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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
338:雪月華 2003/08/29(金) 09:53 ひと夏の思い出 ─そして現実へ─ そんなこんなで、4人に一匹を加えたサバイバル生活は続いた。 島内の滝で、滝の飛沫と満月の光の組み合わせでできる白い虹『月虹』を見たり、島の北東部で偶然発見した謎の遺跡の探検中、孫策のヘマで遺跡が崩れて生き埋めになりかけたり、突如飛来したUFOらしきものに孫権がさらわれかけ、それを孫堅と孫策の連携技───超○覇○電○弾といい、後に孫策はスタンドアローンでこの技を放つ事ができるようになる─で撃墜したり(船体に『諸葛』と刻んであったようだが、長湖の藻屑となった今では確認のしようが無い)…例年に比べ、驚くほど平穏のうちに時の大河は流れ去り、夏休みも、残すところあとわずかとなった。 キャンプ最終日の前日の夕食後のことである。 「なあ、孫権」 「なあに?伯符お姉ちゃん」 膝の上で寝息をたてている首長龍の背中を、飽きもせず撫でながら孫権は上の空で返事をした。時折、のどのあたりを優しくくすぐってやると、くるる、と甘えた声を上げる。 益州校区の山々の陰に沈む夕日の、最後の光が、焚火を囲む4人をオレンジ色に染め上げている。孫策と周瑜は何やかやと冗談や悪口雑言を応酬しており、孫堅は先日の遺跡探検の際に持ち帰った壺や、怪しい偶像を磨くのに余念が無い。別に学術的熱意や考古学的愛情に駆られての事ではなく、「きれいなほうが高く売れるだろう」と抜け目無く考えた上での事であったが。 「そいつ、名前決まったのかよ?」 「うん、あゆみって決めたの」 「へぇ〜、ま、母親格のお前が決めたなら文句は無いけどよ。長湖からとって『チョーさん』って考えがあったんだけどな。首も長いし」 「伯符ったら、あいかわらずネーミングのセンスがないのねぇ。それに、なんか似たような響きの存在がある気がするから却下」 酷評に失望した孫策は、じろりと周瑜を睨むと、妙に慇懃な態度をとった。 「情け容赦無くキツイ事言ってくれますなぁ、周瑜さん」 「いえいえ滅相も無い。己の欠点を知り、屈辱をばねにして、よりいっそう成長してほしいと願う純粋なオヤゴコロですよ、孫策さん」 「いやいや、それは親心ではなく老婆心というもの。うら若きオトメでありながらババアの心を有するとは、その精神の老け方…いやいや成長には恐れ入ります。されどこの不肖孫策、もう充分にオトナであるゆえ、余計な気遣いは無用というもの」 「あらあら、そういうことはせめてバストが75を超えてから言うものですよ、伯符ちゃん」 「んな…!?」 「73・55・77。この数字は五ヶ月前からまったく変化していませんわ。伯符のことなら、もう隅から隅まで知っていましてよ。オホホのホ」 「な、何で知ってる!?身体測定の結果は全て焼き捨てていたはずなのに…」 「そんなこと、赤子の手を捻るより簡単よ。伯符って一旦寝付くと絶対に朝まで起きないから、その隙に服…」 「周瑜!それ以上言うな!」 羞恥と怒りで顔を真っ赤にした孫策が、抗議の声を上げて周瑜につかみかかった。 ひらりとそれをいなすと、跳ねるように立ち上がった周瑜は砂浜のほうへ駆け出した。 「ホホホ、捕まえてごらんなさ〜い」 「待ちやがれ!」 「終わりない鬼ゴッコを楽しむのが恋愛というものよ〜」 「いつから俺達は恋人になったんだよ!?」 周瑜にいなされてうつぶせに倒れていた孫策も、その後を追って猛然と駆け出していった。 「ったく…見てて飽きない連中だよ。ま、それだけ仲がいいってことなんだろうけどねぇ」 壺を磨く手を休めて、孫堅が苦笑した。そのまま孫権の方を見て何気なく、そして一番重要なことを質問した。 「仲謀。このキャンプが終わったら、その子はどうするつもりでいるの?」 「え…その、寮で飼え…ないか」 「育て上手のあんたのことだから、ペット管理能力に疑いは持ってないわよ。