下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
622:岡本 2005/03/17(木) 22:06 >結局目立った者勝ち? 大抵の人が三国志に足を踏み入れる原因が三国志演義であり横光であり人形劇 であったり三国無双であったりするわけです。客引きができないとお話にならないわけです。 目立った活躍をした人物に光があたり、さらにファンが煽って尾ひれをつけて 新たなファンを生むという構造上、目だった活躍をする人間のファンが持ち上げられる傾向 にあるのは必然でしょう。 受け入れられる裾野を広げる意味では当然の流れでしょうね。 ただ、よりこの時代に興味を持つと単なる荒唐無稽な英雄譚に飽き足らなくなって 実状はどうであったのか個人的に調べるようになり、新たな見方を見つけていくのだと思います。 三国迷の誕生ですね。そしてマイナーといわれる人物に目をむけ、彼らも決して メジャーな人物に引けをとるわけではないと見るようになるわけです。 学三で、”演義でメジャーな人物の登場が遅れる”というのもその例です。 ですが、最初っからそういう人物を好む傾向が現れるのは不気味でもありますよ。 例えば張遼の活躍する合肥戦役以前にも2,3回、孫権の10万の軍による襲来を合肥城は撃退 しています。これらの戦いには張遼は全く関係有りません。殊勲甲は揚州をにらむ上で合肥の重要性に 着目し廃城と化していた合肥城を整備して周辺の豪族を慰撫した劉馥です。 彼のような有能な人物が多数いたことが曹魏の強さの一つですね。 こういった人物の存在に気づくことで、張遼がいたから(もちろん、彼の果した役割も大きいですが) 合肥戦役で孫権を撃退できたわけではないと理解を深めていくことができるわけです。 けれども、蒼天航路で劉馥ファンになったならいざ知らず、最初から 「劉馥サイコー」といっている三国志ファンがいたらかなり怖いですよ。
623:北畠蒼陽 2005/03/18(金) 11:35 [nworo@hotmail.com] -どおきのきづな- ……同級生は仲がいいものだ、とか世間では思われているようだ。 ……確かに私にだって仲がいい人がいないわけじゃない。 ……でも、なぁ、とか思う。 「んあ?」 ……本当に同年代ってのは仲がいいものなんだろうか、そういったことを尋ねたとき彼女の第一声がそれだった。 ……私の同級生といえば彼女……寮でも同室の王昶……文舒のほかに諸葛誕、胡遵、昜、司馬姉妹。それから今、眼前の寿春棟に自分の妹、カン丘秀とともに立てこもる彼女、カン丘倹…… ……別働隊を率いている文欽、といったところだろう。 ……彼女は叛乱を起こし、私たちはそれを鎮圧に来ていた。 ……彼女がなぜ叛乱を起こしたか、ということはわからなくもないつもりだ。 ……年下ながらひときわ強い光を放つ夏侯玄に魅せられながら、同じく彼女の未来に夢を見ていた李豊が司馬師を失脚させ、夏侯玄をトップに据えよう、などと考えたことから夏侯玄もトばされ…… ……カン丘倹は夢を失った。 ……今、カン丘倹には司馬師に復讐することしか考えてないんだろうなぁ、と思う。 ……でも私には特にそれ以外の感慨も沸いてこない。 ……しょせんヒトゴトなんだろうな、と思う。 ……そんな関係の同級生が仲がいい、とかいわれてもぴんと来ないのである。 ……文舒にそう言うと…… 「伯輿ってば難しいこと考えてんね」 ……んっと、あなたは考えないの? あっそう…… ……私は王基、あだ名は伯輿。 ……荊州校区総代として王昶と一緒に長湖部を攻めたりしている。 ……自画自賛だけど文舒とのコンビプレーだったらそうそう負ける気はしない。 ……今回もそれを買われてカン丘倹の反乱鎮圧に送り込まれた、わけだ。 ……客観的に見てカン丘倹の叛乱は成功することはないだろう。 ……司馬師を筆頭に文舒、昜、諸葛誕、胡遵……そして私。 ……同年代のほとんどを敵に回したこの戦いで勝機など万に3つしかありはしない。 ……1つ、戦いの長期化とこの叛乱に呼応する長湖部の援軍。 ……2つ、戦いの長期化と病気なのに強行してこの戦いに参加している司馬師の病状悪化。 ……3つ、カン丘倹と一緒に叛乱を起こした文欽は寿春棟から出ているので、その別働隊としての動き。 ……まぁ、そういったことに気をつけていればほぼ負けはありえない。 ……だから逆にかわいそうなんだよね、カン丘倹。 ……滅びの美学、ってのは私も持ち合わせてるつもりだから。
624:北畠蒼陽 2005/03/18(金) 11:35 [nworo@hotmail.com] 「戦場で余計なこと考えてるとトばされるよ、伯輿。今は同級生がどう、って話じゃない。私たちが戦ってるのは同級生、カン丘倹じゃない。ただの敵」 ……文舒に叱られた。 ……反省。確かに王昶の言うとおり。迷いは戦いのあとに置いておくものだ。 …… ……? 文舒? 「ん? なに?」 ……その拡声器はなに? 「いや、これで投降促すの。戦いがなければそれに越したことはないしね」 ……戦いがなければそれに越したことはない、という彼女の言葉は正論だ。 ……でも、なぜか私は言い知れない不安を感じた。 「あー、あー……カン丘倹のとこのみなさ〜ん。毎度おなじみの生徒会ですー。あんたがたは完全に包囲されてまーす!」 ……拡声器を通して文舒の声が響き渡る。 「みなさんが叛乱起こしてー、故郷のお母さん、泣いてるんじゃないかなぁ! きっとお母さん、涙流しながらこう言うんじゃないかなー? 『人生に絶対はない。でも人に迷惑かけたらあかん』……お母さんそう言ってあんたがたのことを育ててきたんじゃないかー!?」 ……不安的中。文舒は説得に向いてない。それも致命的に。 ……しかもなんでお母さん、関西弁? 「うぅ……お母さん!」 「まてまて、秀! あれは敵の誘降の策略だ!」 ……寿春棟の中から声が聞こえる。 ……あれでなんで泣けるか。 「危ない危ない! 敵の策略に引っかかるところだった!」 ……危なかったのか。 「私は生徒会の胡遵です! みなさんを説得しにやってきました!」 文舒の次に拡声器を持ったのは胡遵だった。堂々としてる、声だけは。 「みなさんの叛乱に一般学生は迷惑を被っています! 一般学生にこれ以上の圧力をかけないためにも矛を収めてもらえないでしょうか!」 言うことは立派だ、言うことは。 「うぅ……ごめんよ、一般学生!」 「まてまて、秀! そういったこと前もってわかってただろうが!」 ……寿春棟の中から声が聞こえる。 ……面白いなぁ、棟内。 「このようなあなたがたの暴虐に対し……」 「うるさいぞ! 地味っ子、胡遵!」 ……あ。 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁん! 地味なんて酷いーッ!」 胡遵は拡声器を捨てて泣きながら走っていった。 「ウィークポイントをついた一言。敵ながら見事だね」 ……うん、お見事。 ……いつの間にか役目を終えて私の隣に来ていた文舒に私も深く頷いた。 ……文舒がやけにすっきりした顔をしていたのが気になった。そんなにお母さん話をできて満足なんだろうか。
