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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
604:北畠蒼陽 2005/03/07(月) 02:53 [nworo@hotmail.com] というわけで学三参加1週間後に書きたくて書きたくてでも書けなくて、これって恋? いや、ただ時期ものだったから書けなかっただけです、というものがようやっと書けました。 あと書きたい人物は……王允、かなぁ? 王允書きたいかなぁ? >ぐっこ様 本家HPのほうには伺ってなかったので状況を今日、初めて知りました。 心痛お察しします、と言葉で言うのは簡単ですが私にはなにもわからないんですよね。 ただぐっこ様やご家族の方が苦しんでおられる状況でなにもわからずのほほんとしている自分が悔しいです。 今はただご家族の一刻も早いご回復をお祈りいたします。
605:海月 亮 2005/03/07(月) 19:21 >ぐっこ様 重い…重過ぎますよこれは。何というか、本当にシャレにならない事情の中で奮戦されて居られたのですね…。 何の事情も存じあげず、好き放題振舞う毎日を送る私めなど、この件について何か言うべき資格はなさそうですが…それでも、なにとぞご自愛の程を。 そして此方に戻って来られる日を心待ちにしております。 >北畠蒼陽様 ああ、卒業かッ! そういやもうそんなシーズンになってたんだなぁ…(しみじみ) しかし、何というか北畠様の曹操と袁紹って、表面上はともかく心の何処かで繋がっている、っていう雰囲気が良いですね。 私めのSS製作もそろそろ佳境です…もうじき、持って来れるかもしれません。
606:北畠蒼陽 2005/03/11(金) 16:34 [nworo@hotmail.com] -王允の亡霊- 「お久しぶりです、お姉さま〜♪……って、なんであんたがッ!?」 「……それはこっちのセリフ」 喫茶店に回るようにくるくると踊りながら駆け込んできたロングヘアーを無造作に後ろに流した少女をすでに席についていた肩のラインで髪をそろえた少女が紅茶を傾けながら冷静にツッコんだ。 「なんであんたがここにいるのよ、伯輿!」 「……多分、文舒と同じ理由。あなたの『お姉さま』に呼ばれただけ」 文舒……王昶。 曹丕にその才能を見出され、エン州校区総代に抜擢され功績を挙げた。また荊・予校区兵団長となり司馬懿に学園人事について意見を求められた際にも意見状を提出し事務員の賞罰の基準を定めさせた。 のちに学園都市運営会議議長までのぼりつめることになる。 伯輿……王基。 孤児だったが叔母の王翁に引き取られて育つ。安平棟長として順当に出世街道を歩むかに見えたが、一時期曹爽の副官だったことが災いし、その失脚時に免職となる。だがつい最近、ようやく復帰し荊州校区総代に就任した。 のちにリタイア後、学園都市運営会議議長を贈られる。 「いやだわ、お姉さまったら。伯輿の前で私たちのラヴラヴっぷりを見せ付けるつもりなのかしら」 「……見ててもいいけどね。どうせ慰めることになるのは私だし」 頬に手を当てて考え込むようにした王昶にやはり冷静に王基がツッコむ。 「まてぇ。誰が慰められることになるんだぁ!」 「……恋愛運占ってあげようか?」 「あんたの占い、当たらないからいいわ」 「……失敬な」 憮然とした顔で紅茶を傾ける王基。 しかしそれ以上薦めないということは占いが当たらない自覚だけはあるらしい。 しかしこの2人は一見、口ゲンカしているように見えるが実は仲がいい。まぁ、どうでもいいことだが。 「あ、ルイボスティーね……で、なんであんたがお姉さまに呼ばれたの?」 