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669:海月 亮 2005/06/15(水) 23:30 「此処まで予想通りだと却って清々しいもんだねぇ…」 「落ち着いてる場合ですか! 早く助けに…」 「もうちょい待って。もう少し喰らいつかせてから」 陸凱は、気のはやる部下を宥め、草陰に潜んで戦況を眺めていた。 陸凱率いる軍団が江陵棟に辿り着いた時、雪のちらつく校門前は人並みでごった返していた。 要するに凄まじい大混戦だったのだが、恐慌状態だった長湖部勢がほとんど一方的に飛ばされている状態。 (ま、あっちの主将があの天然性悪の王昶で、こっちが感受性の塊みたいな公緒なら仕方ないか) 陸凱は王昶がどんな手を使って、江陵の主将である朱績を引きずり出したのか直接は知らなかった。 しかし、相手の性格の悪さならよく知っている。あの何とも言えないナイスな性格の持ち主である王昶なら、先に引退したばかりの長湖部総参謀・朱然の妹で、これまたその後を継ぐ者としてプレッシャーの中にいる朱績を江陵棟から引きずり出すなんて朝飯前だろう。 (でもっ、調子に乗りすぎだよ…王昶!) 伏兵の王渾軍があらかた出尽くし、後方に控えていた王昶の本隊が動き出すのと同時に、陸凱は叫んだ。 「よし、全軍突撃! あの座敷犬どもに目にもの見せてやんなっ!」 「おーっ!」 陸凱号令一下、彼女の軍団が怒号と共に勢いづいた蒼天会軍の横っ腹めがけて突っ込んでいった。 「てかさぁ…気持ちは解るけどそんな教科書通りの挑発に乗るなっての」 そんな挑発の仕方なんて教科書に載ってはいないんだろうが、と心の中で自分ツッコミする陸凱。当然ながら、この失態の悔しさに未だ涙を止めるきっかけすらつかめない朱績からそんなツッコミが飛んでくるとは、陸凱も思っていない。 「…だよ…っ」 「ん?」 そのとき、嗚咽の中からそんな声が聞こえた。 「あたしに…あたしなんかに…お姉ちゃんの…代わりなんてっ…」 「そ〜だろうね〜」 この重苦しい雰囲気を意に介するでもなく、軽く流す陸凱に、朱績は悔し涙を払うことなく睨みつけた。 「伯姉なら言うに及ばず、義封先輩だったらきっと笑って流したでしょうね。周りが呆れたって、自分の感情を無闇やたらと周囲に振りまくような人じゃなかったしね」 しかし、それでも陸凱は取り合おうともしない。更に少女の心を抉るような言葉を容赦なく吐きつけた。 「酷いよっ!…何でそんな、酷いこと…平気で…」 朱績が掴み掛かってきても、陸凱はまったく動じない。そのまま彼女の胸に顔を預け、再び泣き出してしまう。 陸凱は振り払おうとせず、その体を抱き寄せた。 「なぁ公緒、あたしたちはどう頑張っても、あんな人たちの代わりになんてなれやしないんだ」 「…ふぇ…?」 「いくら能力があったって、たとえ血のつながりがあったって…あたしや幼節が伯姉の代わりなんて出来ないだろうし、承淵が興覇さんの牙城に迫ることも出来ない。季文も休穆先輩と似てるのは性格だけだ。世洪は仲翔先輩みたいになれないだろうけど…まぁ、あれはならないほうが無難かもな」 冗談めかしてそんなことを言って、そして真顔で続けた。 「あんたも同じだ、公緒。だったら、あたしたちはあたしたちなりに、頑張るしかないんだ。失敗したら、また次へ活かしていけばいい…」 その言葉に、弱々しいながらも「うん」と朱績は頷いた。
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