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770:海月 亮2005/07/23(土) 23:30
それからは怒涛の如く、長湖部の内情は変化した。
権力を掌握して好き放題の孫チンを粛清すべく動いた部長・孫亮は、クーデターによって部長職を追われた。
しかも直後一週間行方不明になり…その空白の時間に、一体どんな目に遭わされたのか…発見された時には心身ともに無残な状態だった。
その一週間の間に、孫チンは自ら部長職に就くという野心を顕にした。この時、虞レが尤もらしい言葉で彼女の野心に釘を刺し、当初の予定通り孫亮の実姉で、孫権の母方の従姉妹である孫休が部長職に就いた。
孫休は、妹が受けた仕打ちが孫チンに原因があることを九割九分証拠をつかんでおり、孫チンを憎悪していた。
いずれ手をこまねいていれば自分も同じ目に遭うと考えた孫休は、先手を打って孫チンを謀略で陥れ、粛清した。その際、丁奉も彼女に協力し、孫チンに引導を渡すことと相成ったのだ。


学園祭後夜祭が終わっての定例会議の席で、その変事は起こった。
物々しく武装した風紀委員会が部屋を埋め尽くし、数人の少女たちに地面に押さえつけられた少女…孫チンは、何の感慨もなさそうに自分を見下ろす部長・孫休に、狼狽を含んだ怒声を浴びせた。
「い…いったいこれって…説明しなさいよッ!」
遠縁の従姉妹に向けた孫休の瞳は、何の感情もない、冷たい視線でそれを見下ろしていた。
「この長湖部はあなたの遊び場ではないの。そして、子明にあなたがしたことを知らないわけではないわ」
孫チンは孫休の瞳の中に、自分に対する激しい憎悪の炎が燃え盛っていることにようやく気がついた。
「うぐ…な、なら私が権力の座を手放して、一般生徒に戻ればいいんでしょ…? そうすれば、私も責任を…」
その瞬間、孫チンの目の前の床に木刀が突き立てられた。それに驚いた孫チンは短い悲鳴を上げ、恐る恐る上目にその人物を見た。
「…承淵」
「答えろ。だったら貴様は何故、世議や季文、承嗣さんや孫亮部長を一般生徒に戻してやらなかった…?」
その紅玉のような瞳は、気の弱い人間ならそれだけで心臓が止まるのではないかと思われるほどの殺気を、視線に込めていた。
図太い性格の孫チンですら、その殺気に顔色を失った。
「何故…彼女たちを私刑で傷つけたんだ…?」
「し…知らない! あたしは無関係だ! あたしの妹たちが勝手に…」
その瞬間、数枚の写真がその目の前にばら撒かれた。
その正体に気づいた瞬間、孫チンの全身から一気に血の気が引いた。
「…放校処分だけで済ませるつもりは毛頭ない…貴様らにも、同じ目に遭ってもらうぞ…!」

その後、孫チンや彼女の妹たちがどうなったかを知る者はいない。
何らかの処罰を行ったらしい丁奉が、そのあらましを報告しに戻った際、その衣服は髪飾りの鈴に至るまで、真っ赤に染まっていたという。

丁奉は年を経るごとに、様々な功績を認められ、長湖部の武闘派として押しも押されぬ地位にまで登りつめた。
彼女は要所要所で部の危機を救い、そのために汚れ役も厭わなかった。
しかし…あまりに多くの「闇」を見続けた彼女の心は…いくつもの深い傷跡を刻み、表情からもかつての面影を消し去っていた。
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