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207:教授 2003/02/23(日) 05:08 ■■卒業 〜序章 曹操編〜■■ 「孟徳、急げよ〜」 「分かってるって!」 卒業式当日の朝。 トーストを頬張りながら夏侯淳が曹操を急かす。 いつもと変わらない朝の光景だ。 当の本人は下着姿で制服を品定めしていた。 その数はクローゼット一つでは納まりきらない程だった。 同室の夏侯淳はやたらと制服を詰め込む曹操を見兼ねて、自分のクローゼットを使わせている。 その為、自分の分のクローゼットは無くなり、仕方なく自分で作って隅においていた。 「いい加減、何か着ろよ」 コーヒーカップを優雅に傾けながら苦笑いの夏侯淳。 「んーと…どれにしよ〜…」 下着姿のままの曹操がクローゼットを文字通り引っ掻きまわす。 暫くして、はたと動きが止まる。 そして一着の制服を手に取った。 「これ! これがいい!」 その制服は曹操自身が生徒会長に就任した時に特別に作った服だった。 夏侯淳は曹操の手に掴まれた制服を見ると、右目を閉じ憂いを込めた笑みを浮かべる。 「…それか。そうだな、今日はそれがいいだろ」 「うん。この服は…奉公がいなかったら作れなかったもん…」 きゅっとその制服を胸に抱きしめる曹操。 制服の右腕部に『郭嘉奉孝』という名前が刺繍されている。 それは彼女達を大勝利に導いた現生徒会最高の頭脳の名前。 今は亡きその人物の功績は評価しても評価しきれない。 それだけに早すぎるその死は曹操達に悲しみの涙を与えた。 曹操は姿見を前に制服に袖を通していく。 一年以上も前に作った服だが、それでも曹操の体躯にぴったりだった。 「…奉孝。今日は一緒に卒業しようね」 鏡に映る自分の姿を見ながら、いるはずのない少女に言葉を掛ける。 …と、その背後に微笑む少女の姿が映った。 「…! 奉孝!?」 ばっと振り返る曹操。 しかし、その姿は見えず、夏侯淳が不思議そうな顔をしてこちらを見ているだけだった。 「…どうしたんだ? 何か見えちゃいけないものでも見たような顔して…」 「う、ううん…何でもない…」 曹操は苦笑いを浮かべてもう一度姿見の前に立つ。 すると、また郭嘉の姿が曹操の後ろに見える。 「奉孝…」 今度は驚かなかった。 むしろ、嬉しささえ込み上げてきていた。 鏡に映る郭嘉が囁いた。 『卒業おめでとう…これからも私は貴方を見ています…』 懐かしくも力強い声。 曹操の目に涙が溢れてくる。 そして、郭嘉の姿が鏡の中から消える。 「本当にどうしたんだ?」 姿見の前で立ち尽くす曹操を心配して夏侯淳が傍に近づいてきた。 「何でもないよ。それよりも、早くいこ!」 「お、おい!」 涙を乱暴に拭うと夏侯淳の手を握り駆け出す。 郭嘉が最後に見せた最高の笑顔と言葉は何よりも曹操の心に残り続けていた。 『本当にお疲れ様でした、会長。私はずーっと傍にいますからね♪』
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