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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
477:★ヤッサバ隊長 2004/04/28(水) 00:29 てな訳で、三国志ファン(特に蜀ッカー)ならば良く知っている龐統初登場のエピソード+αを書いてみました。 本人視点からの内容という事で、あまり目新しいネタを入れられなかったのはアレですが…。 ちなみに後半部分の龐統卒業時の話に、矛盾点などのツッコミがあれば遠慮なく指摘をお願いします(^^;
478:玉川雄一 2004/05/01(土) 21:45 ◆ 学園世説新語・第六話 〜豪華三本立て! 荀勗の名門でいってみよう!〜 ◆ はぁい、アタシは荀勗。潁川の荀氏っていったらみんなも聞いたことあるんじゃないかな? 自分で言うのもなんだけど、まあちょっとしたお嬢様ってわけなんだなこれが。 …あー違う違うの、別にそんなこと自慢したいんじゃなくて! 今日はね、アタシの実力の程をちょこっとだけご披露しちゃおうってわけ。 清流会の七光りじゃないってところ、よーく見ておいてね。それじゃいってみよー! ★ その1・絶対音感頂上対決! ★ えーと、やっぱり自慢になっちゃうかなあ? アタシってば音感には自信があるのよ。 これは決して思いこみじゃないんだよ? オーケストラ部の人たちだって認めてくれてるんだから。 それで、みんなが使ってる楽器の調律をやったわけよ。 そうそう、どうしても合わせられない音階がひとつあったんだけど、 アタシは以前に趙で聴いたカウベルの音がそれだ!って閃いたの。 さっそく趙の学区からありったけのカウベルを集めてもらって調べたら、 そのものズバリの音が見つかった、なんてこともあったわね。 ちょっとした大仕事だったけど、効果のほどは覿面ね。 試しに演奏してもらったら、これまでよりは確実に音が良くなっていたわ。 微妙な、本当に微妙な差なんだけど、分かる人には分かっちゃうんだな。 『闇解』(これでも褒め言葉よ)なんて呼んでもらっちゃって、悪い気はしない… のだけど。 一人だけ、そうたった一人だけ文句ありそーな顔をしてる娘がいたの! その娘は阮咸。ほら、阮籍っているじゃない? 気分のままに好き放題しててさ、 何様のつもり? ってカンジでアタシは嫌いなんだけど… って、ごめんあそばせ。 その阮籍の従妹なんだけど、悔しいけど音楽のセンスはなかなかのものを持っているのよね。 クラシックギター同好会をやってたりするんだけど、 ズバリ彼女の名前がついた“阮咸”なんてモデルが人気らしくてね。 ううん、別に羨ましいわけじゃないのよ? アタシは他人の実力だって認める…つもりだし。 なにせ彼女も『神解』なんて呼ばれちゃってね、まあ学園でも指折りの音感を持ってるって評判なの。 で、アタシが気に入らないのはよ? 言いたいことがあるんならはっきり言えばいいのに、 アタシの調律した演奏を聴いててもなーんだか文句ありげな顔して黙ってるのよ! あーもうムカつくったらありゃしない! さすがのアタシも腹に据えかねて、 始平棟長に左遷してやったわ。あら、ちょっと意地悪だったかしら? ……でね、ここからはオフレコなんだけど。 倉庫の掃除をしていたら、学園設立のころに使われていたモノサシが見つかったの。 これがまた年代物のくせに、もうこれこそがスタンダードっていう精巧さだったわけよ。 それでこっそり調べてみたら、どうもアタシの調律はびみょーにズレてたんだなこれが。 でもでも、ちょっぴりよちょっぴり! ほんの黍(あわ)一粒分だけだったんだから! …そりゃ、アタシだって完璧ではないってことよ。謙虚にならなきゃね。 でも癪だから阮咸には言わないでおくわ。 ★ その2・違いの分かる女 ★ えーっと… そうそう、たしか、安世(司馬炎のこと)が蒼天会長になってからのことだったんだけど。 ちょっとしたパーティーをしよう、って話になってね、 そしたら安世が趣向を凝らした内容にしよう、とか言い出して、 まああの娘もちょっとかわってるところがあったんだけどさ、タケノコご飯を炊く、ってことになったのよ。 何とも渋い趣向もあったもんだけど、 安世はそりゃもう乗り気で材料の調達やらかまど(本格的!)の手配から指示して回ってたっけ。 さて、当日になってみれば気合いを入れただけあって、出来映えはさすがのものだったわね。 みんなたいがい舌の肥えた(それなりに、ね)連中ばかりだったけど、絶賛の嵐で安世も喜んでたわ。 そこで水を差すつもりはなかったんだけど、アタシは気付いてしまったの。 「これ、使い古しの木を薪にしてかまどの火を焚いてるよね」って。 みんなは信じようとしなかったけど、かまど担当の生徒に訊いてみたらどうしても薪が足りなくて、 古いリヤカー(というか大八車ね)を解体してその車輪の木を使ってたんだって。 どう、アタシの目利きもなかなかのものじゃない? え? 薪が違うと何か影響があるのか、ですって? そりゃアレよ、ご飯の炊きあがりとか、味の染み込み具合とか… だからァ、その辺の微妙な機微がね、違いの分かる女ってやつなのよ! 続く
479:玉川雄一 2004/05/01(土) 21:51 ★ その3・仁義なき戦い“潁川死闘編” ★ アタシは親戚がいっぱいいるんだけど、おなじ潁川の鍾氏なんかは家族ぐるみで色々お付き合いがあるの。 ウチの文若(荀彧)従姉さんや公達(荀攸)従姉さんもお世話になった元常(鍾繇)従姉さんなんか、 同じ女の子のアタシからみても憧れちゃうぐらい素敵な人で! 一緒に活動できなかったのが残念なんだけど、その元常従姉さんの妹がね… とくに士季(鍾会)! アイツはもう天敵ね。 あのマセガキってばちょっと口が達者だからって憎ったらしいてばありゃしない… ごほんごほん! えーと、まあともかく士季とはちょっとばかし相性が悪いっていうかウマが合わないっていうか。 で、ウチの実家にはちょっと自慢の(これは自慢していいわよね)ルージュがあるんだけど。 母さんが愛用してて、自然な感じなんだけど自己主張も忘れないっていうか、 よくぞこの色を選んだ! みたいな逸品なわけ。それをあの士季が目を付けてね。 まったくどこで覚えたのやら(※『学園世説新語』第四話参照)使ってみたい、とか言い出したのよ。 当然、そんなこと許すつもりはなかったんだけど… 士季ってばあろうことかアタシの筆跡を真似て手紙を偽造すると、母さんの所から取り寄せちゃったの! 信じられる!? それで本人知らんぷりして返そうとしないんだから腹が立つったらありゃしない! だいたい騙される母さんも母さんよ! いくら身内(実は母さんは鍾氏の出身なの)だからって、 実の娘の筆跡を偽造されても気付かないなんて… それだけアイツの腕前が立つってことなんだけどね。 それどころか、母さんってば『士季ちゃんにもちょっと貸してあげればいいじゃない』なんて、 あーもう姪には甘いんだから! マセガキの得意げな顔がちらついて堪らないわ。 で、他人の助けは借りられないと、アタシはひとりでも戦うことを決意したの。 突然だけど、アタシは絵の方もちょっと心得があってね。美術部と漫研からスカウトされたこともあったっけ。 その線で行こうと決めたところにちょうどいい突破口が開いたってわけよ。 士季とそのすぐ上の姉の稚叔従姉さん(鍾毓。まあこの人には個人的な恨みはないんだけど)が、 寮の部屋を改装したの。二人は今の部屋からそこに引っ越す予定らしくて、 アタシもチラリと覗きに行ったんだけどあなたそりゃ実家じゃないんだからって程の豪華さだったわ。 