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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
66:玉川雄一 2002/04/01(月) 00:10 (続き) 「お姉ちゃん、コレ、使ってみようよ」 「ええっ! でも、いいのかな…」 まあ、持ち出したからにはそう来るとは十分予想できたが、やはり鍾会はただ者ではない。 躊躇う鍾毓に揺さぶりをかけていく。 「大丈夫! ちょこっとならバレやしないって!」 「う、うーん…」 (いや、もうバレてるけど) 鍾ヨウが一部始終を眺めているのも知らず、妹たちの謀議は続く。何やらヒソヒソと話し合っていたが、 どうやら鍾会が渋る姉を丸め込んだらしい。 「それじゃ、暗くちゃわかんないから電気点けよう」 「姉さん、起きたりしないかなあ…」 「ちょっとだから平気平気! それじゃはい、お姉ちゃん」 「え、私が先? しょうがないなあ…」 姉に先鋒を任せる辺り、無意識ではあろうが何か策士めいた物を感じさせる。ともあれ、鍾毓の方もまんざらではないようで、 妹からルージュを受け取ると、念のため部屋を見回してから明かりを付ける。鍾ヨウは薄目を開けた寝たフリでごまかした。 鍾毓はそこで、何故か鍾ヨウの方に向き直るとペコリと頭を下げ、「姉さん、ごめんなさい」と呟いた。 (?? あの娘、何のつもりだったのかしら) そして鏡に向き直り、キャップを外して数回ひねると色合いを確かめてからスウッ、と唇に這わせる。 「うわあ…」 大人びた姉、童顔気味な妹の間でまあ年相応の顔つきの鍾毓だったが、唇に引かれたルージュがこれまたよく映えていた。 上下二人がある意味自己主張が激しいので影に隠れがちだが、彼女もまた相当の美貌の持ち主である。 思わず、密かに盗み見ている鍾ヨウも感心してしまう。 (へえ、あの娘もなかなかやるじゃない) 「お姉ちゃんもよく似合ってるよ。やっぱり、もっとメイクに凝ってみたら?」 「そ、そう? それじゃ、考えてみようかな」 やはり満更ではなかったようで、少し照れながら鍾会へルージュを手渡した。 妹はそれを受け取ると躊躇うことなく、あたかも自分の物のようにヤケに慣れた手つきで手を動かす。 と、愛らしいとすら形容できる唇(吐かれる言葉は結構アレだが)が鮮やかな色に染まったのだった。 (うわ、これはまた… 我が妹ながら、侮れないわ) なんだかんだ言って妹馬鹿の鍾ヨウである。自らの美貌にはそれなりに自信があったが、 妹のそれはまた違った方向性で“そそる”ものがあったのである。 「どう、お姉ちゃん?」 「うーん… なんか、ミスマッチが却って効果的、っていうのかな…」 「えへへ、そう?」 二人はしばらく互いの成果を批評しあっていたが、やがて証拠隠滅とばかりに唇をふき取ると、ルージュを元の場所に戻していた。 (…なんか、ヤケに慣れた手つきねえ。まさか、今までにも…?) 鍾ヨウの胸にちょっぴり疑念がわき起こったが、始末を終えた二人が電気を消してベッドに潜り込んだのを見届けると、 おとなしく睡魔に身を任せたのだった。
67:玉川雄一 2002/04/01(月) 00:12 (続き) 「ふわあ… おはようございます」 「おはよう、姉さん。 …はあぁ」 「二人とも、おはよう。何だか眠そうね」 翌朝。何事もなかったかのように… にしてはやや眠たげな二人の妹の様子を見て、鍾ヨウはちょっとした悪戯心を起こした。 何気ない風を装って、さらりとカマをかける。 「…あら? 稚叔、パジャマの胸のとこ、何か色がついてない?」 「ええっ!」 「あ、お姉ちゃん…!」 必要以上に驚きを見せた鍾毓、だが、対応がまずかった。胸元より先に、唇に指が行ってしまったのである。 あちゃー、とうなだれる鍾会を横目で見ながら、鍾ヨウはニコニコと問いかけるのだった。 「あらあら、唇の方が気になるの? まあ、あなたにはちょっとあの色は合わないかな? もう少し淡いのが似合うと思うわよ」 「………あっ」 そこでようやく、罠に掛けられたと気付いて真っ赤になる鍾毓。