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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
929:北畠蒼陽2006/06/11(日) 23:49AAS
「これは……渡すわけにはいかへんのですえ」
「貴女の想いに関わらず、それは失われるわ」
ある一室に2人の少女が対峙する。
ドアを背にした白髪の少女が『それを渡せ』とでもいうように左手を前にして一歩近寄る。
窓を背にした黒髪の少女が自分の胸元の……その手の中にある蒼天章をかばうように二歩後ろに下がった。
罪と云う名の物語を背負って
廊下を1人の長身の少女が全速力で走っていた。
走るごとにポニーテールが上下に揺れ、流れる汗も視界を妨げる。
それでも彼女は走っていた。
そして……
「皇甫嵩さん! 廊下は歩いてください!」
目的である部屋にようやくたどり着く、そのときに少女を……皇甫嵩を妨げた少女。
この年齢の少女にしては平均身長をはるかに下回るだろう。長身の皇甫嵩からは見下ろすほどに小さい……
しかしその両の腕を横に伸ばし、ここから先には進ませないという気迫を放つ。
「……っ!」
皇甫嵩は足を止め憎憎しげにその小柄な少女……士孫瑞を睨みつけた。
「なんで貴女は……そうやって……」
黒髪の少女が白髪の少女に声をかける。
その声に滲み出るのは悲しみの感情。
白髪の少女は……なにも答えない。
「士孫瑞……貴様ら、自分がなにをやっているのかわかっているのか」
額を流れる汗を手の甲でぬぐい皇甫嵩は士孫瑞に憎悪すらこもった視線を向ける。
「貴様らがやろうと思っていることが……どんな影響を及ぼすか考えたことがあるのかッ!」
怒声。
それでも士孫瑞は腕を大きく横に広げたまま、皇甫嵩を睨みつける。
「私はあの人に救われたことがある。今度は私があの人を救う番だ。ここは通してもらうぞ」
皇甫嵩の気が膨れる。
戦場を長らく駆け回ったものだけが発する闘気ともいうべき波動。
士孫瑞はそのあまりのプレッシャーに眉を歪め……
眉を歪め……それでも2歩だけ後ろに下がって……まだ両の腕を大きく横に広げていた。
「ここは……通しません……」
皇甫嵩は鼻で大きく息を吐く。
「……死にたいのか、貴様」
澄み渡る皇甫嵩の闘気に……士孫瑞はもう下がらない。
「そんな……貴女1人が罪を被る必要はないはずや……それなのに……なんで……」
黒髪の少女は自分の制服の胸元を握り締める。
その拳の中にあるものを渡してしまったら……そのときは……
「?」
皇甫嵩がきょとんとした顔でたたらを踏んだ。
「士孫……瑞?」
冷や汗すら流し、ずっと歯を食いしばって耐えていた士孫瑞が……
皇甫嵩を平手で打った。
もちろん皇甫嵩にとってその一打で判断が鈍る、ということはない。
だが……
「なめるなよ、戦争屋ッ! こちとら蒼天会の中枢で官僚を務めてんだッ!」
ずっとあの女の腰巾着だと思っていた小柄な少女の反駁に……
皇甫嵩はわかってしまった。
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