今まで拾ってきた動物、しめて5羽と22匹。いずれも老衰以外では死なせてないし、エサ代も自分の小遣い切り詰めて出している事だしね。…あたしが心配してるのは徐州校区生物部のことよ」 「生物部…最近徐州校区で興った天帝教っていうインチキ宗教に染まったっていう…」 孫権はうそ寒そうに首をすくめた。 「そう。最近、とみに汚染具合がひどくなってきたらしくてねぇ…『解剖するぞ解剖するぞ解剖するぞ』って呟きながら尋常じゃない目つきで小川を浚ってる姿も良く見かけるわね。解剖が学術的手段じゃなくて目的にすりかわっているから、その子、見つかったらただじゃすまないでしょうねぇ…」 「それじゃ、この島に残していくしか…ないのかな」 「まあ、さしあたって、それ以上の手はないわね。幸い、この島にはそう危険な動物もいないし、食べ物だって沢山ある。明日の朝十時頃に、迎えに来るから、今夜のうちに別れを惜しんでおく事ね」 そう言って、再び孫権は壺を磨き始めた。 深夜、孫権はふと目を覚ました。 赤壁島の夜は蒸し暑く、蒸し風呂という表現がぴったりだが、なぜか蚊の類がいないため、慣れてしまえば結構快適ではある。 時計が無いため正確な時間はわからないが、遠くに僅かに見える揚州校区校舎群の常夜灯も消えている事、月明かり以外に光源が無い事から、午前三時頃である事がわかった。世間一般でいう逢魔ヶ時の真っ只中である。 「…あれ?」 孫権は、半身を起こしてあたりを見回し、自分の手元から首長龍の子供…あゆみが消えている事に気づいた。 なんとなくそのまま眠ってしまおうかと考えたが、ひとつ頭を振って睡魔を追い出すと、立ち上がって、あゆみを探す事に決めた。 なにやら這いずった跡が孫権の傍から300mほど離れたところにある砂浜に続いており、それを追っていけば容易に発見できそうだ。 熟睡している姉達と周瑜を置いて、しばらくその跡を辿っていった孫権は、ふと、砂浜に立って遠い対岸のほうを見ている人影に気づいた。 ありえる話ではない。今、この島には、孫姉妹と周瑜の四人しかいないはずである。だが不思議と恐怖は無く、好奇心がそれに勝り、孫権は足を止める事は無かった。 ようやく人影が何者か判別できる距離に近づき、それが小学3年くらいの少女である事がわかった。身長は125cmくらい。白い帽子と同じく白のノースリーブワンピースを身につけている。肩の下あたりまでの、つやのある髪は、月光を浴びてやや青みがかっているように見えた。 孫権は気づいていなかったが、このとき、注意深く観察していれば、這いずった跡が少女の手前3mほどのところから人間の足跡に変化しているのに気がついたであろう。 少女が振り向いた。その表情に驚いた色は無く、ただ、優しく微笑んでいる。 大きな目をした美少女ではあるが、生徒数十万人を誇る蒼天学園には、目の前の少女以上の美人はいくらでもいた。ことに孫策の親友である周瑜は中等部三年の身でありながら、中等部、高等部に並ぶ者の無い美女であるため、孫権は美人を見慣れているはずであった。 いや、孫権の心を惹いたのは、その美貌ではない。優しさ、穏やかさ、温かさなど、人の世に存在する柔らかい単語を擬人化したようなその雰囲気が、孫権の心を引いたのである。 なんとなく立ち尽くしていると、少女が孫権に語りかけてきた。 「ありがとうございます…そして、お待ちしていました」 「え…?」 かける言葉を見つけられずにいると、少女がさらに話を続けた。10歳ほどの少女とは思えないほどの丁寧な言葉遣いである。それでいていやみが無いのは、言葉の根底を成す、その優しさからだろうか。 「…明日で、お別れですね」 「お別れって…キミは誰?どうしてここにいるの?確か初対面だよね?」 質問をしながら、孫権は急に睡魔が勢いを取り戻してきた事に気づいた。視界が揺れ、立っているのが困難になりつつある。 「別れるのは寂しいですが、お互い元気であれば、いずれまた会えます。…いつかまた、必ず会いに来て…」 「え…ちょ…ちょっと待って…キミは…誰?」 今や睡魔の勢いは孫権の全身を席巻しつつあった。