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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
4:★ぐっこ2002/02/07(木) 00:46AAS
「それにしても、周瑜ってコはじめて近くで見たけど、びっくりしたねーっ!」
「話してないで走りなさいっ!」
結局、ふたりは、何やかんやで出遅れた。かばんを小脇に抱えて、猛ダッシュ中である。
別段、遅刻必至という時間ではないのだが、先週の週番である夏侯惇が遅れては、日誌
を次に渡せなくなる。朝のHRの二十分前には、教室に着いておかねばならないのだ。
「あはは、ごめんごめん、忘れてた」
「あんたね…」
時間帯が早いということもあって、路面電車の停留所は空いている。
と、いままさに一両の路面電車が、第19女子寮前駅から発車しようとしているところ
だった。二人は全力でダッシュすると、車外ステップへ飛び乗った。
「ああ、危なかった」
「今も危ないわよ…」
路面電車は学園敷地内を五分刻みに行き交い、タダで乗り降りできる。
時間帯によっては、乗り切れない人間が、このように車外のステップや窓枠にしがみつく、
という光景も見られるのだった。落ちれば死ぬ、というほどのスピードではないが、危ない
といえば危ない。
次の停留所の直前で二人は飛び降り、改めて車内に乗り直した。
「あ…」
「あ」
飛び乗ったとたん、曹操はさっき走ったことを後悔した。夏侯惇も心の中で曹操に謝った。
こともろうに生徒会長・袁紹が、真っ正面の席に座っていたのだ。
かつて曹操と理想を共有し、一緒に学園を変えようと許攸や張バクたちと誓い合ったのが、
1年ほど前である。
が、事態は複雑に骨折し、いまでは袁紹と曹操は絶交状態なのであった。
「……。」
「………。」
…気まずい。
袁紹も曹操に気づいてないはずがないのだが、おかしなくらい無心に単語帳を見ている。
曹操は曹操で、必死になって天井の広告を眺めていた。
――夜の司州回廊で、雨に濡れながら互いの背中へ決別を言い合ってから、まだ二月も
経たない。
あの夜から生徒会の執務も何もかも、人を介するようになり、もう差し向かって顔を
合わせる事もないと思っていたのだ。
「……………。」
しばらく妙な空気が流れる。夏侯惇では、ちょっとこの空気を何とか出来そうになかった。
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