下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
96:教授2003/01/07(火) 23:52
「…送別会が嫌だったんじゃないですか? 彼女なりに気を遣ってくれてるんです…『私なんかの為に予算使わなくてもいいよ』って…」
その言葉に劉備は深いため息を吐いた。
「厳顔姐さん…こないな時にまで遠慮せんでもええやん…」
呟くように言うと黄忠に暫く一人にしてくれと告げる。
黄忠は頷くとそのまま部屋を後にした。
「………」
黄忠の足は部室に向かっていた。
いつも隣に居た厳顔はもういない。
果てしない喪失感が心を支配している。
少しでも気を紛らわせたい。
そんな一心で部活動に励もうとしていた。
道場の方からは既に気合いの入った声が聞こえている。
もう練習は始まっているのだ。
急いで更衣室に入ると、自分のロッカーを開く。
そこには…自分の弓道着と弓、そして見慣れない竹刀袋と手紙が添えられていた。
「何かしら…」
手紙を開く。
『漢升へ
私がここにいなくても心はずっと傍にいるよ
辛くなっても漢升ならきっと乗り越えられる
がんばれ!
私の竹刀…置いて行くから、使ってあげてね
その子も喜ぶと思うし
それじゃ…また何処かで会おうね!
親愛なる友人、黄忠漢升へ… 厳顔』
「厳顔…」
手紙の文字がぽつりぽつりと涙で滲んでいく。
そして竹刀袋を開き、中から竹刀を取り出す。
見間違える事はない、親友が振るっていた竹刀だ。
「う…うう…」
黄忠は溢れる涙を抑えられなかった。
ただ、声を殺して泣いた。
親友の残してくれた竹刀と優しい別離の手紙を抱きしめて…。
「漢升…総代…そして皆…元気でね」
荷物をまとめたバッグ(大体の荷物は既に小包にして実家に送ってある)を肩に引っさげた厳顔。
益州校区が見える場所から静かにその景観を眺めている。
「楽しかったよ…こんなに胸が一杯になる程…」
踵を返すと止めてあったバイクに跨る。
ヘルメットを手にし…もう一度振り返った。
「漢升…私達はずっと親友だからね…。そう…遠くにいても…」
厳顔の頬を涙が伝い落ちる。
その涙を拭う事無く、そのままヘルメットをかぶると勢い良くエンジンをふかせた。
「…じゃあ…またね!」
誰にともなく言うと、一気にアクセルを絞り込んだ…。
上前次1-新書写板AA設索