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589:北畠蒼陽 2005/03/04(金) 01:52 [nworo@hotmail.com] 「済陰の君閣下の安サマを思う気持ちはわかるつもりですがこれだけの人間が貴女の発する言葉を望んでいます、とそんだけ伝えてくれないかな」 孫程はすべて伝えきった、という顔で笑う。 梁商はリストを一瞥し…… ボールペンでその最後尾に自分の名前を書き足す。 「済陰の君閣下の説得は私たちが承りました」 ボールペンを指先でくるり、と回してから胸ポケットにしまう。 曹騰は…… 腑に落ちない顔をして孫程のほうに顔を向けた。 「……あんたの気持ちはわかったけど……なんでそれをさっき直接、劉保に言わないかなぁ?」 「そんなん決まってんじゃん」 曹騰の至極当然の疑問に孫程も当然のような顔で答える。 「あんたらのほうが今の私の気持ちを私以上にしゃべることができる、ってそんだけ」 にやりと笑いながら言う。 「私は体育会系だからね。体育会系には体育会系の仕事があるってこと」 カバンから分厚い本を取り出す。 本のタイトルはマルクス全集と書かれていた。 「劉保、はいるよ〜」 孫程を送り出し、先に奥の部屋に閉じこもった劉保を追って曹騰、梁商はドアをノックする。 ……返事がない。 ただのしかばねのようかどうかは別としてまったくのノーリアクションだった。 「……?」 曹騰と梁商は顔を見合わせてからドアノブをひねる。 カチャ、と軽い音を立ててドアは開いた。 部屋の中は真っ暗だった。 「劉保? 目が悪くなるよ〜」 「電気はつけないでください」 茶化して電気をつけようとする曹騰を劉保の言葉が止めた。 「私にはわからなくなってきてしまいました」 ぽつり、と暗い部屋の中、劉保は独白する。 「私はただお姉さまと仲良くしたかっただけなのに……」 雨はまだやまない。
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