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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
764:北畠蒼陽 2005/07/23(土) 21:15 [nworo@hotmail.com] 「ふ〜ん」 冷静な声が校舎の拡声器……王昶……から聞こえる。 「なるほど、私が追撃してるうちに伏兵で校舎を直接攻めようって? その攻め方は『いい』ね。ちょっと感心した」 ……ッ! あたしは呆然とする。 こいつはなぜこんなにも……ッ! 「あぁ、誤解しないで。私は本当に褒めてるんだよ? 実際にいきなりだったら本当に撤退してるとこを追撃することに頭が回ったと思う……ただ朱績ちゃんの今までの言動からするとそれが考えられない。裏がある、と思っただけ」 作戦自体は本当に素晴らしいね、拡声器からの声。 あたしはしかし……屈辱に震えていた。 褒められても嬉しくもなんともない! しかも見破られたのがあたしの今までの言動自体だったなんて! 悔しくて涙が出そうだ。 「しまったな。『羽化』……させちゃった、かな」 王昶の意味のわからない呟きにも反応の余裕がなかった。 あたしは…… そのとき拡声器を通じて聞こえてきた声はあたしの理解を完全に超えたものだった。 「玄沖、しばらくあんたが主将代理ね。好きなように指揮してみなさい」 指揮権の譲渡? どういうこと? 「今までで一番楽しませてくれた朱績ちゃんのその作戦の敬意を表して一騎打ちなんてどんなもんだろう?」 あたしはきっとそのときとてもマヌケな顔で校舎を見上げていたんだと思う。 「朱績ちゃん、おまたせぇ♪」 王昶が笑いながら校舎の外から出てくる。 手にはなんの変哲もない丸い棒。木刀よりちょっと長いだろうか……あれがあいつの武器? ブラウスにタイ……それはいいとして頭に赤いベレー帽。ブレザーのかわりに迷彩柄のハーフコート、手は袖に通さずいつでも脱げるように肩にかけてあるだけらしい。スカートのかわりに迷彩柄のハーフパンツ……これはなにかの主張があるんだろうか? あたしは応じることなく竹刀を構える。 ここで…… たしかにあたしは弱いかもしれない。 でもやっと自分の土俵に誘い出せた。 それがとても満足だった。 あたしの表情に気づいたのか王昶が表情を緩め、そしてため息をひとつ。 「……さっきのね? 伏兵で校舎を奪い取っちゃおう大作戦、ね。本当に素晴らしいわ」 王昶が笑いながら語りかける。 隙を作ろうというのだろうか? あたしは油断なく王昶の様子を伺う。 「もう、ね。この時点で私の負けなわけ。わかる? つまり……」 王昶は言葉を切り、ため息2回目。 「……私は朱績の才能を開花させてしまった。これはカンペキに私の失態、ね。だから……」 あ…… 王昶の言葉からあたしに対するちゃん付けが取れた。 あたしは……王昶に認められた。 「……絶対に建業棟に帰さない。才能がまだ蕾であるうちに刈り取らせてもらう」 言葉とともに王昶は少し身をかがめ、コートをあたしに向かって投げつける。 視界を奪うつもりか……! 左上から鋭角なものが振り下ろされるイメージがなんとなく頭の中に浮かぶ。 あたしはそれにとっさに竹刀を合わせた。 棒の重い一撃があたしの手を痺れさせる。 でも……でも受け止められた。
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