視界が霞み、立っていられなくなって孫権は砂浜に膝をついた。 「私の名は、あなたがつけてくださいました。私は……」 孫権が憶えていたのはそこまでだった。 暗い夜空を駆逐して、東の空に姿を著した太陽が、空という名の山を中腹あたりまで踏破し、緩やかに波打つ長湖の湖面を、数万の宝石を浮かべたかのようにきらめかせている。キャンプ二日目の朝から見慣れた光景ではあるが、その日は少し様子が違っていた。 砂浜の端に備え付けられた粗末な桟橋には、二艘の手漕ぎボートが係留されており、六つの人影が忙しく立ち働き、キャンプ道具や発掘品を積み込んでいる。孫堅ら4人と、彼女達を迎えに来た、韓当と祖茂である。 「しかし周瑜。今朝の孫権は一体どうしたんだろうな?」 「目が醒めたらベースキャンプにいなくてびっくりしたわね。まさか砂浜で寝てるなんて」 「夢遊病の類でもないしなぁ。あそこまで寝返りを打ったってことも無いだろうし…」 二人の視線の先では、孫権がしゃがみこんで、首長龍の子供と無邪気に遊んでいた。 全ての積み込みが終わり、いよいよ別れの時がやってきた。 孫権は最後の別れを惜しむように、首長龍の子供を抱き上げると、ありったけの思いをこめて抱きしめた。規則正しい鼓動が、優しく伝わってきて、ともすれば悲しみに沈みそうになる孫権の心を励ましている。 「また、逢えるといいね…」 そう呟くと、首長龍の子供を砂浜に降ろし、船のほうに向かって駆け出した。 孫権が飛び乗ってくるのを合図に、ボートが桟橋を出た。一艘目には孫策と周瑜、最初の漕手には祖茂。二艘目には孫堅と孫権、漕手は韓堂という割り振りである。 船尾から身を乗り出た孫権の視界の中で、赤壁島と、湖岸でじっとこちらを見つめている首長龍の子供の姿が、どんどん小さくなっていく。不意に、昨夜見た不思議な少女と、首長龍の子供の姿が重なって見えた。視界が滲んだ。孫権は自分が泣いているのに気がついた。 「絶対、絶対来年も来るから、それまでボクも頑張るから!それまで待ってて!絶対だよー!」 そう叫んで、孫権は赤壁島に向かって身を乗り出すと、ちぎれんばかりに手を振った。 首長龍の子供のほうも、孫権を真似てか、小さな前ヒレをぎこちなく振っていた。 口元をほころばせ、その様を肩越しに見ていた孫堅は、韓当のほうに向き直り、少し照れくさげに言った。 「もっとゆっくり漕いでやって、義公」 「ふふ、了解しました」 韓当も柔らかく微笑み、船を漕ぐ手を少し緩めた。 その頃、少し先行するもう一艘の船では、滑稽だが、ある意味深刻な問答が交わされていた。 「頼む!周瑜!一生のお願い!宿題写させてくれ、いや下さい!」 「伯符…あなたの「一生のお願い」はこれで…ええと21回目よ。小学一年生の頃から全然成長してないのねぇ。長期休みの恒例になってるじゃないの?」 船底に這いつくばる孫策を見下ろして、周瑜はあきれたようにため息をついた。実際、心の底からあきれ果てている。 「お姉様も孫権ちゃんも、合宿始まる前に全部終わらせたのに、どうしてあなただけ毎年毎年…」 「頼む!何でも言う事聞くから!」 そう言ってしまってから、孫策は心の底から後悔した。 「何でも…ねぇ。うふふ…」 小学校入学以来、長期休みの終わり近くには毎回繰り返されてきた問答である。よく飽きないものだと思いつつも、周瑜は魔界の大魔王すら恐れおののく邪悪な微笑を浮かべながら、さて、どういう要求をしてやろうかと、その怜悧な頭脳をフル回転させていた。 ちなみに始業式は明後日である。
