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842:北畠蒼陽 2006/01/09(月) 10:59 [nworo@hotmail.com] 「センパイ……ここ、間違ってますよ」 「あ、ご、ごめんなさい」 年下の棟長の冷ややかな視線が突き刺さる。 「私だってヒマじゃないんですよ。補佐ってのは私の仕事を楽にしてくれるためにいるんであって、仕事を増やすためにいるわけじゃないと思うんですよね」 「ごめんなさい。す、すぐに訂正します」 滑稽なほどぺこぺこと頭を下げる彼女。 その目の端には涙が…… 日のあたる場所 彼女はベンチに座ってずいぶんと遅い昼食をとっていた。時刻はもう3時を回っている。 自分が不器用なのは知っていたけど、まさかここまでなんて、ね…… 彼女はそういって自嘲気味に笑う。 膝の上には弁当。家計を切り詰めるためだ。自炊しなければならない。コンビニ弁当なんて贅沢なんてできやしない。 彼女は手を合わせていただきます、と言おうとして不意に視線を感じ顔を上げた。 そこにはいたのは少女だった。 目が悪いのだろうかメガネをかけた少女はじっと彼女のほうを見ている。 少女は中等部の制服を着ていた。まぁ、このベンチは校内とはいえ立ち入りのできない場所にあるわけではない。そう珍しくもないことだ。 しかし彼女はそう思いながら少女から目をそらすことができなかった。 それは少女の強い目の光を見てそう思ったのだろうか……だから彼女は少女がベンチに向かって歩いてくるのを見て思わず心臓が高鳴るのを感じた。 その少女は紛れもなく彼女を見ていた。 彼女も少女をずっと見ていた。 そして時間が流れる。 「先輩、この校区の方じゃないですよね?」 少女がようやく口を開いたとき彼女は一段と心臓が高鳴るのを感じた。 「ど、どうしてそう思うの?」 見透かされた、と思った。 「いえ、昔話です。この潁川棟が韓信先輩の本拠地だったころに今、先輩が座っているベンチが韓信先輩のお気に入りだったんです。なんとなく座らないようにしよう、って不文律があるんですよ」 少女の言葉を聞いて彼女は仰天し、立ち上がろうとする。 「じゃ、じゃあ……」 別のベンチに、と言おうとして少女の次の行動にあっけにとられた。 「でもただの昔話。そんなの守る義務はありません」 少女はすとん、と彼女の横に腰を下ろした。
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