ウェイトレスに注文しながら王昶は王基に尋ねる。 「……さぁ?」 「ふ〜ん」 口数少ない王基に王昶は気を悪くした風もない。 長い付き合いで親友がどういうやつかは大体わかっている。 「待たせたわね」 しばらくして喫茶店に涼やかな声が響いた。 「お姉さま♪ ……と、公治? ……いやだわ、お姉さま。ギャラリーが多いほうが萌える性癖なのかしら」 喫茶店に入ってきたのが1人ではなかったことで混乱する王昶。 「お久しぶりです、王凌先輩。おかわりはありませんか」 丁重な王基の挨拶をにっこりと笑いながら王凌は優雅に会釈をした。
607:北畠蒼陽 2005/03/11(金) 16:36 [nworo@hotmail.com] 王凌……あだ名は彦雲。 かの王允の従妹。後に各地の棟長を務め、曹丕によってエン州校区総代に任命された。その後は揚、予校区の総代を歴任し、いずれも生徒から好評を得る。揚州校区兵団長に転じ、校区総代を引き継いだ孫礼とともに長湖部の全Nの攻勢を撃退した。 現在は生徒会の生徒会執行本部本部長として辣腕を振るっている。 ……ちなみに王昶とプティスールの契りを交わしている。 また王基の才能を一番最初に見出したのも彼女であった。 王昶が公治と呼んだのは令狐愚。 王凌の姪であり、各地の棟長を勤めた令狐邵の妹。曹爽に才能を見出され現在はエン州校区総代を勤めている。 「で、どうしたんです、お姉さま?」 王昶の質問に王基も王凌のほうを見る。 「えぇ……その、そう。王基の復帰記念パーティってとこかな」 歯切れが悪そうに答える王凌。 令狐愚は一瞬なにかを言いたそうに口を開こうとしたが結局、なにも言わなかった。 「王基の! 復帰記念パーティ!」 くぎりながら王昶が叫ぶ。 「いいですね、伯輿パーティ! じゃ、あんたはここで公治と2人でパーティしてなさい! 私はお姉さまとどっかいってくるから!」 「……趣旨違うから、それ」 王昶のムチャクチャな言葉に王基は、しかしまんざら気分を悪くした風もなく言った。 そして4人は楽しいひと時を過ごした。 王凌は王昶と王基の掛け合いをずっと楽しそうに聞いていた。 王昶と王基が帰宅して…… 喫茶店に王凌と令狐愚だけが残る。 「彦雲姉、あの2人をなんで誘わなかったの?」 恨めしそうに令狐愚が王凌に言った。 「彦雲姉、このまま曹芳サマが蒼天会長にいたんじゃ司馬姉妹の思うつぼだ、って。だから曹彪サマを担ぐんだ、って言ってたじゃん。あの2人なら彦雲姉が誘えばついてきてくれたのに……」 「そうね、そのとおり。あの2人ならついてきてくれたかもね……でもね、少なくとも司馬懿は悪政をしてるわけじゃない。子師姉さまのときは董卓という絶対悪のために反乱、と位置づけられたけど今は少なくともそうじゃない。私は子師姉さまの亡霊に衝き動かされてるだけ」 王凌は力なく微笑む。 「そんな無意味なクーデターにあの前途有望な2人を巻き込むことは出来ない……公治、あなたもそろそろ私から離れたほうがいいわ」 「もう肩までどっぷり浸かっちゃったんだ。いまさら離れてももう遅いよ」 王凌の言葉に令狐愚は冷めた紅茶を不味そうに飲み干しながら吐き捨てた。
608:北畠蒼陽 2005/03/11(金) 16:43 [nworo@hotmail.com] わぁお、王允の話を書くつもりだったのにー! まぁ、王昶の話しもいずれ書きたかったので、その前準備と割り切りました。 ちなみに王昶&王基は玉川様イラストの外見とちょっと違うような性格ですが私の脳内ではあの外見でこういう性格です。 令狐愚は……もうちょっとバカのような気がします。 >海月 亮様 そんなシーズンですよ、いつの間にか。 本当はこの2人に許攸とかも絡ませられればいいんでしょうけど3人友情ストーリーってなかなかずるずると長くなるばっかりで書きにくいですからねぇ。 精進精進。
