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637:北畠蒼陽2005/06/05(日) 22:03 [nworo@hotmail]
「私だけを見ること、って……」
なにを言っているのか、と笑い飛ばそうとして臧覇はふ、と気づく。
「もしかしてさっきの言葉って……私の『呂布に私と戦うな、っていったらしいね』って言葉の返答?」
無愛想に頷く高順。
臧覇は一瞬、唖然とする。
こんなに時間をかけて、そんなことを答えなくても、と思った。

よく見ると高順の頬はすこし赤く染まっているようだ。
『言わなければよかった』と後悔しているさまがありありと見て取れる。
それを見て……
「……ぷ」
笑いがこみ上げてきた。
「く、くく……」
そうか。
私も不器用な人間だった。
姉を救う方法がわからなくて殴り込んだ。
今、思えば中央に正式な抗議文書のひとつでも出せばよかったのかもしれない。
私も、不器用な、人間だったんだ。
だからこそこの高順の感情の表し方が……
「あっはっはっは!」
すごく好ましいものとして臧覇の目に映った。
「わ、笑わないでください」
憮然として高順が遠慮なしに大声で笑う臧覇に抗議する。
「だ、だって……ぷ……あーっはっははははは!」
腹を抱えて笑う臧覇にいつしか高順も笑顔を浮かべていた。

そうだ。
わかりあうのは夕日の河原で殴りあい、だけとは限らないじゃないか。
臧覇は苦笑にも似た笑みを浮かべる高順を見ながら大声で笑い続けた。

「見送りはここまででいい」
「はい」
ひとしきり大声を出した後、臧覇と高順は校門まで来ていた。
臧覇はバイクにまたがり高順を見る。
あれだけとっつきにくさを感じた顔が今では好ましいものとして映っていた。
「狼の血族はどんなに飢えても同族を裏切ることはない。私はお前を裏切らない……そう呂布に伝えてほしい」
そう……
呂布も私も……そして高順も、みな飢えた狼だ。
この世のなにもかもを噛み切ってやればいい!
「承りました」
頭を下げる高順に笑みを残し、臧覇は風になった。
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