そこでアタシはちょいと筆を振るったわけなんだけど、元常従姉さんの絵を描いたのよ。 ほら、学長室に歴代の学長先生なんかの肖像画とか飾ってあるじゃない? あんなやつね。 自分で言うのもなんだけど、そりゃもう従姉さんが現役だった頃の姿が浮かぶ様なほどの出来映えだったわ。 それを例の部屋の壁にひっかけといたら、もうクリーンヒット級の大当たり! 引っ越してきた二人がそれを見て、元常従姉さんのかつての姿を思い出しちゃったみたいなのよ。 ほら、あの娘たちってば元常従姉さんにベッタリだったでしょう? まあ元常従姉さんの方も姉バカっていうくらいに二人を可愛がってはいたんだけど。 で、あの二人こんな部屋にいると元常従姉さんを思い出しちゃって耐えられない、ってんで 引っ越しは取りやめにしちゃったんだって! 士季のヤツに一泡吹かせたと思うとせいせいしたわ。 それであの娘も懲りれば良かったんだけど、相変わらずだったわね… アタシたち身内同士の話で済んでいればまだしも、他人様にまで迷惑かけちゃあおしまいよ。 益州校区に遠征して帰宅部連合を解体した後、また手紙を偽造して鄧艾先輩を陥れたあげくに 自分は姜維に焚き付けられて自立しようなんてバカな事を言いだした時には心底呆れたわね。 さすがのアタシもかばうにも限度があるし、 ヘタするとアタシ自身があの娘の身内だからって疑われかねなかったから 心を鬼にして司馬昭会長に彼女の討伐を進言したわ。 まあ何とか大事に至らず済んだけど、とばされた士季は自業自得よね。 ちなみに例のルージュなんだけど、士季がリタイヤして退寮になったとき、私物整理の際に取り返してきたわ。 まったく、こんなご時世に大それた事なんて考えるものじゃないわよね。 アタシはお陰様で今の蒼天会でいいポジションをもらってるし、うまいことやってみせるわよ。 潁川荀氏の看板も使いよう、ってね。 さて、と。最近茂先(張華)が何かとうるさいからしっかり相手してやらなくちゃね… おしまい
480:玉川雄一 2004/05/01(土) 21:57 ネタは世説新語から三つのエピソードを合体。 タケノコご飯(元ネタだとタケノコとご飯は別に食べたっぽい)のお話は なんかほのぼのしてますけど、 他の二つは一筋縄ではいかないっぽいのがこの人らしいとゆうか。 ちなみに最後のネタで、ルージュは宝剣だったんですけど。 さすがに扱いが難しそうだし、以前書いた鍾姉妹のメイク話に繋げてみました。 しかし、はるらさん、ヤッサバ隊長殿に続いて自分語りネタ三連発になったんですが、 私のはおネエ言葉な上に頭悪そうでアレな気分です(^_^;)
481:玉川雄一 2004/05/01(土) 23:30 [sage] ニューフェイスも増えて賑わって参りました。 ■(゚∀゚)ゝプロフェッサー! 陳羣の墓参、これまでにも何度かネタにされてきましたがやはりジワリときますね。 どこか不器用な彼女だからこそ映えるシリアスな一コマ… すれ違っても、ぶつかり合っても、二人が共に時を過ごした日々のことももっと見てみたいです。 そしてバレンタイン。バラエティに富んだ面々がそれぞれ繰り広げる逃避行。 …そうか、やっぱみんな逃げるんですね(^_^;) あと簡×法は反則。なんだよイイ雰囲気ですやん! さらには回を重ねてなお新鮮さと萌えを損なわない簡×法シリーズですか。 やっぱ簡雍ってば、日頃のはっちゃけ属性だけじゃここまでブレイクしなかったですよね。 法正とのこんな一面があってこそ、ここまで厚みのあるキャラクターになったってことでしょうか。 しかし張任ワロタ。特に牛丼屋でのエンカウントが。 ■国重さん おいでませー。これからもどんどん投稿よろしくお願いします。 さて一発目は陸績と袁術のエピソードですね。 陸績の健気なまでの孝心が微笑ましくありますが、袁術お姉さまの挙動にも注目。 