609:北畠蒼陽 2005/03/13(日) 21:10 [nworo@hotmail.com] -晋の系譜- 東晋ハイスクールの誕生…… それは落日の司馬蒼天会の意地、といっても過言ではないだろう。 生き残りのための共学化。 後漢市南部の荊、揚、廣、交をおさえるのみではあるが、しかしそれでもその誕生に多くの少女が期待を胸に抱いた。 そして東晋ハイスクール初代蒼天会長、司馬睿が就任したその日、そのブレーン、王導のもとを1人の少女が訪れた。 「な……!」 少女……いや、もう少女と呼べる年齢ではない。 毋丘倹、文欽の叛乱鎮圧で功績を挙げ、曹髦のクーデターに対し司馬昭の名を汚さぬよう自らすべての汚名を引き受け、また長湖部にとどめを刺す、その戦いの総指揮官であった女性。 すでに学園を卒業したが司馬蒼天会の基礎を築いた大元勲であり王導にとっては伝説、とも呼べるレベルにある女性。 ……賈充。 その言葉に王導は驚愕で口をパクパクとさせた。 「あなたは司馬睿……元サマの親友なんでしょ? だったら知っておかなければいけないわね」 賈充は……幾多の修羅場を真っ向からねじ伏せたその女性は顔色一つ変えることなく王導に諭すように語り掛ける。 「もう一度言うわ……元サマは司馬家の血を引いていない」 …… 「納得できねぇな」 つるつるに頭を剃りあげたスキンヘッドの少女が目の前の少女を睨みつけた。 後主将、牛金……もともとは曹仁指揮下の暴走族、『薔苦烈痛弾』の特攻隊だったが曹仁のチーム解散宣言により更正……だがスキンヘッドは変わらない……し、その後は司馬懿に属し馬岱や公孫淵と戦った。 今は自らが最前線に立つことはないとはいえ気の弱いものであればそれだけで失神するであろうほどの威圧を受け、それでもなおその目の前に立つ少女は不思議そうに小首をかしげた。 「敵対者を打ち倒して……なにが悪いの……?」 司馬懿……あだ名は仲達。 現蒼天会の最高権力者。 一時期、曹爽との政争に敗れたものの今、再び勢力を盛り返し……そして今まさしくその曹爽を捕らえる命令を牛金にくだしたところであった。
610:北畠蒼陽 2005/03/13(日) 21:11 [nworo@hotmail.com] 「確かに敵対者を叩き潰すのは反対しねぇ。だがそうなると曹仁の姉御から続くピンクパンサーズヘッドの……曹真の姉御の妹をトばす、ってことになる。アタシにゃあそんな義理を欠くようなまねはできねぇな」 力強く言い切る牛金に…… 司馬懿は再び少し考えるようにして……そして執務机から乗り出すようにして牛金の胸元の蒼天章をつまんだ。 司馬懿が少し力を入れれば簡単に蒼天章は牛金の胸元からはずされることだろう。 だが牛金は司馬懿を睨みつけたまま微動だにしない。 「……義理のために蒼天章を失っても……いいというの?」 「蒼天会はあんたにのっとられるかもしれない。だがそんな滅びていくものに殉じるバカがいても悪くない」 司馬懿の言葉に、しかし一片の感情すらも浮かべることなく牛金は言い切った。 「……牛金には確か、妹がいたよね?」 「? あぁ、まだ初等部だけどな」 突然の司馬懿の話題転換に牛金は不審そうな顔を浮かべる。 「剛毅なる猛将、牛金に最大限の敬意を。あなたの妹は私が引き取るわ……私にトばされた牛家の人間となれば世間の風当たりはきついかもしれないけど私の従妹、司馬覲の妹ぐらいに書類を書き換えてしまえばいいわ」 「好きにしろ」 司馬懿の言葉に牛金は苦笑にも似た笑みを浮かべる。 牛金の蒼天章は失われた。 …… 「……そ、そんなことって……」 「そんなこと。