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575:北畠蒼陽 2005/02/19(土) 22:49 [nworo@hotmail.com] -Sakura- 第4話:千里香 それからしばらくは勉強の日々だった。 劉保の教師は確かに一流であった。 明らかに学力の劣っていた曹騰にもわかりやすい、しかも高度な授業、というのはそうあるものではないだろう。 自分が補完されていく感覚は曹騰にとって嬉しいものだったし、それになにより劉保も一緒にいてくれたことが曹騰にとってのなによりの支えだった。 講義後の部屋。 たった2人を教えるために教室を使う、というのも妙な話ではあるので寮の私室を使っている。 つまり教師を寮まで来させているわけだ。 VIPってすごい…… 「季興さんって覚えが早いんですね。先生も褒めてましたよ」 劉保がにこにこと笑いながら湯飲みを差し出してくる。 中身はチャイだった。 もう慣れた。 「覚え……早いのかな」 曹騰は苦笑する。 苦笑の主な原因はチャイなのだが。 「早いですよー。私がずっと教わってきたことにもう追いつかれちゃいましたから」 そう言いながら劉保は嬉しそうだ。 追いつかれて喜ぶ性格かと一瞬思ったがそうではないだろう、多分。 「私が蒼天会長になったら政務は全部、季興さんに任せて大丈夫そうですね」 悪戯っぽく笑いながらとんでもない発言をする劉保の顔めがけて曹騰は思い切り飲んでいたチャイを吹き出した。 「汚ーッ!」 「わぁ! ごめん!」 劉保が半泣きで制服の濡れた部分を指でつまんだ。 「うぅ、クリーニング代がもったいないなぁ」 意外とけちくさい。 「劉保がいきなり変なこというからビックリしたじゃないのさ」 心臓がばくばくいっている。 「変なこと……先生も褒めてました?」 「そのあとそのあと」 劉保は形のいいあごに指を当てて考える。 「クリーニング代?」 それは吹いたあとの発言である。 「ん〜と……政務全部?」 こくこく頷く。 「変かな?」 自覚がない。 「私、そんな権力なんていらないよ〜」 曹騰はたった1人、劉保と一緒にいられる、というだけで幸せを感じていた。 だから権力など必要ない。 「権力なぁ。まぁ、私もいらねぇなぁ」 いきなり後ろから声がした。
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