各メディアで何かとアレな扱いを受けることが多いこの人ですが、 この学三では案外とおいしいポジションを貰うこともしばしばです。 (相応のポカをやらかしてることもありますけど) 国重さんの作品でも、名家のお嬢様らしい振る舞いが素敵な雰囲気を醸し出しています。 陸績をなだめるシーンはツボに来ましたよ! 続いて群雄割拠の角逐の水面下で密かに進むハンターキラーの策動という。 中堅勢力時代の曹操が、強敵・呂布を相手取るために布石を打つわけですが… 一方の陳登も自身の思惑を持って乱世の一角を(ほんの僅かの間ながら)占めることになるだけに、 侮りがたい深慮で虚々実々の駆け引きを繰り広げると。 餓狼軍団との本格的な激突がこれからどう展開してゆくのか、期待が膨らむエピソードでした。 ■はるらさん こちらもニューフェイス! 新風が吹いてイイ感じ。 東漢カルテットと後輩たちのタテの繋がりというのはいくつかありますが、 この盧植センセイを巡る面々は公孫サンに劉備と一癖も二癖もあるメンツですね。 盧植が先輩として、教師として後輩に臨む姿と、親友たる朱儁に対する姿が交錯するあたりが魅力的。 事ある毎に書いていますが、私はこういった異世代(この場合は学年が違う程度ですけど)間の 交流が好きなんですよね。まだまだヒヨッコの公孫サンたちも微笑ましいものがありました。 盧毓って今までなかなか出番がなかったのですが。 東漢カルテットのひとりである盧植を姉に持ち、 また自らは蒼天会の変転を長く見続けることになる貴重な存在ですよね。 彼女がこれから何を見て、何を綴ってゆくのか楽しみです。 ■岡本さん もはやしょーとれんじにあらざる超大作! 全体的なボリュームはおくとして、若干重く感じられもしましたが、 さすがに綿密な考証に裏打ちされた展開は読者を飽きさせませんね。 個々の場面に納得のゆくまでの説明が施されているので、 ストーリーが飲み込みやすいといえるでしょう。 また、格闘シーンにおいてもわずかコンマ何秒かという間に繰り広げられる 矢継ぎ早の動作をテキストで表現しながらもそれがビジュアルとして想像できる描写力は毎度ながらさすが。 基本的に読んでいて破綻していないんだから羨ましい限り。 内容については、伝説のピーチガーデンの近いにまつわる秘話(?)ということで、 それぞれの思惑が絡み合ってやがてまとまってゆく流れでした。 簡雍はまあ、あの頃からうまいことやっていたというか… とはいえ、 いくら当事者であっても将来を見通すことは難しいということですね。 浮き沈みの激しいこの一党ではなおさらのことでしょうが(-_-;) ちなみにやっぱり廖惇いいですよね(^_^;) 彼女が関羽に再会してから、とかも… ねえ。 そして新生帰宅部連合の門出を前にした劉備の述懐を兼ねた学園史の俯瞰。 わずか数年の間に、それまでには思いも及ばなかった程の大変革が起こったこの学園で、 生き延びるということだけでもままならない中で無念の涙を飲んだ者は数知れず。 さらには僥倖と実力を兼ね備えた者だけが自らの手で学園を動かすに至ったわけですが、 去っていった者たちとの間はあるいは紙一重であったりあるいは遠く離れていたり、 その中で変わらずに受け継がれてゆく物は確かに存在するというのですね。 多くのものを背負い、劉備の新たな一歩が踏み出されるのか… ■ヤッサバ隊長殿 そういえば今までホウ統の出番ってなかったんじゃ…? 確かに活動期間は短い(考えたらものっそい短いやん)のですが、 その中でも印象的な場面は色々とあったわけでまずはその立志編ですやね。 卒業間際からの回想って形がポイントかも。諸葛亮と簡雍をふくめたやりとりがもっと見たいなあ。 そういや、キャラ絵描いたときには意識してなかったんだけど、無双口調が違和感ないですのう(^_^;)ゞ しかし『落鳳事件』気になるなあ。隊長の次回作に期待してよかとですか?