339:雪月華 2003/08/29(金) 09:55 いや、ども、おひさしぶりです。お盆休みを5日取れたのはいいんですが、体調を崩してしまって、休みの殆どを通院する羽目に(T_T) キャンプ関連SSとして「願いの橋」「レイダース」「魔人襲来!揚州校区最後の日」というタイトルで考えてたんですが(どういう内容かは後編の冒頭を読み返していただければわかるかと)、なんか夏が終わりそうなので急遽完結。石を投げないで下さい(^^; 学園版歩夫人詳細設定も人物設定スレに上げておきましたので、そちらのほうもご一読を… 一応、孫権の江夏攻め直前を舞台とした再開編へと続く予定ですが、長編も二つ掛け持ちしているので、いつになるかは… ちなみに人間モードのあゆみタンのモデルは、修学旅行一日目の大阪さんだったり…ちゃんぷるー! できれば玉川様に、こども大阪を描いていただけたらと… 老婆心ながら、正史における歩夫人の紹介を… ○歩夫人 孫権の筆頭側室。のちの丞相である歩シツの一族。その美貌と優しさを孫権に永く愛された。 その地位にも関わらず、嫉妬を知らない優しい性格であり、むしろ積極的に、後宮の他の女性たちの後ろ楯になったりしていた。 孫権が皇帝を称した際、皇后に冊立しようとしたが、太子の孫登らに、側室だからという理由で反対された。ちなみに孫登は、母親が卑賤の女であったため、孫権の正室であり、こちらは烈女として知られた徐夫人に扶育されていた。(烈しい正室と、温和な側室。長男は正室に育てられる…誰かの家庭環境と似ているような気が…その長男が早死にして、後継者争いが起きるところもそっくり。こちらの場合は、孫権の日和見によりかなり深刻な事になってしまった) しかしながら、親戚や重臣からは中宮(皇后の尊称)と呼ばれ、宮中では皇后同然の扱いを受けていた。 問題が解決しないまま十数年が経った頃、ふとした病で急死してしまい、孫権はその墓前に皇后の印綬を供え、その死を惜しんだと伝えられている。 ちなみに孫権との間に二女をもうけており、姉が魯班、字を大虎。妹を魯育、字を小虎といい、姉の魯班は重臣の全ソウに嫁ぎ、母親の歩夫人の死後、その寵が薄れることを恐れ、個人的に対立していた王夫人や、その息子の孫和を讒言して遠ざけさせ、孫権の生涯の汚点のひとつである「二宮の変」における、孫覇側の黒幕となった烈女であった。 それ以前にも、魯班は母親の威を笠に着て好き勝手に振舞っていたらしく、どうやら歩夫人は、良妻ではあっても賢母ではなかったらしい。その全責任を歩夫人にかぶせるのは酷というものだが
340:★ぐっこ@管理人 2003/08/30(土) 00:54 雪月華作品キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!! うーん。さすがの一言!小ネタのバランスもいいなあ…。冒頭で三度ワロタ。 そして案外さばけてる周瑜たんハッケーン。なるほど、孫策たんとはそういう仲だったのか(^_^;) まさに主従逆転。堅姐ェも孫姉妹の中で無敵。ええなあ… でも今回は孫権たんに激烈に萌え。やはり動物好きなのね(゚∀゚) 心温まるエピソードや… それにしても、あゆむタンときましたか! 人化!? 今後もしょっちゅう現れるということですが、 どういうタイミングで人化するんでしょう?あゆみたん(;´Д`)ハァハァ…
341:雪月華 2003/09/03(水) 18:55 [sage] 書き忘れた事 追記(人物設定スレの内容も含む) >周瑜 やっぱり孫堅・孫策時代の周瑜はこれぐらいハイテンションじゃないかなって思います。 個人的な印象では、意外と喧嘩好きで、激昂する孫策を一応なだめているうちに、いつのまにか孫策が引くほど自分が怒りだしてしまう(笑)。 やたら鋭い勘と勢いで突進する孫策と、同じ勢いで突進しつつ、悪魔的な策をめぐらすため、敵にとっては孫策よりも厄介な存在(笑) でも、孫策あっての陽気さというやつで、孫策リタイア後は本来の生真面目な部分が現れた、という感じですか。 >あゆみタン ・背中に二人ほど乗せて、長湖を泳げます。とはいっても、孫権と谷利以外は乗せようとはしません。 江陵棟近くの湖畔から、長湖さんの背中に乗って長湖を行く孫権の姿を見て 「いいなぁ…長湖さんいいなぁ…」と呟いた人がいたりします。 ・人化の仕組みは…謎です(笑)。長湖さん本人にもわかっていません。 基本的に、初対面時以降は人化していません。ある意味、作家にとって扱いやすい設定(笑) >>歩騭とのカンケイ 正史では同族、ということで結構悩んだのですが、 他の部員と比べて仲が良かった、というぐらいでしょうか… >教授様 帰宅部連合夏の陣、大変楽しく読ませていただきました。 