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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
426:★教授 2004/02/04(水) 22:43 ■■ 卒業前夜第二幕 -- 「郭嘉…」 3月某日、寒風の吹きつける墓所。 少女は墓石の一つに細く白い指先を滑らせる。彫られた文字をなぞるようにゆっくりと滑らせる。 郭嘉奉孝―― 少女が指でなぞり、墓石に刻まれたその名前。 連合生徒会の者なら誰もが知り、そして忘れられぬ少女の名だ。 限りある命の中で彼女ほど美しい大輪の華を咲かせた者に列挙できる人物はそういないだろう。 それ故に薄命であった事を悔やむ者も少なくない。彼女の主であった少女も誰彼憚る事なく大粒の涙を零し、激しく天を呪ったという。 郭嘉が眠る墓石の前に立っている少女もまた縁浅からぬ仲であった。 「…貴女の眠ってるこの場所に私が来る…なんて意外だった…?」 憂いを帯びた微笑を浮かべ、現世にいない少女に言葉を掛ける。まるで目の前にその者がいるかのように。 少女は手に持っていた手提げ鞄から一台のMDプレイヤーを取り出す。 「随分遅くなっちゃったけど…これを返しに来たの」 そっと墓前にMDプレイヤーを置く。 生前、この少女が郭嘉から取り上げた品。風紀委員として当然の行為だった。その時はこのMDプレイヤーが遺品になるなんて予想も想像もしてなかった。 会えば口喧嘩、顔も見たくないと思った事もあった。すれ違ってばかりの二人だったが、その相手を永遠に失ってしまって初めて気が付いた大切な何か。 でも気付くのが遅かった―― 心の奥に悔恨という大きく深い爪痕を刻みつけられた。 返そうと思い何度も郭嘉の下へ足を運んだ。だけど神の悪戯か、療養の為に学園を去るその日にさえ彼女と顔を合わせる事は適わなかった。 「私…貴女とゆっくり話してみたかった…」 眼鏡の奥に佇む悲哀に満ちた双眸は既に頬を濡らしていた。 彼女の死を哀れんでいる訳じゃない、ただ和解出来なかった事と郭嘉を理解できなかった心中の哀しみに包まれていたのだ。 永遠に解する事の出来ない心の溝。これから先も埋まる事はない。 「明日…卒業式なんだよ? 私も…生きていれば貴女も…。だけど…何だか悲しいよ」 吹き抜けていく風が少女の髪を靡かせる。郭嘉がいたあの頃から随分伸びた。あの時の自分を見たくはなかったから―― 少女は涙を拭うと、再び墓石に指をなぞらせる。締めつけられる胸の内をぐっと堪え、踵を返した。 「サヨナラ…またその内顔見せに来るね」 寂しく、そして小さな背はゆっくりと墓地から姿を消して行く。まるで風に流されるかのように―― 深夜2時、草木も眠る丑三つ時。 「…………」 墓前に置かれたMDプレイヤーに伸びるしなやかな腕。手に取りイヤホンを耳にする。 「…………」 その人は目を閉じ微かな笑みを浮かべている。 やがて、その姿は闇に紛れるように消えていった。墓前のMDプレイヤーと共に―― ――そして卒業の時を迎える
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