482:★ぐっこ@管理人 2004/05/02(日) 00:17 うほッ! またまた豊作だーヽ( ´∀`)ノ! 管理人はなくともサイトは育つ…←ってそれじゃ駄目だって。 >はるら様 ほほう! 盧植姉妹の日常エピソード! 当時はまだ平凡な中学生である盧毓たんから見た、お姉さんの姿… 妹から見たら、頼りになる姉である盧植は、実は学園の情勢を単身で 左右できるほどの超大物であるわけで、そのへんのギャップがまた萌える… >ヤッサバ隊長 あー、そういえば龐統ってあまり出てこなかったですねえ(^_^;) 酒飲み、そばかす、面倒くさがり、眼鏡外せば割と美人、と萌えポイントがここまで 揃ってるキャラってのに…。やはり早死にだからキャラにしづらいのね… んで、今回は落第県令・龐統のエピソードですやね(゚∀゚) 彼女の物語もまた、痛快な サクセスストーリー。今回はまったりだけど、親友である諸葛亮との密かな確執とか、 色々面白くなりそう… >義兄上 東晋系ストーリー乙! うーん、荀勗って私も蜀攻め進言したエピソード しか知らなかったので、このSSで激しく学習。色々エピソードあるキャラ だったのね…相変わらず、不思議と勉強になるサイトだ( ゚Д゚)! 最初にアレンジ読んでから、オリジナルの世説新語読むのも斬新。 こうして見てみると、完璧美女・鍾繇たんもカワイイかんじだなあ…。
483:那御 2004/05/02(日) 21:25 溜まりに溜まった感想たち。 >岡本様 上手い!アサハル様の設定を見事に生かし切った形となりましたね。 そして相変わらずの知識量を強烈な文で綴ってらっしゃる。 あんな文は書けませんて(何。 >はるら様 盧植&盧毓ストーリー、出てきましたね。 学園屈指の女傑の妹って、立場的にビミョーなんだろうなぁ。 それでも明るく楽しく、姉に誇りを持って生きる盧毓タンに乾杯! 中学生っぽさ爆発の盧毓タンの行動に萌えw >ヤッサバ隊長殿 龐統の出仕ネタ!語り口調で面白い! しかし、人生を達観してるだけあって、なかなか毒のあるキャラですなw そしてラストは簡雍と酒で締める! 簡雍はホントどこに出しても味のあるキャラですねぇ。 >玉川様 荀勗もまた毒のあるキャラですねーw そういえば陳寿を左遷したのも荀勗じゃなかったですか? 『魏志』の自分の記述が不満だったとか・・・ 鍾会との確執というか、ガキっぽい喧嘩がなかなかスリリングですね。 (しかしマセガキって・・・w
484:那御 2004/05/02(日) 21:48 −占いに無い出会い− 「ふぅ・・・」 夜も更けた深夜1時。すっかり冷え切ったコーヒーを飲み干し、譙周は溜息をついた。 『仇国論』と銘打たれた、原稿用紙数十枚にも渡る論文。 幾度となく繰り返される無謀な北伐の意義について、友人の陳祗と語った内容を、文章で綴ったものである。 今回はこの内容をお話しすることはないが、彼女が帰宅部連合の行く末を憂いていたことが伺える。 譙周、あだ名は允南。 帰宅部連合随一の古典好きで、よくひとりでニコニコしながら古文を暗誦していたようだ。 明晰な頭脳の持ち主であったが、切れ者というわけではなく、不意の質問には答えられないことが多かった。 誠実かつ素朴な人柄で、トレードマークは長い髪の毛を束ねる緑色のリボンと縁無しの眼鏡。 どこか抜けたところがあり、諸葛亮と始めて会ったときには、諸葛亮の部下が笑いを堪え切れずに吹き出してしまったという。 諸葛亮曰く、「私ですら我慢できなかったのですから、あの娘たちに我慢しろと言う方が無理ですよ・・・」と。 最近、帰宅部連合について何度占っても、あまり良い結果は得られない。 