ある意味、任侠と友情だけで結束している(褒め言葉?)帰宅部連合の特徴が良く出ていると思います。 成都棟攻囲の話も楽しみにさせていただきます。遅レス失礼を… >ヤッサバ隊長様 周瑜、魯粛と並ぶ諸葛亮伝説の犠牲者、魏延への愛情がひしひしと伝わってまいりました。 魏延と諸葛亮の関係は、いわば三国志の黒歴史というべきものですので、これからも楽しみにさせていただきます。 でも全ての事情を知ったうえでも、私は魏延が好きになれない…失礼。 同じく遅レス失礼しました。 今、関羽の長編が煮詰まってしまっているので、とりあえず、新しい構想に取り掛かっております。 無口っ娘倶楽部会長の左慈提唱、シチュに萌えるで、 「貂蝉を排除しようとしたために露骨に董卓に疎まれてしまうが、それでも「健気に」尽くす李儒と、彼女をいたわる世捨て人、皇甫嵩・盧植。その頃、董卓の副官になるのを嫌がって洛陽に逃げた朱儁は…」 また後漢ズ(李儒含む)に萌えてきました。将軍位や戦シーンなど、かなりifを含んでおりますが… おまけ ttp://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/1994/ 「書庫」にGo! 見つけた瞬間「玉川様のサイトかな?」と思ってしまいました
342:★教授 2003/09/14(日) 23:09 ■■ 帰宅部連合夏の陣! 〜第三章〜 ■■ 「あの〜…これでいいんでしょうか…?」 孫乾がもじもじと恥ずかしそうにプールサイドに現れる。 「スレンダーでええなぁ…うん、よく似合っとる」 劉備の微妙な褒め言葉。しかし、それも孫乾には嬉しかったらしく素直に安心したようだ。 ちなみにこの水着は孔明が『こういう事もあろうかと…』とか言いつつどこからか取り出したのだ。 しかし、その水着はスクール水着。明らかに萌えを狙ったもので『そんかん』と平仮名で書かれたネームラベルが綺麗に縫い込まれていた。その場にいた一同が変な汗を流した一時であった。 「うむ。萌えポイント1000点を献上しよう」 「う、嬉しくないです〜…」 満足げな孔明の言葉には複雑な顔をする孫乾。 そんな彼女を二人の刺客が挟撃する。 「よーし、第二ラウンドだーっ!」 「いぇーっ!」 張飛と雷同が絶妙なテンションで孫乾を担ぎ上げると、そのままプールの中に拉致していった。 「ふぇぇ…」 困ったような泣き出しそうな表情で大人しく攫われる孫乾。彼女らしいと言えば彼女らしい。 「さて、私達も泳ぎにいきましょうか」 黄忠と厳顔もゆっくり立ちあがると軽く柔軟体操を始める。 「孔明と子仲はどうするの?」 すっかり回復した法正が何故か着崩れしていた水着を物陰で直しながら二人に尋ねた。 「私は遠慮しておきましょう」 「私も…もう少し眠ります」 やんわりと遊泳を拒否する孔明とビ竺。一体何しに来ているのだろう。 「ウチはそろそろ泳ごかな…」 ストレッチを入念に行いながらメガネを外す劉備。その途端、孔明の目の色が変わった。 「総代! 今日は泳がれない方がよろしいかと!」 「な、なんやねん。ウチが泳ぐくらい別にええがな」 「いいえ。今日のプールには不吉な空気が漂っております! 何かに取り憑かれますぞ!」 ずずいと劉備に迫る孔明。目がかなり真剣だ。 「さ、さよか…。でも、今泳いでるあいつらにも言うたらな…」 「彼女達ならば大丈夫でしょう。紛がりなりにも我等が帰宅部の強者、凶兆など撃退する事です。しかし、総代にもし何かあれば…私は悔やんでも悔やみきれませぬ!」 「孔明…ウチの事をそこまで考えてくれてんのやな…。よし、分かった! 今日はここで日光浴してる事にするわ」 孔明の言葉に感銘を受けた劉備はメガネを掛け直すとビニールシートの上に横になった。 「………(ふぅ…これで総代がメガネを外すという緊急事態を回避する事が出来たな。流石は私、見事な口上だ)」 単にメガネを外されたくなかったらしい孔明は安心しながら自画自賛を脳内で行っていた。 