625:北畠蒼陽 2005/03/18(金) 11:36 [nworo@hotmail.com] 「カン丘倹! なんで私に相談してくれなかったの!?」 ……次に拡声器を持ったのは諸葛誕。 ……うん、それだったら期待できそう。 「私に相談してくれればもっといい方法だって思いつくことが出来たのに! ……文欽ね!? 文欽でしょ!? あの女狐がカン丘倹をそそのかしたんでしょ! 文欽めー! 曹爽とかと同系列のくせにー! 死んじゃえー!」 ……うーわ。まともだと思った私が早計だった。 「うぅ……そうだ、文欽が悪い!」 「まてまて、秀! あれ、もう説得になってないから!」 ……寿春棟の中から声が聞こえる。 ……よくいえば感受性が強い、とかそういう感じなんだろうな。 「危ない危ない! 敵の策略に引っかかるところだった!」 ……カン丘倹、大変だなぁ。 「えっと、あの……う、あ……えー、えっと……そ、その……あの……えっと、えー……あー、その……うん、あの……」 ……次に拡声器を持ったのは……昜。 ……ここでようやく私は気づいた。 ……やばい、司馬師面白がってる。 「えっと……あの、えっと……み、みなさん……だから、その、あー……うん、と……あの、だから……えー、や、やめたほうがいいと思います、けど……えっと、な、なんでかっていうと、あ、あの、つまり……えっと……あの、や、やめたほうがいいと思います」 ……どもるにも程があるだろう。 「うぅ……どもってるよぅ!」 「まてまて、秀! いや、だからなんでそうなるんだよ!」 ……寿春棟の中から声が聞こえる。 ……カン丘倹のことを思うと涙が出てくる。 「危ない危ない! 敵の策略に引っかかるところだった!」 ……かわいそうなカン丘倹。 ……私は司馬師のところにいこうとしていた。 ……こんな説得ショーで時間つぶすより、今は速攻で片付けるべきだと思ったからだ。 ……司馬師は、いた。そしてサイコロを振っていた。 「あ、王基、ちょうどよかった。今、2が出たから次、貴女が説得してきて」 ……サイコロで決めてたのか。 「ね? 説得任せたから」 ……私、口下手だから。 「あらそう、残念……んじゃショータイムも終わりってことでそろそろ動きますか」 ……了解。その言葉を最初から聞きたかったけどね。 「イッツァショーターイム♪」 ……嬉しそうに司馬師は叫んだ。
626:北畠蒼陽 2005/03/18(金) 11:42 [nworo@hotmail.com] 学園モノなんだから同級生モノってことでやっちゃいました……_| ̄|○ まぁ、王昶&王基がこの中じゃ一番仲いいんでしょうけどね。 ちなみにツッコまれる前に補足。 カン丘倹が立てこもってたのは寿春じゃないですね。 まぁ、学園における『棟』って単語をどこまで使っていいかわかんなかったのでこうなりました。 これは私の設定知識の不足ってことで反省してきます。 反省して三国志大戦してきますひゃっほう。
627:海月 亮 2005/03/18(金) 18:16 自作品について、泣き言をひとつ。 結局のところ、初心者スレで呉派を宣言して入って来た以上、どうしても作品の方向性が呉に偏らざるを得ないのですよ、ワタクシ。 ただ、それだけですから。ええ。 でも次はそろそろ、蒼天会で何か書きたい気分…陳矯か、陳泰&昜あたりで。 北畠様へ。 >メール つかこちらこそ、返信が随分遅れて面目次第も(以下略 もしかしたら、おいらのは宛名が本名になってる可能性が(オイ >孫権たん 海月のなかでは大体、(シラフのときは)あんなイメージなんですよ。 あれが二宮の変の頃になるとどうコワれていくか、想像するだけでも萌えると思いませんか? >毋丘倹と毋丘秀 仲恭ねーさん哀れすぎ…。 個人的には泣きながら走り去る胡遵がツボです。なんか、絵ぇ描けそうなくらいはっきり想像できました(w あと、どもり昜と暴走諸葛誕もいい味出てますなぁ〜。
