは劉備の「もうひとりいた」という発言である。 劉備新聞部の最初期メンバーは劉備玄徳、関羽雲長、張飛翼徳、簡雍憲和であるが…。 「この中にそのもう一人がいるのよね…。しかも見方を変えると2人…。」 ケース1:簡雍憲和 簡雍は劉備の幼馴染であり、劉備との縁はもっとも長い人物のはずであるが“ピーチガーデンの誓い”は3人姉妹である。 ケース2:関羽雲長 劉備、張飛、簡雍の3名とも蒼天学園の本籍地といってよい最初の登録は幽州校区涿地区内である。関羽の本貫は司州校区河東地区解棟である。このときが初対面だった可能性もある。 が、“もう一人”が関羽だと後の証言に繋がらないし、ピーチガーデン“3姉妹”である事実との矛盾が説明できない。 「…ここらあたりの矛盾に証言がはかばかしくない答えがありそうね…。」 その答えをくれそうな人物は法正に片付けの仕事を任せてサボっていた。 確かに重要人物の一人であることには間違いないが、うかつにつつくと何が出てくるか分からないのと、成都棟開放を除けばあまりにも蒼天学園の公務には関わってこなかったので誰もが尋問をスルーしていた人物でもある。彼女に尋問できる人物はごく限られている。ピーチガーデン3姉妹と諸葛亮、つきあいのある運営庶務三羽ガラスのあと二人である糜竺と孫乾を除けば法正しかいない。 「…どーした、孝直、仁王立ちになって。」 「どーでもいいわよ、キリキリ白状なさい!3年前の3月3日、何があったか。あんた知ってんでしょう!!」 「おいおい〜そんな昔のこと覚えてるわけ…。何、その右手で高々と差し上げた如何にも重そうなアルバムは?」 「いや、ショック療法してあげようかと…。」 にこやかに微笑みながらアルバムを振りかぶる法正に、流石に粘る限界を感じたのか簡雍は内心はともかく急いで寝転んでいたところから起き直った。これを見てとばかりに突きつけられた一枚の写真に、ほぉと目を丸くする。 「…しっかし、よくこんな写真見つけたよねぇ〜、アタシ自身今見せられるまでふと忘れてたのに…。」 あやしい。今の3姉妹の株を考えれば正統的に金を儲けられるこんなお宝写真を撮ったことを簡雍が思い出さないはずはない。何かしら忘れたあるいは積極的に忘れたがっていた理由があるはずである。 「…話してもらえるわよね、何があったか。劉備新聞部の最初期メンバーのあんたが知らないはずはないものね…。」 予想はできるが、この相手は転んでもただではおきない。 「じゃあ、対価は片付け全部やってくれるということで…。」 「うぐっ、多すぎ!せめて3分の1!もともとあんたの仕事なんだから!」 「誰も知らない情報なんだからねぇ〜。3分の2!」 「半分!これ以上は負けられないわよ!!」 「…ま、そこで手を打ちますか…。」 意外にすんなりと商談成立。 「...(ひょっとして謀られた?)…。」 なんとなく納得のいかない表情をしている法正に、簡雍が写真を見ながら思い起こしつつ話したのは次のような内容だった。 ***
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