一方の鍾会は、悪びれる風もなく問いかけた。 「姉さん、気付いてたの? 人が悪いんだから」 「まあ… ね。偶然よ。なんだかあなた達、面白そうなことしてたみたいだし」 「姉さん、ご免なさい。勝手に使った分は返すから…」 鍾毓はちょっと混乱気味。鍾ヨウそんな妹を苦笑しながら見つめると、咎める気がないことを示しながら言葉を返す。 「それは別に気にしなくていいのよ。 …それより、あなたそれを使う前に私に頭を下げたわね。どうして?」 「わ、それも見てたの? 参ったな… ほら、メイクも儀礼の一種でしょう? 姉さんのを勝手に借りてたこともあったし、そうしないわけにはいかなかったの」 いかにも、ヘンに生真面目なところがある鍾毓らしい答えだった。可愛い妹だと思えば自然と笑みもこぼれる。 次いで、相変わらずニコニコしている鍾会へと向き直る。 「士季、あなたはまた平然と使ってくれたわね。どうして?」 「姉さん、それはだって、アタシは姉さんのを盗んだんだもの。盗むのに礼もなにもあったものじゃないわ」 「…まったく、あなたらしいわね。まあ、それなりに似合ってたのが何だか悔しいけど」 いっそ心地よささえ漂うこのふてぶてしさ、将来が楽しみなんだか不安なんだか。 それでも、女子のたしなみと思えば許せる気がするのも、やはり妹馬鹿だからだろうか。 「そうね、今度いっしょに、あなた達に合うのを選びに行きましょうか」 「えっ… 姉さん、いいの?」 「やった、そうこなくっちゃ♪」 思わぬ姉の提案に、驚きを隠せないながらもパアッと顔をほころばせる妹たち。 今日も明日も明後日も、鍾姉妹の美への追究は飽くことを知らない…
68:玉川雄一 2002/04/01(月) 00:16 えー、今回は、世説新語言語編12番目のエピソード。 japanさんの「聖帝と小四姫」の次の話が元ネタです。 もちろん、元ネタではルージュじゃありません(笑) お酒(薬酒)を飲んじゃった、という話です。 ちなみに別バージョンがありまして、キャストは孔融と二人の子供。 まあやってることは同じですが。曲者親子ってのも共通かな(^_^;) しかし、鍾さんとこや陳さんとこのネタ多いですなあ、世説新語。
69:★ぐっこ 2002/04/01(月) 00:50 ぐわ〜〜〜〜っ!!!!!! 義兄上、ナイス!! お兄さんこういう頼もしいハァハァをお待ちしておりました! うーむ、あのエピソードがこうくるか〜っ! 凄い!いいですぞっ! たしかに、孔融もありましたな(^-^; 伝承作家のミス…?
70:japan 2002/04/01(月) 23:37 か、かか、カワイイ〜っっ!! あの簡潔な記述を、良くぞここまで萌え萌えなエピソードに…流石です、玉川様。 ラストも最高です。次の日曜に三人仲良くデパート巡りをしている姿が目に浮かびます。 ついでに妹達のランジェリーも選んであげる元常姉様…ハァハァ (実は昨日こんな話をしてたり・汗)
71:玉川雄一 2002/04/03(水) 02:00 ◆ 学園世説新語・第5話 〜お茶目さん♪〜 ◆ 満奮、風を畏る。(満奮は風を畏れ嫌っていた) 奮 (( ;゚Д゚))ブルブル 晋の武帝の坐に在り、北窓に瑠璃屏を作る、実は密なれども疎なるに似たり。 (晋の武帝司馬炎の側に坐しているとき、北の窓が瑠璃の屏になっており、 実際はきっちり閉まっているのに透いているように見えた)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」 ―――――――――――――‐┬┘ | 風 ____.____ | が | | 。。゚。°| | 吹き込む | | 奮 | | | |∩´Д`∩ | | | |/ ノ | |  ̄ ̄ ̄ ̄' ̄ ̄ ̄ ̄ | 奮難色有り、帝之を笑ふ。