628:★ぐっこ@管理人 2005/03/22(火) 01:35 >卒業 。・゚・(ノД`)・゚・ そうですよねっ!袁紹は曹操にとって、長年世話になったお姉さまですもの!グランスールですもの! 許攸…難しいキャラですよねえ(^_^;) リヨみての中では白薔薇っぽい立ち位置にいますが。彼女の場合、「おこった事」の解説 (言い訳ともいう)は天才的。難解な事態に遭遇しても、蕩々と現状分析とかするから、 みんなそれに感心して、よほどの鬼謀の女と思い込むのですが、実は「これから起こる事」 の予測は凡人レベルだったり。荀揩竓s嘉たちとの決定的な差ですな。 袁紹や袁術は、それぞれ財閥の後継者として巣立ち、例えば荀揩ネんかは、後に天才 経営コンサルタントとして、財界に名を馳せることになったり。 曹操と劉備はどうなるんだろ(^_^;) >王凌 なるほど…。最後まで読んで、王允の亡霊の意味がわかりました〜 太原王氏も含め、このへんの王姓のひとってややこしいなあ(^_^;) 揃いも揃って高官になってるし…久々に辞書読み返して再確認…。 そういや王淩も、叛乱を起こす直前まで、三議長のポストを歴任するほどの大物だったのですね… >牛金 そういえば今週の蒼天。・゚・(ノД`)・゚・ 牛金ネタといえばhttp://gukko123.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/12ch/read.cgi?bbs=sangoku&key=1036208714&ls=50 あたりが懐かしい。 彼女も曹仁の下で相当に鍛えられて、司馬姉妹に恐怖されるほどの女傑に成長したっぽい。 牛氏の小吏に関する真偽はさておき、学三的には彼女をピックアップしたいところ( ゚Д゚)! >銀幡流儀 大作乙( ゚Д゚)! むう、シーンとしてはあのへんか! 魏は魏で、呉は呉で色々あるんだなあ、というドラマが詰め込まれてるシーンんになって ますやね〜。 まだまだ甘寧に貫目が足りない凌統はもとより、丁奉が健気な後輩ってのもいいなあ〜。 この暴風娘甘寧の姉貴分である呂蒙が、登場しないぶん頼もしく感じる… でも、学三の戦闘、もうちとソフトのがいいかも… >同期の説得とか ワロタ。みんな個性がある…つうか毋丘秀いい娘や…(´Д⊂ そういや彼女だけなんとか 逃げ延びるあたりがまたツボ。 個人的には諸葛誕の「死んじゃえー」がヒット。さすがは諸葛たん! 全てにツッコミを入れてる王基のキャラに、新しい何かをかんじますた。 >議論 …(-_-) >棟の範囲 ケースバイケースになりますねえ(^_^;) 特に魏呉の国境あたりは校区が入り乱れてるから特に…
629:海月 亮 2005/03/22(火) 22:01 >戦闘 ………………気がついたら結局殴り合いしか書いていないという。 「学園モノ」ならでは、という対決を考えつけない未熟者ゆえ…_| ̄| ...○オユルシヲ このあたりはもちっと考えて然るべきところですよね。 樊城の曹仁vs関羽とか、漢中攻略とか、まだ誰もSSでやってない戦役も多いことですし、そのあたりで何か考えてみようかと思います。 どこかで水泳大会とかやってみたいなぁ…孫策の江南平定戦とかどうかなぁ…むぅぅ。 あと、ここでの争論も原因は私…狼藉の数々、平にご容赦の程を…。
630:★ぐっこ@管理人 2005/03/28(月) 00:58 いえいえオキニなさらず〜。 というかアレです、最近リヨみてとかで、マターリした学園モノが念頭にあるから。 でもまあ、基本的に女の子同士の喧嘩ですから、流血とか骨折とかは無しで、 コミック時空よろしく、「吹っ飛ばす」くらいの流れの方がよいかなあ、と(^_^;)
