下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
851:弐師2006/02/05(日) 18:13
易京棟、
それは、彼女、公孫伯珪の心の如く、高く堅く、そびえ立っていた――――――――
「えっと、伯珪さま・・・書類を持ってきました。」
「ああ、ありがとう士起、其処に置いていてくれ。」
生徒会長室を出て、あたしはため息をつく。
最近は、伯珪さまはあたし以外を部屋に入れようとしない、従妹の範さま、中等部の妹、続さまですら、だ。
憂鬱な気持ちのまま廊下をしばらく歩いていると、前から範さまが歩いてきた。
「あら、士起ちゃん、どうしたの?そんな顔しちゃって。」
「え・・・」
あたしの悪い癖、気持ちがそのまま顔に出るのだ、ただでさえ範さまは鋭い、すぐにあたしの気持ちなんか看破してしまう。
「いえ、その・・・最近の伯珪さまの様子を見ていると・・・」
「そうね・・・最近の伯珪姉は、以前に増して引きこもり気味よね〜。」
あたしを励ましてくれようとしているのだろう、明るく話しかけてくれる。
なんていい人なのだろう、あたしと同い年とは思えない、そう思うと、逆に、もっと落ち込んでくる。
「まあ、流石の伯珪姉でもさ、敵さんが来れば立ち直るでしょ、そう落ち込みなさんなって。」
「ありがとうございます」
それで話は終わり、寮の自分の部屋に戻る。
いつか来るべき袁紹との戦いを考えると、その夜は、なかなか寝付けなかった
それは、予想外に早く訪れた。
袁紹の攻撃、そして
伯珪さまとの、別れ――――――――
3月、桜の季節。
花びら舞い散る中、彼女、袁紹は攻めてきた。
桜吹雪の中布陣する彼女の姿は、名家の風格を感じさせた。
だけど、伯珪さまはきっと負けない。
あの方は、決して、負けない。
あたしは、そう信じている。
「ふん・・・」
屋上から布陣を見下ろす、
たかが棟一つにご大層なことだ、だが・・・面白い。
久しぶりに、血が騒ぐ。
しかし、だ、白馬義従だけでは、勝ち目はないだろう。
棟の中に戻り、続を探す。
「続、いるかい?」
「なあに、お姉ちゃん」
「悪いけど、BMFのところに使いしてくれないか。」
「張燕先輩のとこだよね、わかった!」
そう言って、すぐに駆けだしていく、よっぽど嬉しかったのだろう、まったく、変わった娘だ、そんなに「お使い」は楽しいのか?
まあ良い、袁紹、首を洗って待っていろ。
やった!お姉ちゃんから久しぶりにお使い言いつけられちゃった!
あいつ、関靖先輩がきてから、お姉ちゃんは、私に冷たくなった、範お姉ちゃんも何も言わないからって関靖先輩ってば、調子に乗っちゃってべたべたして・・・
と、噂をすれば、あの人だ。
「ああ、続さま。」
笑いながら会釈してくる、なによ、いちいち、頭に来る人。
なんなのよ、私に何の用?いいかげんにしてほしいわ。
「あなたに、さま付けされる覚えはありません!」
そう言い放って、あの人を残してガレージまで一気に走る。
いらいらした気分のまま、私は愛車にまたがった。
「・・・と、言うことなんです。」
「ふーむ、士起ちゃんも大変ね。」
廊下を歩いていた士起ちゃんを「範先生の、お悩み相談室〜!」と称し、私の部屋に連れ込んだ。
理由は単純で、私が見ていられなかったからというだけ。
彼女が「範さまってこんなひとだったっけ?」みたいな顔しているのはまあ、放っておいて、大事なのは彼女から聞いた話だ。
まったく、続ちゃんも困ったものだ、なにも、其処まで言わなくてもいいのに。
だが、だいぶ周りに馴染んでいるといっても、まだ伯珪姉の元に来て日の浅い士起ちゃんが、一部の人から少なからず疎まれているのは事実だ。
そう言う私だって、嫉妬が全くないと言えば嘘になるだろう。
本人は至ってよい娘なのだが・・・「新参者」の悲しさか。
「まあ、あの娘が帰ってきたら、私からも言っておくから、元気出して、ね?」
「はい・・・ありがとうございました」
一応、彼女を部屋まで送ってあげることにした、伯珪姉は、戦いの準備で忙しそうで、彼女にかまってばかりもいられないだろう、士起ちゃんは、今、とても寂しいのだと思う。
だから、私だけでも、この娘を大切にしてあげなければ。
わかっている、だけど、どうしても
――――――――胸の奥の嫉妬は消せなかった。
上前次1-新書写板AA設索