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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
812:雑号将軍2005/10/29(土) 18:52
Memory that should be abhorred
〜忌むべき記憶〜
夏休みも終わり、幾分か夏の暑さも和らいできた。もうそろそろ、冬用の制服も出さなければならないのだろうか?できればもう少し、地肌に日光を浴びていたいものだなあ。
そんなことを考えながら、皇甫嵩(義真)は頬杖をつきながら、窓から見える景色を眺めていた。
ここまで、私はいろんなことをしてきた。しかし、今はそんな血なまぐさい世界から抜け出したただの隠居人だ。もうなにもすることはないだろう。
皇甫嵩はぼんやりと空の景色を眺めながらそんな取り留めのないことを考えていた。
そんなとき、皇甫嵩の親友である盧植が教壇の中央に立った。彼女の腰まであるライムグリーンの髪と犬のように愛らしい眼は男女問わず人気がある。もっとも、皆、恐れ多くて一歩下がって憧れるしかないのだが・・・・・・。
「今日は今年の華夏大学園祭での、我がクラスの出し物を決めたいと思います。何か意見のある人はいますか?」
盧植の言うように、毎年一〇月にこのでは華夏大学園祭――世間一般に言う文化祭や学園祭――が催される。これは華夏学術学園都市に所属するすべての教育機関合同で行うため、さすがに規模も広い。そして内容も凝っているのでちょっとやそっとのものでは客が見込めない。
だから、今回、文化委員になった盧植は皆に意見を求めているのだ。
しかし、盧植はなんとも嬉しそうに頬を転ばせている。いや、にやけていると言った方が正しいだろう。まるで、好きな人への想いが届いたかのようなのだ。
(子幹の奴・・・・・・なにかあるな)と皇甫嵩は勘づいた。
これはただの行き当たりばったりなどではなく、盧植とのつき合いからのデータによる確率計算による。
しかし、所詮数字では次のような言葉が飛び出すことは予測不可能であった。
盧植に呼応するように、金髪の少女・丁原(建陽)が右手を天井に向けて高々と上げた。そして、恐るべき一言を繰り出した。
「はい〜はい〜!あたいは『コスプレ喫茶』がいいと思いまーす!」
すぐにクラスの中がざわつく。当然である。急に「コスプレ喫茶」をすると言われればそうもなる。しかし、それも彼女の一言に一蹴され、歓声へと変体することとなる。
「あたしもー!それがいい!みんなも義真のコスプレ見たいでしょ?」
さらには赤紙のひとふさが飛び跳ねている少女であり、皇甫嵩の親友である朱儁(公偉)までもがクラスの出し物に「メイド喫茶」を開くことに賛同したのだ。
すると、辺りから一斉に歓声が上がった。キャーキャーと黄色い悲鳴さえも響いてくる。皇甫嵩はそのルックスと物言からどうも女生徒から人気がある。だからこそ、この一言には万金の重みのがあった。
皇甫嵩はこのとき「しまった」と本気で後悔した。
「なぜもっと早くきがつかなかったのか」そんな無念でいっぱいであった。気付く機会ならいくらでもあった。
なぜなら最近、彼女ら三人は何かと集まっていたのだ。どうやら皇甫嵩が反対することを見越して、三人で話を進めていたのだろう。
(あの子幹のことだ。票集めは完璧だろう・・・。さらにあの公偉の言葉でクラスの浮動票もすべて賛成に変わるだろう。だとすれば、私がその悪鬼から逃れる方法は・・・・・・)
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