631:国重高暁 2005/05/21(土) 18:12 ■■ シ水関 ■■ 劉備・関羽・張飛が蒼天学園高等部へ進んだ頃、その内側はかなり荒れていた。 涼州校区総代だった董卓が、生徒会執行部員十名の追放を口実に洛陽棟へ入り、一挙に学園の主機能を制圧し、蒼天会長を少さまから献さまへすげ替えるなどの暴威を振るったのである。 これをみて、陳留棟の曹操は中華市内各地へ檄を飛ばし、南皮棟の袁紹らと「董卓追討軍」を結成。横河の南岸のシ水関で衝突したが、苦戦を強いられ、果ては敵将・華雄により、孫堅軍の剛勇・祖茂をリタイアさせられたのであった。 「たれか、あいつを飛ばせる娘はいないの?」 追討軍の盟主・袁紹が、本陣全体を見渡して号令した。と、そこへ、冀州校区総代・韓馥の部下、潘鳳が進み出て言う。 「俺が飛ばしてやるぜ!」 「頼もしいですね。では、お任せしましょう」 癒し系の声援を受け、彼女は戦場へ飛び出した。 「行くぜ!」 気合一閃、模造刀を振るって斬りかかった次の瞬間。 (き……消えちまった?!) 何と! 相手の姿が、視界から外れたではないか。 (全く、あんたは猪武者ね) 華雄は、潘鳳の切先をかわし、背後へ回り込んでいた。そして、自分の模造刀で、うろたえる彼女を袈裟懸けに斬った。葛餅みたいに三角に……はならなかったが、それでもうつ伏せにばったり倒れた。 「じゃ、これはもらっていくわ」 華雄は、潘鳳の階級章を引きちぎり、横河へ向かって思い切り投げ捨てたのである。 「たれか、あいつを飛ばせる娘はいないの?」 袁紹は、再び本陣全体を見渡して号令した。と、そこへ、彼女の異母妹・袁術の部下、兪渉が進み出て言う。 「先輩、わたしにお願いできないでしょうか?」 「では、あなたが潘鳳さんのリベンジを果たすというのですね」 「はい。この兪渉、必ず、あの娘を飛ばしてまいります!」 不退転の決意と共に、彼女は出陣した。 「先輩、胸を借りさせていただきます」 両手両足をおっ広げ、ちらちらと誘いの隙を見せる。 (もらったわ!) 挑発された華雄は、模造刀を振るって斬りかかったが、それが相手の思う壺。先刻とあべこべに、自分がバックを取られる破目となった。 (見せましょう。わたしたち、柔道部員の力を……) 兪渉は、腕をフックし、担ごうとする。 (甘い!) これをみて、華雄は右足を振り上げ、恥骨結合の辺りをぼかんと蹴りつけた。相手がびっこを引いて飛びのくと、容赦なく鉄拳制裁を食らわす。 「人の三大急所、それは眉間・鳩尾・恥骨接合よ。覚えときなさい!」 彼女は、仰向けに倒れた兪渉の階級章を引きちぎり、横河へ向かって思い切り投げ捨てたのであった。 「たれか、あいつを飛ばせる娘はいないの?」 袁紹は、三たび本陣全体を見渡して号令した。 「本初ちゃん、あんたの部下を出したら?」 と提案したのは、傍らにいた曹操。彼女とは、幼馴染で同級生の間柄である。 「いえ、それが、その……わが冀州校区の誇る『ソードマスター』と『ナイトマスター』が、まだここへ到着しておりませんので……」 袁紹は、歯噛みしてそう言った。 こんな彼女たちの会話を、本陣の片隅で聴いていた三人娘がある。 「何や、かったるいな……」 最も小柄な、ショートカットの眼鏡っ娘が、大きく伸びをしてそう言った。 「姉者、いかがなされた?」 最も大柄な、ストレートロングの少女が問う。 「どないしたもこないしたもあるかい。本初先輩の派遣した娘が、あっちうまに二人も飛ばされて……うち、もう観ちゃおれんのや」 「よし、ほな、うちがやっつけたる!」 立ち上がるなり、右手を高々と挙げて叫んだのは、両者の向かいに座っていたツインテールの少女である。 「益徳、行くな!」 やにわにその場を離れようとする彼女の袖を引き、ストレートロングが警告した。 「何でやねん?」 「あの娘は腕っ節も強いが、頭脳プレーもできる。お前のような猪武者では危ない」 「はあ、さよか……」 ツインテールがしおしお引き返す。入れ替わりに、ショートカットがストレートロングへ近づいて言う。 「雲長、どないする?」 「姉者、お任せくだされ。