「あっつぅ…」 簡雍はアイスキャンディーを口にしながら気だるそうにプールサイドで足だけ水に浸けていた。元々インドア派の彼女にはそろそろ夏の日差しがきつくなってきている模様。 「それそれ〜っ」 「きゃーっ!」 一方、プールでは猛烈な勢いで泳ぐ張飛に引張られる孫乾が可愛い悲鳴を上げていた。 少し離れた所では雷同が黄忠にラリアットを、厳顔にドロップキックを食らっている。鬼神と化した二人の攻撃によって沈められた雷同の手には二人分の水着の上が握られていた。 固く握り締められた手を無理矢理こじ開けようと奮闘する黄忠と厳顔。相当焦っている事が誰の目にも明らかだった。当然、こんなおいしい演出を見逃すパパラッチはいない。 「ナイスショット。連写モードで撮るよ〜」 だらだらとアイスを咥えていた簡雍が突如覚醒。デジカメとビデオを構えて激写し始める。 「こらぁっ!」 やっと雷同の手から自分達の水着を取り戻した黄忠と厳顔が簡雍に向かって猛然と水を掻き出した。 「あははっ。捕まるようなヘマは私はしないよ〜」 悪戯っぽく笑うと手提げバッグから『ある物』を取り出して二匹の野獣に投げつける。 「な、なんだ…コレ。…いいっ! 誰の下着だよ!」 黄忠は掴み上げたその『ある物』…誰かさんの下着に動揺と驚きを隠せない。大人っぽいその黒の下着に完全に困惑しきってしまう。 「ああああっっっっ!!!! それ…私の下着だーっ!!!」 簡雍と反対側のプールサイドで法正が真っ赤な顔をしながら叫び声を上げた。 「今日は楽しかったよ♪ じゃ、また明日ねー」 全員に向けて投げキッスを贈ると簡雍はさっさとプール場から出て行く。 「ま、待てえええぇっ!」 怒りと羞恥で完全に紅潮しきった法正が簡雍を追っかけていく。 「法正まで行っちゃった…。…これ、どーしよ」 びよーんと下着を広げながらまじまじと見つめる黄忠と厳顔。後で返せばいいと思う。 「もう一本いくぞーっ!」 「うう…もう勘弁してくださいー…っきゃー!」 半べその孫乾を引張りながら縦横無尽に泳ぎまくる張飛。楽しそうではあるが中々に可哀想な光景だ。 そんな喧騒を目を細めながら見ている劉備と孔明もいそいそと撤退準備を始めていた。 こうして、騒がしくも楽しい一日が終わりを迎える。 乙女達を照らしていた太陽が沈み、再びその姿を現す。 それは飽くなき戦いの日々の訪れを乙女達に知らせる。 これより後、今までよりも過酷な運命が彼女達を待ち受けている事を誰も知らない―― ――翌日 「待てっ! 憲和ーっ!」 怒りのオーラを発しながら簡雍を追いかける法正。 「そんなに怒るなよー。…あ、そうだ」 逃げながら何かを思い出した簡雍。その直後に彼女の口から飛び出した言葉は法正の怒りに油を大量にぶちまける結果になる。 「昨日…『のーぱん』で帰ったの?」 「こ、ここここ…コロスーっ!!!」 髪を逆立てながら簡雍を追う鬼女、法正。その目は殺意に満ちていた。 いつもの鬼ごっこを繰り広げる二人が劉備の横を走りぬける。 「…本当にいつも通りやなぁ。さ…漢中制圧作戦、気張ろか…」 ふぅと溜息を吐くと劉備は静かに会議室のドアを開く――
343:★ぐっこ@管理人 2003/09/15(月) 00:32 >>341 見のがしたっ!スマソ、10日遅れのレスですが… むう、確かに周瑜のキャラ造形、それくらいのアクがあった方がいいですねー! どうも、私の中のキャラだといい娘ちゃん過ぎて。いわばキルヒアイス。 孫策と同レベルのバカ騒ぎしながら、常に二手先を読む知将ぶり!曹操がたじろく ほどの美貌!…案外、学三は凄い周瑜像を世に送り出すやもしれぬ…(;´Д`) あと、長湖さん(^_^;) あ、わたし乗れますよーって孫権たんが! 首長竜いいなあ… 歩騭たんとの絡み、ちょいと設定で考えてみますね〜。 おまけ…本家のガンダムスレでネタとして借用します、今から。 >>342 教授様グッジョブ! 以前の水着祭りの続きか〜。サリゲに悲惨な目にあってるライダー雷銅たん… そして予告通り、お使い乾ちゃんの虜のようですな!教授様! あっはっは!ヤッサバ隊長! 旧すくですよ旧すく!萌えポイント1000点!? 孔明め…さすがにあなどれんわ…! しかしやはり学三における萌えは、法正が持っていってしまうのか…(;´Д`)ハァハァ 黒い下着…そしておそらく黒ストも所有しているでありましょう… 将来、手に負えない娘になりそう…。
