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713:雑号将軍 2005/07/04(月) 22:27 ■卒業演奏 Part3■ しかし、不意の客人はこの二人だけではなかったのです。私が、二人と談笑しているまさにそのとき。 私がもっとも会いたかった人が来てくれました。 本当に綺麗にまっすぐと腰まで伸びる黒髪。痩せてしまっていたけれど私は一目見て彼女が周瑜さんだとわかりました。 「ちょっと伯符、自分で歩けるからっ!」 「なに言ってるんだ。さっきも倒れそうになったくせにっ!」 周瑜さんは伯符という少女に抱きかかえられて、私の方まで来ると降ろしてもらい、恭しくひざまずくと、その美しい声で私に声をかけました。 やっぱり病気のせいか、どことなく顔が強ばっているような気がします。 「今日はお疲れ様でした。実は私、献サマにお詫びしなければならないことがございます」 「や、やめて下さい。私はもう「献サマ」じゃないんですから。劉協というただのピアノが好きな女の子です」 私の言葉に周瑜さんは最初、驚かれていましたが、微笑すると、近くにあった椅子に腰を下ろしました。 私は周瑜さんが落ち着かれたのを見て、話を進めました。 「ミカン売りの少女は自分だった・・・ですよね。音楽の先生が教えて下さいました。周瑜さんのピアノは本当にお上手で、私なんかは到底及びませんでした。今日はどうでした?ちょっとは周瑜さんに追いつけましたか?」 私は訊いてみることにしました。訊くのが怖くないと言えばウソになります。でも、私は、どうしても訊いておきたかったのです。 私が前へ進むために・・・・・・。 周瑜さんはしばらく黙り込んでいました。 やっぱりまだまだだったのでしょうか。私がそんな悲観的になり顔を打つ目受けて考え込んでいると、ついに周瑜さんがその口を開いて私の質問に答えてくれました。 「・・・・・・私の負けです。もう献・・・劉協さんのピアニストの実力は私の全盛期のものを遙かにしのぐほどに成長しています。だから、もっと自分に自信を持って下さい。貴女には私なんかとは比べものにならないほどの素養を持っておられるのですから・・・・・・。今日の演奏が何よりの証拠です」 私はうれしかった。本当にうれしかった。自分が目標、いや、憧れとしていた人から誉めてもらえるなって思ってもいませんでした。 私はちょっぴり泣いてしまいました。私はそれを隠すように手で拭うと一つ提案しました。 「今から、孟徳さんと玄徳さんと一緒に演奏しようと思うんですけど、周瑜さんとそちらの方もどうですか?」 「あっ、紹介が遅れました。私の幼なじみで親友の孫策という者です。今日も彼女のおかげで卒業式に来ることができました」 周瑜さんは慌てて横にいた少女・・・孫策を私に紹介します。 「私、孫策って言うんだ。よろしく。で、公瑾。どうするんだ?」 孫策さんは私にからっとした笑顔で答えてくれました。 「でも、そろそろ帰らないと・・・・・・」 「公瑾〜。そんなにしたそうな顔で『帰らないと』とか言われてもなあ。やってたらどうだ?自分の後悔がないようにさ」 孫策さんの言葉に周瑜さんはうれしそうに頷いていました。二人は通じ合っているみたいです。私もそんな友だちがほしいです。 「やれやれ。蒼天学園の元トップどもが、がん首揃えて演奏することになるなるとわねっ!」 「まったくや。関さんや益徳にも見せたかったわぁ」 「普通は見られないスペシャルステージってとこだ」 孟徳さん、玄徳さん、孫策さんの三人が代わる代わるそう言いながら、笑っています。私もそれにつられて声を上げて笑ってしまいました。 しばらく、みなさんと蒼天学園での出来事のお話をしていました。楽しかったこと、つらかったことなど、いろいろなことを聞きました。 やっぱり箱に開けられたちっぽけな窓から見える世界だけでは、すべてを見ることはできなかったんですね。 「じゃあそろそろ、やろっか」 話しが一段落したところで孟徳さんが切り出しました。それに皆さんも素直に答えます。 玄徳さんはギター、孫策さんがドラム、孟徳さんは指揮者を務めることになりました。 「ピアノは劉協さん、弾いてもらえますか?」 私は思わず息をのみました。周瑜さんが私に、ピアノを弾いて欲しいと言って下さったのですから・・・・・・。 「よ、よろこんでっ!じ、じゃあ、周瑜さんはシンガーをお願いできますか?」 私の混乱する言語中枢は必死に言葉をたぐり寄せ、周瑜さんの問いかけに答えることができました。 「わかりました・・・・・・。それで、歌う歌は?」 「これしかないじゃないっ!この歌がなかったらあたし今頃こんな生活してなかっただろうし」 周瑜さんが物腰鷹揚にそう尋ねると、横で鞄の中を探っていた孟徳さんは四人分の楽譜を取りだして手渡します。 どうやら孟徳さんはここに来る前からこうなることを予測していたみたいです。 「こ、これは・・・・・・」 その楽譜は古びて、セピア色になっていていました。端の方はもうぼろぼろです。それでも私はこの曲を弾いていたときのことを昨日のことのように、本当に鮮明に覚えています。 「じゃ、いくよっ!」 そう言うと、孟徳さんは腕をゆっくりとなだらかに振り始めました。私もゆっくりと鍵盤の上を滑らせます。 それに続いて、玄徳さんのギター、孫策さんのドラムが音を奏でます。そして・・・・・・周瑜さんの美声が波が海岸に広がっていくかのように、体育館全体を流れていきました。 この日は私は生まれてから一番楽しい日だと思います。 ひとりごと・・・・・・ 「卒業演奏」これでお終いです。なんとか短くしようと頑張ったのですが、無理でした・・・・・・。 誰か書きたいなあって掲示板をさまよっていると、雪月華様の「学園正史 劉氏蒼天会紀 孝献蒼天会長紀」を見つけまして・・・・・・。さらにある一部分にひどく萌えてしまって、こんなことに。申し訳ありません。雪月華様。一度ならず二度までも面汚しをしてしまいまして・・・・・・。 後、どうでもいいことなんですが、あの「広い世界」は自分が小学校の卒業式で歌った歌で、僕が音楽の授業で歌ってきた歌の中で一番好きな歌です。 でも歌詞がちゃんと覚えて無くて・・・・・・。 もう感想は躊躇無く批判して頂けるとありがたいです。 読んで頂き本当にありがとうございました。
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