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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
704:海月 亮 2005/07/03(日) 16:14 「いや〜…まさかあたしがそんなに勝ってたなんてねぇ…」 「本当に覚えてないの、しょーちゃん?」 「世議さんなんて魂抜けかかってたよ〜」 「覚えてない覚えてない…っと、これでリーチかな」 それから更に三局を消化して、何時の間にか総合得点がマイナスに転じていた丁奉は陸抗、陸胤、丁固を含めた下位卓の顔ぶれに混じって居たりする。 あのあと意識がはっきりするにつれて、彼女は人が変わったように負け始めた。自然体でのらりくらりとかわされて対策に頭を悩ませていた陸凱と虞レの集中攻撃を受けて、金額にすれば三万円近い勝ち分を一気に吐き出したのだ。同時に、仕掛けていたガンパイのタネを見破られた朱績も陸凱の逆襲を受けて大きくへこまされていた。 「まぁ、この手のゲームは欲がないほうが強い場合ありますからね」 言いながら丁固が、引いてきた牌と手役を見ながら言う。 「あと承淵さんは、半分寝てるときのほうが手強いかも、です」 その次に牌を捨てながら陸胤も続ける。 「そんなもんなのかな…あ、残念違うか」 「あ、それ当たりだよ〜」 「え、うっそ?」 丁奉が切った牌を取り上げて、手役を開陳する陸抗。 「だって普段のしょーちゃん、何考えてるか解りやすいんだもん。あ、断公のみで千点だよ〜」 「ちぇ〜」 素面に戻った彼女の周囲では、まぁそんな平和な空間が生まれていたわけである。 順位はほぼ固定されつつあった。一局ごとに陸凱、虞レ、そして調子を取り戻した呂拠の三名でトップの順位はめまぐるしく変わり、下位四名からちまちまと点を稼ぎながらやっとの思いで追随する朱績。 (まいったなぁ…おねーちゃんから教えてもらった手は敬風達に見破られてるみたいだし…何か良い手はないかなぁ) またしても下位卓に引きずり降ろされて来た朱績。対面の丁固が何か切ろうとしたが、それは今張っている朱績の当たり牌であることは彼女には解っていた。そういう仕掛けをしたからである。 しかし、どういうわけかそれが切って出されることはなかった。 (あれ…まさか、あんな牌を抱え込むなんて?) 一瞬、彼女は違和感を感じた。しかし、陸胤のことだから何か珍しい手を狙ってるのかもしれないと思い直し、上家の丁奉の牌を覗き込む。こちらにも、同じ牌を握っているようだ。 だが、彼女もそれを切ることはなかった。 (え…承淵まで…?) 偶然にしてはおかしい。いくらなんでも二人して示し合わせたように同じ牌を抱え込むなんて。 まさかこの二人にも仕掛けがばれたのだろうか。先の局も、陸抗に何故か狙い撃ちされている時点で、彼女は仕掛けがばれたことを疑うべきだったのだが…。 (はは…まさか、ね) タネをばらしてしまうと、彼女が何らかの“目印”をつけていたのは万子の一から三の牌。彼女はわずかな間に各二枚づつ計十八牌、両方の卓合わせて三十六牌に印をつけていたのだ。そして、彼女が引いてきたのは、今現在の手役に不要な二の万子。彼女の記憶が間違っていないなら、丁奉と陸胤の二人が抱え込んでいるのは一の万子。 捨て牌を見る限りではそれを利用できる手役ができているとも思えない…というのは、あくまで彼女の希望的観測でしかない。わずかな時間で牌に目印をつけるくらいの腕があるくせに、捨て牌から手役を読める能力がなかったことが致命的な弱点であった。 プラス、自分の力を過信していたことが朱績の命取りとなった。 彼女の姉・朱然なら、危険を察知し確実に戦略を切り替えていただろう。あるいは、そこいらの有象無象が相手なら、それでも良かったのかもしれない。だが今此処にいるのは、まかりなくも何か光るものを見出され、長湖部幹部候補生となった少女達なのだ。 「ロン、一通ドラ2で満貫です♪」 「同じく、純チャンドラ1。あたしは親満ですかね?」 「何でー!?」 同時に牌を倒す丁奉と丁固。 この瞬間、朱績はトップ争いの争奪戦から一気に引き摺り下ろされた。 対戦数は既に十回をとうに超え、薄く開いたカーテンの隙間から、弱々しい冬の朝焼けの光が入ってきた。 時間ももう朝の五時を指していた。そろそろ限界に近い者も出始めたようである。 「よ〜し…じゃあ泣いても笑ってもこれで最後にするよ〜」 「え〜?」 陸凱の提案にひとりだけブーイングを飛ばす朱績。 「これで終わったらあたし逆転できないよ〜」 「文句言うな。承淵や敬宗、子賤だって逆転不可能なんだからあきらめろ」 実は陸抗もなのだが、まぁ、とにかく陸凱、呂拠、虞レ以外は誰がどうがんばっても1位は望めない。暫定1位の呂拠を引き摺り下ろしたって虞レか陸凱が優勝を持っていく状態だ。 「そんなぁ…」 がっくりとうなだれる朱績を見かねたのか、その暫定1位が助け舟を出した。 「いいじゃないの敬風、最終戦くらい派手にサシウマつけよーよ」 「あぁ?」 「このままじゃどうせあたしか世洪かあんたしか得しなさそうだし…順位に応じて、サシウマの値を変えてやってもバチ当たんないでしょ?」 「それが勝負、ってモンでしょ。あたしはむしろ今止めたって文句言うつもりないよ」 「面白くないじゃん。最後の一発であたしら三人が負けたとき、あたしらの得点を0換算にして買ったヤツにつぎ込んでやるとかよくない? そうすれば計算上ドンケツの敬宗も逆転可能だし、あたしらが勝てば儲け倍だし、そのほうがスリルあっていいよ?」 「う〜ん…世洪は?」 「私は別にいいよ…ふぁ…そういう理不尽な大博打も、たまには」 あくびをかみ殺して虞レも同意する。 「なら認めてやるか。その代わり、あんたが悪戯した分の牌はとっかえて使わせてもらうから…いいわね公緒?」 「う…わかったわよぅ…」 渋々承諾する朱績。 予備に用意された牌と、印付けされた牌を交換する数分のインターバルを挟んだ後、運命の最終戦が幕をあけた。
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