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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
813:雑号将軍2005/10/29(土) 18:53
「義真・・・・・・すっごい似合ってる!」
「シンちゃん(皇甫嵩)ってこんな服も似合うんだ・・・・・・」
「こっ、こっちを見るな!あっちを向け、あっちを!」
皇甫嵩が耳の先まで真っ赤にして、賛美の言葉を贈る朱儁と丁原に怒鳴っている。それに対して、朱儁と丁原は品定めするように皇甫嵩を凝視し、ときどき下衆な笑みを浮かべていた。
とうとう皇甫嵩は悪鬼の軍勢から逃げ延びることはできず、今こうして彼女らの餌食となっているわけだ。
それで、皇甫嵩の着ている服装なのだが・・・・・・。
「・・・・・・義真・・・そのメ・イ・ド・服、ばっちりみたいね。流石は私の義真だわ」
盧植はしたたかな女だ。「メイド服」と「私の」をしっかりと強調し、皇甫嵩が照れるのを狙ってきた。もちろんそんな言葉を書けたのは皇甫嵩が照れるところを見たいからだとは言うまでもないだろう。
盧植の言うように、皇甫嵩が着せられたのはメイド服だった。
フリルがちりばめられていることは当然として、ミニスカート調のワンピースに純白のエプロンドレスにカチューシャ、さらに白のロングニーソックスも忘れてはいない。
盧植はこのときに備えてある人物に皇甫嵩にぴったりのメイド服の製作を要請していたのだ。もっとも自らにもナース服を用意していたようだが・・・・・・。
その証拠に急造仕様の更衣室から出てきた盧植は桜色のナース服に着替えている。もちろん頭にはナースキャップがピンで留められていた。
それは盧植のライムグリーンの髪と合わさって、まるで草原に花開く白菊のようであった。
「いつから子幹のものになったか。私は?」
皇甫嵩が左手を腰にあて、普段の低い声で盧植に抗議する。どうやら冷静であるとみせようとしたのだろう。しかし、顔が真っ赤であるため照れ隠しにさえなってはいない。
盧植はまったく気にする素振りも見せずに、あるいは聞こえていなのか、ただくすっと口元に手を当て微笑して、メイド服姿の皇甫嵩を見つめている。
流行りの服を着せられたマネキンのような気がして、皇甫嵩はどうも落ち着けなかった。
そんな皇甫嵩に魔の手が伸びてくる。
あろう事か、盧植がじりじりと歩を進め始めたのだ。皇甫嵩にとっては、森の中で熊に狙われたも同じであった。
「こ、こら!近づくのはやめろ!頼むから、な、子幹!」
皇甫嵩が珍しく取り乱し、両手を前に突き出して盧植をこちらに来させまい必死である。しかし、盧植にはそんなものは通用しなかった。蛇のように身体をくねらせ、城門を突破し、本陣へと飛び込んだ。
皇甫嵩が声を掛けようとしたとき、皇甫嵩の首に盧植の両手が迫った。皇甫嵩は今度はなにをされるのかと焦りを隠せなかった。
だが、それは全くの杞憂であった。盧植は襟元に着いているピンク色のリボンを直しただけであったのだ。
「義真・・・。あなた、リボンを結んだことないでしょ?もうめちゃくちゃよ。じっとしててよ。今なおすから・・・・・・患者さま、じっとしていて下さいね」
「し、しかたないだろう。今までこんな、女っぽい服は着たことがないのだから・・・・・・」
皇甫嵩の視線がわずかにうつむいた。それと同時に声にも力がない。
なにやら不安そうにも聞こえてくる。
無論、盧植が看護師になりきっているのがその原因ではない。まあ、まったく違うとは言わないが・・・・・・。
彼女は今まで、ジーンズやカッターシャツやトレーナーなどどちらかといえば、男装をすることの方が多い。なにぶんと皇甫嵩にはこんなフリルの付いたスカートを履いたことがないのだ。
そんなことを知ってか知らずか、自らの衣装に身を包んだ朱儁が皇甫嵩の両肩に手をのせ、その愛嬌のある顔を覗かせる。
「だいじょぶだって!義真は十分に綺麗だからっ。こんなメイドさんならみんな自分に仕えてほしいって思うよ!」
「な、なにを言うか!わ、私が、き、綺麗なはずなどあるか!そ、それにな、なんだ公偉、その白一色の服は?」
「綺麗」とひとさら強調された皇甫嵩は気恥ずかしくなってどもってしまった。むしろ「仕えてほしい」のほうが皇甫嵩の自尊心の高さから気になるのだが・・・・・・。
なんだかんだ言っても皇甫嵩も女子高生のようだ。
「かわいいでしょー」と言って朱儁はその場でくるりと回ってみせる。
朱儁は白一色のワンピースを着ていた。
もっともところどころにピンクのリボンがあしらわれているので完全な白とは断言できないのだが。
ワンピースは胸元までのミニスカート調で、両腕には純白のアームカバー(日焼け防止が目的ではない)をつけ、首には首輪とおぼしきものが付いている。さらに衣装の先端という先端にはフリルがあしらわれている。なんとスカートのフリルはなんと二段になっていた。
「これこそ、白ロリファッションよ!」
朱儁は目を輝かせてそう言い放ち、見事にポーズを決めた。
そんなとき、朱儁と入れ違いに更衣室に入った丁原が弾丸のように飛び出してきた。そして、皇甫嵩と朱儁の間で見事に止まる。
「じゃーん!見て見て、シンちゃん!こーちゃん!この耳としっぽ、かわいいと思うでしょ!」
丁原が教室中に響き渡るような大音量で言う。さらには右手を猫手にし、それを付け耳にあてて、ポーズを取っている。
猫だ。丁原はセーラーブラウスに猫耳としっぽを付けていた。
しっぽはスカートの下から垂れるように伸び、耳の毛は茶色で肌触りも良さそうである。着衣もセーラーブラウスこそ、学園のものだが、スカートはミニもミニ、なんと、膝上十五センチという驚異の短さである。
しかし、これが背の低い丁原2は恐ろしいほどに映えていた。
皇甫嵩は朱儁と丁原、さらに思い思いのコスプレを施した、クラスの面々を眺め、最後にメイド服を身に纏った自分を鏡越しに見た。
かつては「生徒会の剣」として、畏敬の対称となった皇甫嵩が今はメイド服を着ている・・・・・・。そんな自らの姿にあきれるのも無理のないことだった。
しかし、皇甫嵩もまんざらではないようで、クラスメイトに「メイド服姿かわいいっ!」とか「綺麗よね。義真って」とか言われるたびに否定をしながらもどことなくうれしそうだった。
そんな姿を盧植はちらちらと皇甫嵩の方を見やり、そのつど、笑みを浮かべている。その笑みも微笑といえるような見やすい者ではなく、ニヤリと笑う下卑な笑みを浮かべて愉しんでいた。
が、しばらくして、思い立ったように椅子からすっと立ち上がり、再び教壇に上がった。
「皆さんー!集まってください。学園祭までもう日にちがありません。したがって、これから練習に入ります。今日はプロの方にも来て頂きました。それでは、以下の班に分かれてください。一班・・・・・・・・・・・・」
皇甫嵩は盧植の言葉を聞いたとき、なぜか背筋に冷たいものが流れた。
(なにやら、そのプロとやら・・・・・・。いやな予感がする)自らの勘がそう訴えかけていた。
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