★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
860:冷霊2006/02/11(土) 16:41
白水門への出立

「やっぱり行くんですか?」
「ああ、タマのお願いなら断る理由がないだろう?」
楊懐が荷物をまとめ、問いかけに答える。
「でも、先輩達がわざわざ白水門まで行かなくても……」
「あたし等だから行くんでしょ?」
トウ賢の言葉を高沛が遮る。
「それだけ信頼されてるって証拠でしょう。嬉しい話じゃないの」
高沛がトウ賢の肩に手を置く。
「それに気になることもあるしね……」
高沛が楊懐に視線を送る。
楊懐は応じるかのように頷く。
「……荊州の劉備」
視線の意味を理解した冷苞が口を開く。
「いくら張魯対策っつっても、わざわざ呼ぶ必要もないと思うんですけどねー……」
トウ賢が呟く。
周りの意見を鵜呑みにするのは劉璋の悪い癖である。
今回は曹操への偵察もこなした張松の提案だが……どうも腑に落ちない。
賛成派が異様に多かったのも気になる所である。
「張魯くらい、オレとトウ賢でもトバせるのに……」
「冷苞、相手を倒すだけが戦いじゃないぞ」
楊懐が嗜めるように言う。
「相手を制するのも戦いだ。お前等が行けばどれだけ怪我人が出ると思う?」
「あ……」
冷苞が不意に声を漏らす。冷苞やトウ賢が腕が立つのはわかる。
下手すると高沛や楊懐とタメを張るかそれ以上なのだ。
そんな二人が行けば当然敵にも大きな被害が及ぶだろう。
「タマちゃんの優しさってトコかな?相手のことまで気使う必要ないのにさ」
クスリと微笑む高沛。
「ま、逸る気持ちも分からないでもないが、な」
楊懐が笑みを浮かべ、冷苞の肩を叩く。
「楊懐さん……」
冷苞が握り締めていた拳をそっと解く。
「ま、私の初陣もお前達と同じ頃だったからな」
懐かしそうに楊懐が遠くを見つめる。
その様子を見て、同じく目を細める高沛。
「そうそう、初陣と言えば楊懐が……」
「こ、高沛!」
少しだけ慌てた様子で楊懐が声を張る。その頬は僅かに紅潮している。
「初陣がどうしたんですか?」
冷苞が首を傾げた。
「ん?聞きたい?聞きたい?」
「聞きたいでーす」
トウ賢が口元を綻ばせながら答える。
一方、尋ねた高沛の口元も既に緩みっぱなしだったりする。
「無駄口を叩くな!高沛、さっさと行くぞ!」
「楊懐せんぱーい、まだ荷物詰め終わってないんじゃないんですかー?」
憮然と立ち上がる楊懐へトウ賢が追い討ちをかける。
「だ、だからさっさと準備を済ませろ!それに高沛も終わってないだろう?」
「……あ」
そこには詰める途中で放置された高沛の荷物が置いてあった。
「それじゃ、さっさと準備済ませちゃいましょーか。冷苞は楊懐先輩の手伝い宜しくー」
トウ賢はすたすたと高沛の後に付いて行く。
「うーん……一体何が……?」
冷苞は首をかしげたまま、楊懐の方へと歩み寄っていった。
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