事実、北伐によって疲弊した軍と、腐敗した中央政権。これで良い結果を望むほうが無理なのだろうか。 (これから連合は一体どうなっちゃうんだろうな・・・) こんな時間は、なぜか物思いに耽ってしまうことが多い。 (伯瑜さん・・・貴女の言葉の重み、今になって実感しています・・・) 譙周の言う『伯瑜さん』とは、杜瓊のことである。 杜瓊はもともとは益州校区総代・劉璋の下で働いていたが、劉備が益州に入ると、書記として仕えることになった。 小等部に在学中に、周りの友人が『こっくりさん』に興じるのを見て、 「くだらない・・・」と言い放ち、これを聞き付けた占い部の部長・任安にスカウトされて占いを始めたという経歴がある。 そして任安が卒業するまで、その知識の全てを叩き込まれ、その技量は神業級であった。 一口に占いといっても、その種類は膨大なものである。 学園で正式とされている『易』では、筮竹と呼ばれる長さ30〜40cmほどの細い竹の棒50本と、 算木、もしくは卦子と呼ばれる1.5cm角で長さ9cmほどの棒を6本用いる。 筮竹を規則に従って両手で操作し、片手で掴み取った数によって算木を配列する。 算木の2面には、黒く色が塗ってある。これは陽爻を表す。 また、残りの2面には溝が彫ってあり、溝の内側は赤で目印が付けられている。これは陰爻を表す。 筮竹の操作によって得られた爻は、順番に並べられて卦を構成する。 六卦を得るためには、計18回もの筮竹の操作が必要で、算木はそれを暗記するための道具であるといわれている。 杜瓊は、その天才的な占いの技術の反面、彼女は口数も少なく、人付き合いが苦手であったため、 殆ど友人らしい友人はいなかった。 しかし、ある日・・・ 「伯瑜さん、お願いですッ!私に・・・私に占いを教えてくださいッ!」 ・・・もう何度頭を下げたことだろうか。でも、伯瑜さんの答えは素っ気無い。 いきなり押しかけたのがまずかったのだろうか。 「・・・何度も言わせないで。駄目な物は駄目。」 しつこく訊き過ぎたかもしれない。呆れられているかもしれない。 それでも、私は占いの道を究めてみたい。 占いで切り開ける未来。そういうものを私は見てみたい。 でも、今のままじゃダメ。何か決定的なものが、私には欠けている。 それを、伯瑜さんに教えてもらいたい。 そのためには、私は何度だってお願いする・・・ 「なんでです?ど・・・して駄目なんで・・・か?こんなに・・・願いしているのに・・・」 なんだか鼻声になってきている。目の辺りも熱い。 もしかして・・・泣いてるのかな・・・私。 「お願いしますッ!」
485:那御 2004/05/02(日) 21:50 気がつくと、私は中庭のベンチに横になっていた。 ・・・あれ?さっきまで私は、廊下で伯瑜さんに頭を下げ・・・ 「お目覚め?」 頭の上のほうから、聞き覚えのある声。 「・・・って、ええぇーーーっ!!!??」 私が今、頭の下に敷いているもの。それはなんと伯瑜さんの膝だった。 「・・・そんなに驚かないで貰えない?」 「うひゃあっ!」 私は思わず、がばっと飛び起きてしまった。 せっかくの伯瑜さんの膝枕・・・もうちょっと横になっていればよかったかも・・・ 「・・・私、あの後どうなったんですか?」 私は恐る恐る訊いてみた。 「いや・・・さんざん喚いたあと、貴女、抜け殻みたいになっちゃって・・・。 放っておくのも悪いかと思って、ここに連れてきたわけ。」 「・・・まずかった?」 赤面して黙り込んでしまった私に、伯瑜さんは尋ねる。 「でも、貴女、面白い娘だね・・・私に好き好んで近付くなんて。」 