私には、あの娘を飛ばす自信がある。早速、本初先輩へ掛け合うといたそう」 寸考ののち、ショートカットはぽんと手を打って答えた。 「よし、ここはあんたに頼も。ほな、飛ばされんように頑張りや!」 ストレートロングは小さくうなずき、袁紹の元へ馳せ参じたのである。 「見慣れない娘ですね……あなたは、一体たれなのでしょう?」 盟主の問いに答え、かの少女は自己紹介をした。 「私は、姓を関、名を羽、字を雲長と申す者。平原棟の弓道部長を務めておる」 「平原棟といえば……玄徳さんのところですね」 「いかにも」 「わかりました。それはそうと、この私に何の御用でしょう?」 関羽は、戦場の華雄を指して言った。 「当方、あの娘の階級章を剥奪したいと存ずる」 「何ですって?!」 驚いたのは袁紹である。幾ら平原棟長・劉備の義妹といっても、身分の低い者を前線へ出すわけにはいかない。 「ちょっと、地位をわきまえてくださいません?」 「身分などどうでもいい。私には、あの娘を飛ばす自信がある」 「とはいえ、うかつにあなたを派遣いたしますと……」 悩んでいるところへ、曹操が再び首を突っ込んだ。 「本初ちゃん、この娘は闘いたくてうずうずしてるわ。罪を糾すなら、負けて逃げ帰ってからでも遅くはないわね」 寸考ののち、袁紹は答えて言う。 「わかりました。あなたがそうおっしゃるなら、私も従いましょう」 そして、温かい緑茶の缶を関羽へ差し出した。 「雲長さん、景気付けに飲んではいかがですか?」 「いや、今はいらん。まず、あの娘を飛ばしてからいただくとしよう」 彼女は、袁紹のもてなしをはねつけ、凛々と戦場へ向かったのである。 腰の模造刀を抜き、関羽と華雄は身構えた。互いの眼が光る。 「華雄先輩、階級章は奪わせていただく!」 「さあ、それはどうかしら?」 と、先に仕掛けたのは相手方であった。 「わが刃、受けなさい! 燕返し!」 右腕一本で模造刀を持った華雄が、体をぶん回しながら斬りかかる。 ジャキーン! 互いの刃が触れた次の瞬間、彼女は仰向けに倒れていた。必殺の「燕返し」を関羽に受け止められ、頚動脈を斬られたのである。 (な、何という強さ……) あわれ、華雄は階級章を剥奪され、永久に蒼天学園の歴史から除去されたのであった。 大きな戦利品を手に、関羽は本陣へ舞い戻った。 「お帰り。結果はどないやった?」 「うち、それだけを気にしとってん……」 劉備や張飛から声がかかる中、彼女は華雄の階級章を提示する。 「わお、華雄先輩の階級章やないか!」 「ほんまや……ほんまに、華雄先輩の階級章や……」 しばし茫然とする両者を差し置き、関羽は袁紹の元へ向かった。 「当方、約束どおり、あの娘を飛ばしてまいった」 「何ですって?!」 盟主も驚きを隠せない。何しろ、既に友軍武将を三人も飛ばされたのだから。 「ちょっと、冗談は止してくださいません?」 「冗談ではない。彼女の階級章がここにござる」 と、関羽は後ろ手に握っていた物を提示した。 「な、何と! あ、あなたが華雄さんを……い、一介の棟長の部下にすぎないあなたが、よくも、まあ……」 不快感を覚えた袁紹が、彼女へ撃ちかかろうとすると、曹操が割り込んで制止した。 「本初ちゃん、あたしの言ったとおりでしょ? 『罪を糾すなら、負けて逃げ帰ってからでも遅くはない』って」 そして、乳房の間から、先刻の缶入り緑茶を取り出す。 「これ、懐で保温しといたわ。さあ、一気に飲み干しなさい」 「かたじけのうござる。では、お言葉に甘えて……」 関羽は、軽くタブを開け、両手で缶を奉げ持ち、まだ冷めていない緑茶をキューッと空けた。彼女の傍らには、華雄から奪った階級章が投棄されていた。 糸冬
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