344:ヤッサバ隊長 2003/09/16(火) 08:45 >>342 旧スク…旧スク…旧スク……。 やってくれすぎですぞ教授殿! 俺の萌えハートは爆発寸前!! いや、今爆発!! …暴走失礼しました。 想像しただけで、余りにも強烈なモノが脳裏に浮かんでしまったもので。 とにかく教授殿グッジョブ!!でしたw
345:★教授 2003/10/10(金) 23:21 ■■ 成都棟制圧 劉備と簡雍の決意 ■■ 「…ちゅーわけで、これから成都棟を包囲するって事でええか?」 「異議無し。うー…燃えてきたぜ!」 「力に物を言わせて陥落させるんじゃないですよ、張飛さん」 ここはラク棟会議室。最前線に立つ上将達が、今まさに成都棟に立て篭もる劉章達を降伏させる術を話し合っていた。 論場で説き伏せようと意見する者、攻め落としてしまおうと意見する者。様々な意見が飛び交う中、最終的に決定されたのが『取り囲んで降伏させちゃおう』作戦だった。 圧倒的な戦力差を見せつけ、アテもなく篭城を決めこむ生徒達の恐怖を煽る――そこはかとなくシンプルな手段だが、これ以上に効果的な手段もない。 先日から法正が幾度と無く降伏を促す黒手紙を書きつづけているのも相乗効果をもたらしている。結構毒々しい内容なので割愛させてもらう事にした。 「ふむ…まあ伏線も引いてある事ですから、降伏して出てくるのにそう時間は掛からないと思いますが…」 白羽扇を口元に当て、劉備一同及び会議室全体を見渡す諸葛亮。そして天井を仰ぐ。 「長引くと士気の低下、及び周辺組織の攻撃…特に曹操辺りでしょうか。…その辺りが心配になりますので…その際は諸将の方々、頼みます」 「…そうはならないようにしたいなぁ。劉章はんも頑張らんと降伏してくれればえぇんやけど…」 劉備は溜息を吐くと窓を開けて成都棟の方角を哀しげな眼差しで見つめた。 「ふー…」 簡雍は溜息を吐きながらラク棟をとぼとぼと歩きまわっていた。 いつもの感じとは違う、少しアンニュイな表情を浮かべている。傍目から見ても悩みを抱えている事が誰の目にも明らかだった。 彼女の心の中にあるのは、『益州校区成都棟総代』劉章の事唯一つ。 劉備達と共に益州校区に入ってすぐに劉章に気に入られ、いつ何時でも彼女は簡雍を誘ってきた。色々な所へ連れて行ってもらったり色々な物を貰ってきた。自分達が益州校区を乗っ取るつもりで来た事も知らずに――。 それだけに気に入られた自分が劉章を追い落とす…未だかつて経験した事のない『恩を仇で返す』事。それに戸惑いを覚えていたのだ。 「あの娘には法正同様裏切り者だって思われてるんだろーな…」 ラク棟の中庭、池の側のベンチに腰を掛ける。自然と溜息が零れた。 「…玄徳の事だから降伏論で制圧論をねじ伏せてるんだろうけど…」 そう呟きながらちらりと会議室のある棟を見上げる。丁度同じ時間に会議が終わっていた。簡雍の読み通り、劉備の降伏論で締めくくられて。 「最初は私もノリノリだったんだけどなぁ…らしくないや」 ごろんとベンチに横たわると青々とどこまでも広がる空を、雲の流れを見ながら目を閉じる。 浮かんでくるのは劉章の笑顔、声、そして哀しげな後姿。その背中が自分を『裏切り者』、『恩知らず』、『卑怯者』と蔑んでいる様に映った。 (違う! 裏切るつもりなんて…なかった!) 心の中で全てを否定する。しかし、声は尚も簡雍を締めつける。木霊の様に、残響を残しながら全身を駆け巡る。 (違う! 違う! 違う!) 何が違うのか、それすらもどうでもよくなっていた。とにかく否定する事しか出来なくなっていた。 劉章の体がこちらを振り返る。哀しくも憎悪に満ちた目を向けながら。 『何が違うの? 仕方なかったなんて言わせない!』 怒号が体の中に染み渡る。切り裂かれるような、引き裂かれるような…そんな痛みが突き抜けて行く。 