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534:北畠蒼陽 2005/01/28(金) 18:50 [nworo@hotmail.com] -隻眼の小娘とりんごの悪夢(2/3)- 娘を離れた場所に連れて行く史渙をちら、と見やってから韓浩は夏侯惇に視線を戻した。 「まぁ、『りんご』ってのは夏侯惇さんのNG品目だから仕方ないんですけどね。あの子にだって悪気があったわけじゃないんだし許してやってください」 幾分落ち着いたか、それでも興奮の冷め遣らぬように夏侯惇は椅子に乱暴に腰を下ろした。 「あの子に悪気がないのはわかってる。あとで謝らなきゃね」 そんな怖い顔で謝っても逆効果だよ、という本音をちら、とも見せることなく韓浩は頷いた。 「夏侯惇さんのりんご嫌いは有名ですからみんな知ってると思ったんですけどね」 「有名ってのもあんまり嬉しくないわね」 夏侯惇はメロンソーダに再び口をつけ、ようとしてやめた。 「でも私だって夏侯惇さんがりんご嫌いな理由までは知らないんですから、もしかしたらあの子が知らなかったのも当然かもしれませんよ」 夏侯惇は韓浩の言葉にぎこちない笑みを浮かべる。 「あんまりおもしろくない話よ? それにどれだけいっても孟徳のバカ話だしね」 そして夏侯惇はゆっくり口を開いた。 シャギャア、シャギャア…… モケケケケケケケケ…… よく密林の探検隊とか動物番組とかで聞かれるようなよくわからない動物の声があたりに響いている。 足元に多い茂る草をかきわけ、木の間に道を見出し2人の少女は前へ前へと進んでいた。 正確に言えば小柄な少女に大柄な少女が引っ張られていた。 2人ともエン州校区初等部の制服に身を包み、いかがわしい幼女マニアが見れば一発で役満に振り込むこと間違いなしだ。 「孟徳〜、ほんとにこんなとこなの?」 「間違いないよぉ。元譲だってりんご好きでしょ〜?」 いやまぁ、好きなのは好きなんだけどさぁ…… 元譲と呼ばれた少女、夏侯惇は口ごもる。 夏侯惇と小柄な少女、曹操は交州校区の片隅の密林を歩いていた。 なぜこんなところに2人の少女が歩いているのか…… 話せば長くなる。 だが語れば短い。 要するにテレビを見ていた夏侯惇が『りんごおいしそう』と言ったのを聞きつけた曹操が夏侯惇をりんご狩りに誘ったのだ。 交州に。 ばさばさばさばさ…… 頭上を極彩色の鳥が飛んでいく。 ここは本当に中華市なんだろうか…… 夏侯惇の頭に至極真っ当な疑問が浮かんだ。 しかし夏侯惇はりんごがどんなところに生息する植物なのか知らない。 だから少し怖いがこんなもんかも、と思っていた。 りんご狩りって命がけなんだなぁ〜、と少し的外れなことを思いながら。
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