★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
922:弐師2006/05/13(土) 20:52AAS
周りは美しい森に森に覆われていた。
その中に敷かれたとても広い遊歩道の中に私達は布陣している。
遊歩道は幅だけでも100mはあるだろうか。煉瓦敷きになっていて、平常時ならば、とても静かでいい場所だろう。こんなところで戦うというのも気が引けるが、仕様がないことだ。
・・・やはり、多くの人間が整然と隊列を組み、向かい合うのは何度体験しても興奮するものだ。
敵の周昂は、私たちの軍の二倍ほどの兵力。兵力の差だけで言えばかなり絶望的と言っても良いだろう。
しかし、つけ込む隙はある。
まず、将の器。
周昂の名前は今日初めて聞いた、しかし、孫堅さん程の将はなかなか居ないだろう。
第一、今まで名前すら聞いたことさえない将だ、まあ、その程度と言うことなのだろう。
そして、兵の質。
今、袁紹の精兵はお姉ちゃんとの戦線に居る。ここにいる兵はそれほど練度が高くはない、それは今こうして向き合っていれば分かる。以前、お姉ちゃんの元で対峙したときと、明らかに「気」が違う。
それに対して、孫堅さんの軍は精鋭中の精鋭。二倍の兵相手でもかなり持ちこたえられる筈。
まずは耐えに耐えて、敵の崩れを誘う。

そして、私の率いる白馬義従。彼女らを率いて、私が本陣に突っ込む。

それが成功すれば、勝てる。
ミスれば、それで終わり。

白馬義従の娘達の顔を見回す。誰一人とておびえている娘は居ない。
ふふ、上等じゃない。流石は精鋭中の精鋭だ。
やってやるよ。私だって公孫一族なんだから、名を汚すわけにはいかない。



「よし!進軍だ!」

孫堅さんの号令の元、歩兵のみんなが敵軍へ攻撃を仕掛ける、一段目は程普さんが指揮を執っている。一旦は押し込み、その後少しずつ誘い込む作戦だ。
まずは互いの軍の一段目がぶつかる、兵力差を物ともせず、こちらが押し込んでいっている。
段々と敵の一段目が崩れ始める、程普さんは兵達の先頭で竹刀を振り回している。

ん?・・・おかしい、だんだん敵兵が二つに別れている、誘い込み挟み込む気か。
程普さんは気づいていているのかいないのか、そのままどんどん前進している。いや、させられているのか。
敵陣に飲み込まれ、挟み撃ちに合う寸前のところで、いきなり孫堅さん自ら率いるバイク部隊が突っ込んでいく。それと入れ替わりに、程普さんが後退していく。なるほど、流石は孫堅さんの配下、よく訓練してある。
孫堅さんは挟み撃ちにしようとした兵達を追い散らし、同様に引き上げてくる。
敵は算を乱し、結局全軍で押しつぶそうと前進してくる。
必然的に、陣は乱れる。
そして、決定的な隙が出てくる。
本陣と前衛との隙間。そこに全速力で、突入。

「今だ!本陣の周昂の所に突っ込むよっ!」

大地が震える。どんどんスピードを上げ、本陣に近づいていく。

乱戦に、突入する。
周りの娘達には目もくれずに、ただ一直線に周昂の元へ向かう。
「邪魔をするなら、容赦しないよっ!」
どんどんと本陣の中を進んでいく。
それほどまでの圧力はない、やはり、大したことのない敵か。
時々遮ろうと前に出てくる娘もいたが、それもどこか及び腰ですぐに蹴散らした。
私達に合わせ、防戦に徹していた孫堅さん達の本隊も攻勢に転じている。
前からの圧力に加え、陣の内部も引っかき回されているのだ、潰走するのも時間の問題だろう。
流れは、確実にこちらに来ている、あと一押しだ。

風が私の頬を打つ、まさに天を駆けるかの如く周昂に近づいていく。
周昂まで、あと

――――――――50m
――――――――25m
――――――――10m

――――――――――0!!!

遂に、周昂をとらえた。旗本達も蹴散らし、彼女に向かう。
「覚悟!!」

間近で見た、周昂の顔、それを見た瞬間、背筋に冷たい物が走る.
私は勝利を確信した、きっとそれは正しい。
それなのに――――――――
何だというのだ、今から飛ばされようとしているのに何故っ!!

「何故貴女は、笑ってるのよっ?!」
「分からないの?所詮はあの公孫サンの妹ね・・・ふふ・・・」
「何がおかしいと言っているの!」
「ふふ、じゃあ、教えてあげる。私は、周昂さんじゃないわ・・・あなた、周昂さんの顔知らなかったでしょう?もしかして、名前すら知らなかったんじゃないかしら。
ただ、本陣にいて、旗本に守られているから、私のことを周昂さんだと思った・・・
ふふ、そう、本当の周昂さんは、本陣には最初からいなかった・・・」
そう彼女が言い終えたとき、左右の森の中から鬨の声が響いてきた。
まさか・・・伏兵・・・
森の中から出てきた軍の先頭には、目つきの鋭い、薄笑いを浮かべた女が立っていた。
あいつが、本物の、周昂・・・!!

「孫堅さぁん!!!逃げてぇっ!!!!!」

――――――――だけど、その絶叫も、


前後左右の鬨の声にかき消されて――――――――
1-AA