「いや・・・あの・・・」 あぁ・・・私は今、憧れの伯瑜さんと話している。伯瑜さんって、思ったより取っ付きやすい人だったんだなぁ・・・ そして改めて見ると、美しい方だ。長い黒髪・・・どこか憂いを秘めたような瞳。 ・・・って、私は何を考えてるんだ・・・ 「貴女、占いやってるの?」 「えっ?」 伯瑜さんの唐突な、それも核心に迫る質問。 「そ、それは・・・」 「その顔を見ると、ある程度は齧ってるみたいね・・・」 伯瑜さんは、少し考え込んでから言った。 「私ね・・・私の知識を誰かに教えたいとは思ってないの。別に意地悪とかそういう意味じゃなくて。」 「どうしてですか?伯瑜さんの占いは、これからもずっと引き継いでいくに相応しいものだと思うんですが・・・」 「私は占いは『易』とかの概念とはちょっと違って、まずその対象をよく観察して、本質を見極めるの。」 「はぁ」 「だから、他人の目や言葉を信用したりしては、この占いが根底から崩れることになるの。分かる?」 「・・・」 「私の占いは、明らかにすることは困難だと思うの。だって他人を信用することができないから。 他人に話すことができないから。全て自分ひとりでやらなければならないのよ・・・。これって悲しいことだと思わない?」 「でも・・・」 「それに占いで知った未来が、必ずしも良いものだとは限らないのよ。でも、結果は結果として受け止めなければならないのよ。」 その言葉一つ一つに、伯瑜さんの心の憂いが詰まっていた気がした。 『他人を信用できない』もの。こんな悲しいことは、確かにない。 伯瑜さんの瞳に宿る、暗い影。その正体を、私はたった今、知った。 「・・・だから、こんな昏い世界に踏み込まないほうが無難だと思うの。どう?これでも分かってくれない?」 「伯瑜さん・・・。伯瑜さんは、私も信じていないんですか?」 「えっ?」 「他人を信じられないなら、私も信じることができないんですか?」
486:那御 2004/05/02(日) 21:54 あぁ・・・言っちゃった・・・。自分でも爆弾発言だと思うくらいだから・・・ 伯瑜さんは、やっぱり苦笑いを隠せなかった。 「・・・参ったわね・・・」 「伯瑜さん・・・ごめんなさい・・・」 「いや、参ったってのは・・・私が今、貴女を信じてることに気付いたってことよ。」 「えっ?」 「本当は、貴女みたいな良い娘には、この世界に入って欲しくないんだけどね・・・。 でも・・・どうしてもって言うんでしょ?そんなに頼み込まれたんじゃあ、無下には断れないわね。」 「それじゃあ・・・」 「えぇ。貴女に私の知識の全て、受け継いで頂くわ。」 やったぁ!ついに・・・ついに念願が叶った! あれ・・・?またなんか目から涙が・・・ このまままた気絶して、もう一回膝枕・・・なんて、そんなうまく行かないよね。 「そういえば、名前・・・」 「あっ・・・」 しまった・・・弟子入りを志願しに行ったのに、名前も言って無かったなんて・・・ 「譙周と言います。允南って呼んでください!」 暫しの間、回想に耽っていた譙周であったが・・・ 「・・・あれ?」 長い髪を束ねていたはずの緑色のリボンが見当たらない。 先程、外してポケットに入れたことは、数分のうちに彼女の記憶から消えていた・・・ −占いに無い出会い− <完> ********************************** というわけで、占い師弟の杜瓊・譙周ネタ。 譙周に関しては、アサハル様の設定を利用させていただきました。 杜瓊ってマイナーですね・・・
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