確かにバカな話よね」 絶句する王導に賈充は面白くもなさそうに応じた。 「でもあなたは元サマの親友として……またこの東晋ハイスクールの重鎮として知っておかなければならないの」 賈充の言葉に弱弱しそうに眉を寄せて王導は呟く。 「……このことが一般学生に知れたら……司馬一族の血を引いてない人間が蒼天会長になってることに不満を持ち、また『自分が』って思う生徒だって出てくるでしょう……」 「そうね。だからこのことが一般学生に知られたら他の誰でもない、私があなたを殺すわ」 賈充の明確な殺意。 それはあくまで自分への信頼である。 王導はそれを知って、なお呟かずにはいられなかった。 「……知らないほうが幸せなことって……あるんですね」
611:北畠蒼陽 2005/03/13(日) 21:12 [nworo@hotmail.com] えと、その…… 北魏正史の司馬睿伝で『司馬睿は牛金の子である』とか書かれてるんで想像を逞しくしてしまいました。 まぁ、ぶっちゃけ年齢的にありえない話ではあるんですけど、年齢の垣根が低いこの学三だったらやれるかのぁ〜、と。 とりあえず参考文献、というか早稲田大学三国志研究会による『三国志大研究』という本において以下のような仮説があるためそれに準じてみましたー。 以下、引用。 牛金は何らかの重大な原因により司馬仲達に粛清され、晋の人陳寿はその功績を記録することが許されなかった。《玄石図》は金徳の晋が土徳の魏に代わる権威付けとして作られたが、北魏に至り東晋を貶めるために牛金粛清事件ともからめて、司馬睿牛氏説が流された。――時期的に見て、仲達のクーデターと何らかの関連が想像できる。 以上! 連投ダイスキ(ぇー)北畠蒼陽でした!
612:海月 亮 2005/03/16(水) 21:20 -銀幡流儀- そのいち 「夜襲、銀幡軍団」 「ええええ!? たった10人で曹操会長の本陣に〜!」 「ああ…やらせてくれ、部長」 濡須棟の棟長室、その机を蹴倒さんばかりに驚いて仰け反る孫権を目の前にして、甘寧は内心の怒りを最大限に抑えた表情で、そう告げた。 「悪いが俺は、あんな屈辱を喰らって、指咥えて済ませられるほど大人じゃねぇ。張遼がかましてくれた上等の礼をくれてやりたいんだよ…ッ!」 「で…でもでもっ、こないだ公績さんだって酷い目にあってきたばかり…」 「な〜に、なにも奴等を潰しにいくんじゃねぇ、からかってくるだけだ。もし一人でも飛ばされるようなことがあれば、好きなように処断してくれてかまわねぇ」 孫権は少し考えた。 この孫権という少女、普段は温和で大人しい少女なのだが、その根っこのほうはかなりの負けず嫌いだ。 本音を言うと先の合肥における学園無双において、長湖運動部の精鋭500が、合肥を護る張遼率いる僅か50足らずのMTB隊に蹴散らされ、自分も壊された橋の上をママチャリで跳んで危難を脱する羽目に陥ったことをとにかく悔しがっていたのだ。 それに、甘寧の言葉は一見すると無謀なものに聞こえるが、この甘寧という少女もまた、何の考えもなく無茶をやるような人間ではないことを、孫権は知っていた。 「…勝算は、あるの?」 「当っ然、必ず連中の鼻をあかしてやるさ」 「じゃあ、御願いしようかな。メンバーは、興覇さんの好きに決めていいよ」 「流石は部長、話がわかるぜ」 甘寧は不敵な笑みで応えると、背に飾った羽飾りを翻し、部屋を後にした。 「お〜い承淵、興覇さんが呼んでるぜ〜。あたし先行ってるからな〜」 「あ、は〜い、すぐ行きま〜すっ!」 髪の色を派手な金髪に染めたちょっと柄の悪い先輩に呼ばれ、承淵と呼ばれた狐色髪の少女はストレッチを済ませ、ぱたぱたと駆けだした。