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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
918:★教授2006/04/16(日) 22:40
■■アメフリ■■
「ふーむ、私の予想通り雨になったか。天気予報というものは私くらい確実でないといかんな」
諸葛亮は白羽扇を口元に校舎玄関前に立っていた。しとしとと雨の降り注ぐ天を仰ぎ涼しげな表情をしている。
トレードマークの白衣を脱ぎ、髪を結わずに流したその姿は正に凛とした美少女。誰もが思わず息を呑んでしまうほどの美貌を降りしきる雨が更に引き立てる。これこそ絵になると言ったものだろう。
「ふふふ、だが私が傘を忘れるといったベタな展開にはならん。むしろ、あってはならん事態だ…萌えられる要素ではない」
喋らなければ…だったが。
「ひゃあー…マジかよー。予報になかったぞー」
「予報はあくまでも予報…ってか。全力疾走すれば被害は少なくて済むかな」
「仕方ないですね。面倒ですけど走りましょうか」
諸葛亮の脇を張飛、馬超、王平ら元気な娘さん達が走り抜けていく。鞄を傘代わりに焼け石に水な抵抗をしながら駆けていく後姿に諸葛亮は心の中で『あれもまた萌えというヤツだな』と頷いていた。
続いて諸葛亮の横を通り過ぎるは、お馴染みの二人組だった。
「孝直〜…もう少し傘こっちに傾けてよー…」
「もうっ! これ折り畳みなんだからそんなに大きくないのっ! 私だって濡れてるんだから!」
ぐいぐいと小さな折り畳み傘の遮蔽範囲に身を潜り込ませようとする簡雍とそれを微妙に防ぐ法正だ。どうやら傘を忘れた簡雍が法正の折り畳み傘に入れてもらっている御様子。結局真ん中に傘を持ってくるという事で落ち着いたのだろう、二人とも肩を濡らしながら歩いていった。
「あの二人はいつも私の心をくすぐる…。次なる策を実行に移したくなるではないか」
ごそごそと自分の鞄に手を突っ込みながら帰宅部公認カップルを見送る諸葛亮。だが、今朝そこに入れたはずのものが見つけられない。段々と涼しい顔が引き攣り始める。
「………何故だ。間違いなく今朝入れたはずだ…折り畳み傘…」
鞄を覗き込み、その小さいながらも雨天時に効果を抜群に発揮してくれるアイテムを目で探す。しかし、その姿を視認する事が出来ない。彼女の頭の中で仮説が二つ浮かぶ。
仮説1:入れたつもりだった
「いや、仮説にしても有り得ん話だ。用意周到だった、昼も確認した…」
却下。
仮説2:賊に盗まれた
「一番可能性が高い。放課後間際の突然の雨、少し席を離れた私。この隙くらいしか思いつかんが…それしかないな…」
採用らしい。
「ともあれ…仮説2だったとすると…。全く、何処の命知らずだ…定例会議にかけんとな」
悪態を吐きながら傘の入ってない鞄を頭の上に掲げる。こうなれば仕方ない、といった表情だ。
「どう考えても傘を持ってきている連中が校舎内にまだいるとは思えん…諸葛亮孔明、一生の不覚。ラボに篭るには準備不足…」
普段から専用ラボに篭る事もしばしばだったが、食料及び着替えが必須の泊り込み。今日は篭るつもりは無かったので用意していなかったのだ。
「運動は苦手な方だ…が、進退窮まった。やるしかない…」
意を決すると鞄を傘代わりに勢いを増した雨の中に飛び込んでいった………────
「全く酷い目にあった…」
寮の玄関で髪をかきあげ、溜息を吐く諸葛亮。鞄が傘の代用になるにはあまりにも小さすぎたのか、全身は濡れ鼠になり制服がべっとりと体に張り付いてしまっている。上着に至っては下着が透けてしまっていた。
「まずは体を温めんとな。風邪を引いては元も子もない」
寮の管理者が気を利かせたのだろう、玄関先に置いてあったタオルを一枚手に自室へと向かう。と、そのドアノブに見慣れた黒いものがぶら下がっていた。持っていたタオルと鞄がどさどさっと床に落ち、わなわなと怒りに震えだす。
「これは…私の傘! し、しかも使用済みではないか!」
そう、それは自分の所有物。市販物に頼らない彼女が買った数少ない生活用品、それだけに妙な愛着心のあった折り畳み傘だったのだ。
「おのれ、憎き下手人! 久々に私も怒り心頭だぞっ!」
怒りに打ち震えながらタオル、鞄、そして傘を回収して部屋に入り…そして乱暴にドアを閉めた。たまたま近くにいた馬岱がびっくりして階段を踏み外したのはまた別の話。
話はこれでお終いなのだが…さて、諸葛亮の傘を盗んだ張本人は誰だったのだろう? 最後にヒントを。
予報になかった雨、傘を持ってきてない人多数につき濡れるは必然。でも、ずぶ濡れにならなかったのは?
大体の予想は付いたでしょう。機会があれば、続きのお話をするとしましょう。
了
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