(満奮が困った顔をしていたので帝がそれを笑った) 奮 (((( ゚Д゚;)))ガクガクブルブル 炎 ( ´,_ゝ`)プッ 奮答へて曰く、(満奮がそれに答えて言うには) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ / 臣は猶ほ呉牛の月を見て喘ぐがごとし 奮 < (;´Д`)ハァハァ \ (私は、呉牛が月を見てもハァハァするようなものです) \_____________________ /劉\ 今で言う水牛は、江淮地方にだけ生息しているので呉牛といいます。 ( ´∀`) 南方は暑さがひどいので、そこの牛は暑さを畏れて、 / \ 月を見ても太陽かと思います。だから月を見てハァハァするのです。 | | 孝標 | | 『蜀犬、日に吠ゆ』という言葉もありますね。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ヒガイモウソウ(・∀・)カコイイ! |
72:玉川雄一 2002/04/03(水) 02:03 今回は、言語編第20番目のエピソード。 満寵の孫、満奮のお話です。「呉牛、月に喘ぐ」の故事ですね。 ところでコレ、明らかに晋代=東晋ハイスクールネタですけど、 世説新語をタネにした話はこちらのスレで行こうと思います。 東晋ハイスクールスレにはオリジナルの話ということで。
73:玉川雄一 2002/04/03(水) 02:20 っつーか、よく考えたら今回学三関係ないし(-_-;)
74:★ぐっこ 2002/04/03(水) 23:52 [sage] マターリ(^-^; 妙にイヤされました…不思議な間だな〜。
75:玉川雄一 2002/04/13(土) 03:15 [triglav@livedoor.com] ◆ 歴史家魂外伝・口は災いの…もと? ◆ 『山陽公戦記(笑)』にいわく。 馬超は益州校区に招かれて帰宅部連合の一員となったが、劉備の厚遇と、 また生来のキャラクター故か劉備と話をするときにはいつも彼女のことを「パンダ」と呼んだ。 「ねえ、パンダぁ。こんどの原稿だけど…」 「あん? 何や、この前話し合うたやんか。いい加減忘れるなや。せやから…」 しかし、劉備との付き合いの長い関羽にはそれが心底我慢ならなかった。 常日頃は怒りを表に現さない彼女が、あの「武装した紫式部」の面もちを浮かべて劉備に願い出たのである。 「姉者、今度という今度は我慢なりません。馬超をシメさせて下さい!」 久々に見る形相だが、劉備としては馬超とのやりとりは一種のコミュニケーションであり、むしろ楽しいものであった。 とはいえ関羽がここまで怒りを露わにするのだからただ事ではない。まずはなだめにかかる。 「なんや、関さんらしくないなあ。 …ええか、あの娘は曹操に追いつめられてきたんや。 アンタらはあの娘がウチの事をああ呼ぶゆうて物騒なこと言いよるけどなあ、そんなことじゃあ人からの理解は得られへんで」 だが、いくら敬服する劉備に言われたといって今回は承伏できることでもなかった。 そして、関羽以上に怒り心頭に発しているのは言うまでもなく張飛だったのである。 「せやったらなア、ヤツに礼儀っちゅうものを教えたるわ!」 またいかにも彼女らしく、両手の指をバキバキと鳴らしながら気勢を上げるのだった。 「はあ… まあ、気が済むようにしや。だけど、血ィ見るようなことだけはあかんで」 結局、ここまでなってしまうと劉備には二人を止める術はなかった。 翌日、帰宅部連合の緊急集会が開催された。馬超も当然招かれたわけだが、予定変更を余儀なくされておかんむりである。 「ちょっとパンダぁ、ちょおちょおむかつくー! アタシ原稿描かないといけないのにい!」 それでも渋々ながら着席して周囲を見れば関羽と張飛の姿が見えない。 「…あれえ、関Pとヒッキー(関羽と張飛のことらしい)はぁ?」 といって更に見渡すと、劉備の脇に二人が立っていた。しかも、こちらを凄まじい形相で睨み付けている! 「しおしお〜。アタシったら、部長のことパンダって呼んだから二人にシメられるところだったのね…」 馬超は、己の敗北を悟った。そうして、それ以後は劉備に敬意を持って接するようになったという− (続く)
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