言葉使いは真面目そうだが、その明るい髪の色に木刀なんてモノを持っていたら、何処からどう見てもヤンキーの妹分にしか見えない。 いや、実際この少女−丁奉は、現時点では長湖部最凶の問題児・甘寧の妹分である。髪の色云々ではなく、この底抜けに人当たりのいい性格で、問題児集団である"銀幡"の先輩達から何気に可愛がられ、何の違和感もなく溶け込んでいる感がある。 やがて校庭の一角、甘寧の羽飾りを見つけた丁奉。よく見れば、"銀幡"軍団の何人かと軽くチューハイをあおってるらしい。先刻彼女を呼びつけた少女も、その中にいた。 「先輩っ、呼びました?」 「おぅ承淵、待ってたぜぇ。まぁ、お前も一杯やっとけや。あ、お前はまだ酒駄目だからこっちだけど」 そう言って甘寧はジュースの缶を投げて寄越す。見回せば、学区周辺の名店から取り寄せたオードブルが円陣の中を埋め尽くしている。 「え、いただいていいんですか?」 「もち、部長のおごりだ。いっちょパーッとやってくれや」 「わぁ…!」 円座の中に混じって、丁奉も並べられたご馳走に舌鼓を打った。 その後、何が起こるのか夢想だにもせずに…。 日も暮れ落ち、学園無双終了の規定時間が近づき、宴もたけなわになった頃、甘寧はおもむろにこう告げた。 「さぁ、景気良くやれよ! これからこの10人で、曹操の本陣に上等くれてくるんだからな!」 「!!」 その一言に、何人かが酒を吹いた。丁奉も鶏のから揚げを喉に詰まらせたらしく、目を白黒させている。その背中を叩いてやりながら、少女の一人が問い返した。 「ちょ…マジですかリーダー?」 「冗談でしょう? いくらなんでも10人ってアンタ」 「冗談でンなコト言うか。まぁ、酔狂ではあるだろうが」 何を今更、といった感じで返す甘寧に、他の9人は目を見合わせた。はっきり言って無茶もいいところである。これでは、無駄に飛ばされに行くだけじゃないか…。 そんな部下達の感情を読み取った甘寧、傍らに置いた愛用の大木刀"覇海"を掴んで立ち上がり、それを少女達に突きつけて、怒色を露に言い放った。 「てめぇら、甘えたこと言ってんじゃねぇ! 大体お前等悔しくないのか!? 張遼の野郎に我が物顔でうち等の目の前に上等くれられてよ! 俺等"銀幡"のモットーは何だ!」 その言葉に少女達は目の色を変えた。 「…そうよ、リーダーの言う通りだわ」 「あんな上等かまされて、泣き寝入りはアタシ等の流儀じゃないね…!」 「目には目を、だな。よ〜し、一丁やってやろうじゃねぇか」 「それでこそ"銀幡"特隊だぜ…ん、承淵どうした?」 満足げに少女達を見回す甘寧、傍らに座らせていた丁奉がなにやら不安と期待に満ちた目でこちらを見ているのに気がついた。 「あたしも、あたしも連れてってくれるんですか!?」 「何言ってやがる、その為に呼んだんだぜ?」 その言葉に満面の笑みをこぼす妹分の頭を、甘寧は乱雑に撫でてやった。
613:海月 亮 2005/03/16(水) 21:21 「てめぇら、準備はいいな?」 「オッケー、何時でも往けるぜ、リーダー」 目印に羽飾りをつけた鉢巻を身に付けた、"銀幡"軍団は合肥棟入り口正面の草陰に潜んでいる。 「よし…先ずお前、ブレーカーの位置はわかっているな?」 「もちろん、任せといて下さいよ!」 「おう…行けっ!」 甘寧の指示を受け、少女は物影から物影へ駆けていく。 「よぉしお前ら、電源が落ちたら…解ってるな?」 少女達が頷く。 「…あと、承淵」 「! あ、はいっ、なんですか先輩っ」 唐突に名を呼ばれ、ちょっと面食らった丁奉に、甘寧はなにやら耳打ちする。その内容に、少女は目を丸くした。 「えええ! 本当にやるんですか!?」 「たりめーだ、戦利品も必要だからな。それを奪われたとあっちゃ、奴等の面目丸つぶれだぜ? 