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588:北畠蒼陽 2005/03/04(金) 01:51 [nworo@hotmail.com] 「……」 「……」 曹騰も梁商も無言だった。 本音を言えば孫程の言葉どおり劉保が蒼天会長になること以上に望むことはない。 だが劉保があそこまできっぱりと意思を口にした以上、無理強いすることもできない。 「つまりは……この考えは無理だってこと」 肩をすくめて曹騰が呟く。 劉保が部屋から出て行ってなお無表情だった孫程の顔にようやく表情らしい表情が浮かんだ。 「……まぁ、本音をはなしたわけじゃなかったしね。さて……お次は済陰の君閣下の側近中の側近の2人に聞いてもらおうかな」 「どういうことです?」 梁商の言葉に孫程も笑みを浮かべる。 「いや、つまりさっきの私の言葉だけが本音じゃないってことです……いや、さっきのも本音ではあるんだけどそれがすべてじゃない」 孫程は窓の外に目を向ける。 梅雨が窓を濡らしている。 「……私は本当は学園なんてどうでもいいです。自分が身動きできるちっぽけな範囲内が平和であればいい」 曹騰も梁商も黙って孫程の言葉に耳を傾ける。 「ほとんどの生徒がそういう考えなんだと思いますよ? 自分が不幸にならなきゃいい……みんながそう思うからまずは自分の身近が幸せであるように……それが積み重なって全員の幸せにつながるんだと思います」 雨は音もなく降りしきり、孫程の言葉だけが静まり返った室内に響く。 「だから私は自分のちっぽけな領域を幸せにするために蒼天会長をかえようとしています。まぁ、済陰の君閣下を利用しようとしている、なんていわれちゃあ返す言葉もないんですけどね」 苦笑。 しかし曹騰も梁商も黙ったまま。 「これが……」 孫程は黙って懐から書類を取り出した。 「済陰の君閣下が蒼天会長になってくれれば幸せになってくれる人間の署名です」 そのリストはカムロからも実力者の王康や王国といった政権の中枢部にいるような名前も見受けられた。 「……すごいね」 曹騰が正直な感想を漏らす。 「それ集めるの、ちょっと苦労したんだからね」 孫程はにっこりと笑った。
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