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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
549:北畠蒼陽2005/02/10(木) 16:27 [nworo@hotmail.com]
-Sakura-
第1話:紅華
時計の秒針が時を刻む音だけが聞こえる。
曹騰はうららかな昼下がり、1人で縁側に正座し緑茶をすすっていた。
すごくおばさんくさい。
しかし普段着ではなくぱりっとスーツを着ているのは違和感がある。
茹でた青菜のようにはんなりとした時間が過ぎていく。
自分の学生時代の激動からは考えられないようなゼイタクな時間に曹騰は人知れず笑みを浮かべた。
「あつつ……」
お茶の熱さに舌を火傷しそうになり苦笑する。
あの頃の熱さにもう一度戻ってきてもらいたいとは思わないが懐かしく感じることは事実だ。
「ただいま〜!」
静寂のときを破る声。
曹騰はぼんやりと時計を見た。
(あぁ、ほんと、学校の終わる時間だわ)
かなり長い間、ぼ〜っとしていたことに気付き、少し赤面しながら曹騰は立ち上が……ろうとしてこけた。
足が痺れていた。
上半身を床に突っ伏したまま、ひくひくとうごめく。
虫みたいだった。
「お姉ちゃ〜……って、う……えっと……どうしたの?」
曹騰の頭上で本気で心配する声がした。
心配しなくていいから見ない振りをしてほしい。
「な、なんでもないわ、孟徳ちゃん。おかえり」
脂汗をかきながら必死で笑顔を浮かべる。
痛々しい。
「……!」
孟徳……自分を実の姉のように慕ってくれている従姉妹の曹操。今はエン州校区の小学校に通っている……に微笑みかけた曹騰の目に飛び込んだのは泥にまみれた服と無数の擦り傷だった。
「孟徳ちゃん、どうしたの!?」
「え、あ……なんでもない! なんでもないよっ!」
曹操は焦りながらぶんぶんと手を振った。
あからさまになにかある、という態度である。
曹騰は片ヒザ立ちで座り……足の指を両手でほぐして痺れを取ろうとちょっと必死になりながら……真剣な顔を曹操に向ける。
「孟徳ちゃん、ちょっとそこに座りなさい」
ちょっとホンキ。
こうなると曹操は弱い。
まず年齢が一回りも違うのだからその潜り抜けてきた修羅場の回数も当然のようにまったく違う。
その従姉妹の『ホンキ』に曹操の小学校レベルのキャリアが太刀打ちできるわけがない。
まるで『曹騰に怒られる曹操』のようにしゅん、となって曹騰の前に正座する。
比喩じゃなくてそのままである。
「孟徳ちゃん、いじめられたのね」
「……」
「返事は『はい』。それ以外認めません」
『はい』しか認めないんだったら聞く意味ないだろう! と、ちょっとだけ曹操は思ったが反論できない。
「……はい」
「私が『カムロ』だから『カムロの従姉妹』って言っていじめられたの?」
「……言いたくない」
とたんに曹操のほっぺたが曹騰に掴まれた。
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