奴等の目は俺たちでひきつけるから安心しな」 暗がりだが、他の少女達も「任せろ」と言わんばかりに親指を立てているのが解る。丁奉も、俄然やる気になった。 「…解りました、必ず取って来ます!」 「よし、いい返事だぜ…ん!」 その瞬間、合肥棟は暗闇に包まれ、少女達の悲鳴が上がる。 「行くぜ野郎共、目に物みせてやれッ!」 甘寧以下、"銀幡"選りすぐりの猛者たちは、怒号とともに合肥棟へ突っ込んでいった。 「敵だ! 敵が侵入ーッ!」 瞬く間に合肥棟内は大混乱に陥った。日もどっぷり暮れた午後七時半、終了間際のロスタイムを狙っての奇襲はまんまと図にあたり、合肥棟守備軍は次々に同士討ちを開始する。 執務室の曹操も大慌てだった。 「もうっ、何だよいったい!? いきなり停電ってどーゆーことだよっ!」 「…多分…ブレーカーを落とされてる…」 「んなこたぁわかってるっつーの!」 傍らに立っていた司馬懿の呟きに、鋭くツッコミをいれる曹操。気にした風もなく、何かの気配を敏感に感じ取った司馬懿はぼそっと呟く。 「会長…誰か、来る」 「無視すんなー…って、えっ?」 曹操も気付いた。執務室の前に、人の気配を感じる。 「誰? そこに居るのッ!」 「…いよぅ会長サン、気分はどうだい?」 「!」 扉の前に居たのは言うまでもなく甘寧。曹操は怒気を露に、かつ静かな語調で言う。 「なめた真似してくれるじゃん…どうせ執務室(このなか)が手薄だってコト、知っててやってるんでしょ?」 「さぁ…どうだかねぇ?」 お互い暗闇の中で、しかも扉越しだったが、お互いどんな顔をしているのかはよく解っていた。 そのまま、どの位経っただろうか。その雰囲気に場違いなくらいの軽い足音と、明るい声が響く。 「せんぱ〜い、例のモノ、手に入りましたよ〜! あと、残ってるのあたし達だけです!」 「おしッ、良くやった! じゃあな会長サン、俺たちゃこれでずらからせてもらうぜ!」 「…! ちょっと、待ちなさいよぅ!」 慌てて執務室を飛び出す曹操。開け放たれた窓から階下を覗けば、其処には既に走り去る少女達の姿しか見えない。良く見ると、一人の少女が何かを手に持っている。街頭の下、その正体が見えると曹操は絶句した。 「…んな!」 「…蒼天生徒会の生徒会旗…」 その時、電源が復旧する。時計は既に八時を指していた…。 甘寧が10名で奇襲を敢行した翌日。 「ほい、コイツは戦利品ですぜ。承淵!」 「はいっ、こちらですっ!」 「わぁ…!」 合肥棟から奪われてきた生徒会旗を手渡され、満面の笑みを浮かべる孫権。それを見ると居並ぶ長湖部幹部、主将達も感嘆の声を挙げた。ただ一人、隅っこで面白くない顔をしている凌統以外はだが。 「すごいっ、すごいよ興覇さん!」 「こういうことやらせると、やっぱアンタは一流だねぇ…」 この間の溜飲はすっかり下がって上機嫌の孫権、その隣りにいた長湖部実働部隊総括の呂蒙も、呆れ半分にそう言った。 「しかし10人、誰一人として飛ばさずに戻ってくるなんてね」 「本当だよ〜、承淵まで連れ出してるとは思わなかったけど…」 「あったりまえですよ。暗がりを利用して押しかけるなら、少人数のほうが却って安全なんですよ。それにコイツにも、どんどん経験を積ませてやらなきゃいけねぇし」 甘寧はそう言って、傍らの少女の背を軽く叩いた。 「まぁ、そういう事解ってそうだったから止めなかったんだけどね。とはいえ、お見事だわ」 「いやぁ…」 呂蒙の言葉に、普段は不遜な甘寧も少し照れたようだった。 だが、沸き立つ長湖部幹部・主将陣の片隅、それを眺めながら凌統が悔しそうに歯軋りをしていたのを、甘寧と孫権は見逃さなかった。 (続く)
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