逃げ出したかった。形振り構わず、自分の立場もプライドもかなぐり捨てて遠く…遠くまで逃げ出したかった。 だが、出来なかった。自分にしか出来ない事があったから―― 簡雍は心の中の劉章に真っ直ぐ目線を向けた。 (私は…君を…) 「…劉章はん。何で出てきてくれへんのや…」 成都棟を取り囲んで既に何時間も経過していた。 周囲には張飛、趙雲、馬超、黄忠といった名だたる将…そして帰宅部連合に降ってきた益州校区の雄将達が、攻め込む為の最終調整を行っていた。 劉章の降伏をひたすらに待ちつづけた劉備にも焦りの色が強く浮かんでいる。 そんな劉備に諸葛亮が最後通告を言い渡す。 「…部長。そろそろ…攻め込む時間です。これ以上は待てませんぞ」 「…仕方あらへんな…」 最後通告、即ち劉章への死刑宣告に等しい言葉を劉備は苦々しく受け入れる。 そして手を高らかに挙げると率いる全ての隊に号令を下した。 「全軍…とつげ…」 「あーあー…物々しいったらありゃしない」 号令は最後まで続かなかった。眠そうなトボけた声が軍の中を割って飛び出してきたのだ。 全員が声のする方を振り向いた。 「何? そんな大勢で取り囲んじゃ降伏できるものも出来ないっつーの」 軍を割って簡雍が酒瓶を片手に劉備の前に立った。 「憲和…何しに来たんや? 今はあんたの出番とちゃうで」 きっと簡雍を睨みつける劉備。しかし、それを涼やかに受け流す。 「玄徳。すこーしだけ時間ちょーだい。私が行って口説いてくるからさ」 「は、はあ? そ、そんな事したらあんた階級章取り上げられて追い出されるで!」 「大丈夫大丈夫。まあ、仮にそうなっても別にいいんだけどね」 ぐいっと酒をラッパ呑みする。景気付けのつもりかどうかは分からないが豪気である事には違いない。 「憲和…あかんて」 劉備は心配そうな眼差しを向ける。長い間ずっと自分に付いてきてくれた友人を失いたくはなかったのだ。 「あー…もう! 大将がそんなツラしてどーすんだよ、周りの士気も考えろっつーの。じゃ、行ってくる!」 「あ! 憲和!」 簡雍は劉備の制止の声を聞かずに成都棟に向かって歩き出した。 うなだれる劉備の肩に諸葛亮が手を置く。 「…今は簡雍殿にお任せしましょう。もし、簡雍殿の身に何かあった時は…」 「分かってる。でも…ウチはまだ憲和を失いたくない」 「…簡雍殿の仰られた通りですぞ。貴方がそのような顔をされると貴方に付いてきた全ての生徒が不安になられます。貴方は…我々の担ぐ神輿なのですから」 「…そやな。よしっ! 全軍、このまま待機! 指示があるまでそのままの態勢やで!」 パシッとハリセンで地を叩く。その顔に迷いの陰はどこにもなかった―― 「劉章…」 簡雍は成都棟の正門前に立っていた。窺いを立てるので暫く待っててくれと言われているので大人しく待っているのだ。 「君は…私が…」 天を仰ぎ、そして酒瓶を投げ捨てる。 「私が救ってみせるから!」 ――簡雍が成都棟に入って1時間余り後 劉章は簡雍に連れられて成都棟から出てきた――
346:★ぐっこ@管理人 2003/10/11(土) 21:22 (゚∀゚)簡雍たんが初めて活躍らしい活躍を! 劉璋とは妙にウマがあったんですよねえ…。 しかし…孔明の前で堂々と酒をあおれるのはこの娘だけ。 あの自由奔放な生き様の裏には、イロイロと悩みも葛藤も あったわけで。 ところで学三演義にて、簡雍たんにちょっとした設定追加予定。 たぶん皆さんが簡雍萌えになること間違いなし。
347:★アサハル 2003/10/12(日) 16:19 簡雍たんはきっと普段のちゃらんぽらんな「萌え請負人」は仮の姿で 実は帰宅部連合の初期メンバーの一人として(或いはジャーナリストとして) 真面目で熱い娘なんだろうなあ、と思いました。 しかし降伏勧告に行くのに酒の香り漂わせてるのはマズいぞ簡雍さん!!(w そういえば劉璋とか劉表辺りってまだキャラ絵ありませんでしたよね?
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