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636:北畠蒼陽2005/06/05(日) 22:03 [nworo@hotmail]
飢狼の血族

「あんた、呂布に私と戦うな、っていったらしいね?」
烈女と呼ばれ、学園にその名をとどろかせた少女が両の指をぽきぽきと鳴らしながら横を静かに歩くその少女に語りかけた。
真っ暗で人気のない廊下。
月明かりが窓から差し込んでくる。
「ねぇ……」
少女……姉が無実の罪で陥れられたとき自分のチーム、たった十数人を率いて倍以上の数の護送者に囲まれた姉を助け、張角の乱では陶謙に従いそれを打ち破った武勇の人。のちに琅邪棟長の蕭建が呂布の脅迫を受け、その圧力に屈したとき、それに反発し蕭建をトばした硬骨の人。またそのまま蕭建の守っていた校舎に立て籠もり呂布の猛攻を守りきった知略の人……数々の賛美で彩られながら面白くなさそうな目で月の明かりを睨みつける少女、臧覇は感情を浮かべないまま自分の横でぴったりと歩む少女を見る。

臧覇は呂布と敵対し、しかしまた和睦した。
今、この下ヒ棟まで出向きこれからの方策について話し合ってきたところだ、が……

臧覇は人知れずため息をついた。
自分の横にいる少女はこの世の中になにも冗談がない、というような眼をして前だけを見ている。
呂布が今、ここでこの少女に臧覇をトばせ、と命令すれば少女は一瞬すら迷わずにそれを実行するだろう。
それでなくても少女のその鍛え上げられた体は歴戦の臧覇すら引くものであった。

つまり、これは……呂布はまだ自分を信用してない、ってことか。
私をこうして威圧して屈服できないようにするつもりか。
2回目のため息。
信用しないのなら盟約など結ばなければいい。盟約を結んだからには骨まで信用してほしいものだ。
臧覇は心のうちで自分の理論を展開し、憤慨する。

「……多方面に敵を抱えた状態で呂布さんにあなただけを見ることは危険だ、と思っただけです」

「?」
臧覇はきょとんとした顔でどこからか聞こえてきた声の主を探した。
廊下には自分たち2人以外誰もいない。
ということは……
「今、しゃべったの……もしかしてあんた?」
大柄な少女、高順はさっきまで無表情だった顔を少し照れたように歪ませながら一度だけ頷いた。
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