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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
88:玉川雄一 2002/07/28(日) 09:58 [sage] 鍾ヨウに目を付けられるとはさすが! ご安心めされ。学三の鍾ヨウは半端なキャラじゃないですよ。 旧掲示板(現仮あぷろだ)の過去ログ…は当の昔に流れてしまいましたが、とりあえず http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/zinbutu/sousou/zyunikus.html 辺りを参照までに。
89:一国志3 2002/12/23(月) 00:57 >>(気が向いたら、ショートストーリースレッドにでも書きこんでみるかもしれません。) というわけで、長坂坡のくだりを書いてみました。 生徒会が袁紹一派の残党勢力をしらみつぶしにしていた頃、劉備率いる帰宅部連合は、 劉表の好意でプレハブ新野棟を借りて、何とか部室を確保していた。 だが、新年度になって劉表が卒業し、新たに荊州校区の総代となった劉[王宗]は、 生徒会に従属する道を選んでしまった。劉[王宗]・蔡瑁らは生徒会に対して恭順の 意を示すため、荊州校区からの帰宅部の追い出しを謀っているところであった。 劉備「えらいこっちゃやで。今のうちらではこの部室守りきれへんし。」 諸葛亮「いっそのこと、荊州校区の本部を急襲してみてはいかがでしょうか? 相手が蔡瑁程度なら、私たちの側に充分に勝算があります。」 劉備「そんなのあかんで! いくら蔡瑁が嫌な奴いうても、劉表さんの恩を裏切ることはできへん。 うちら帰宅部のモットーは、義理と人情の浪花節や。」 諸葛亮「次善の策としては、江夏棟に避難することでしょう。 江夏の劉[王奇]さんなら、私たちを快く迎え入れてくれるはずです。」 帰宅部連合の部員たちは、荷物をまとめて江夏棟に避難する準備をする。 一般部員「劉備部長!私たちも一緒に江夏までついていきます。」 諸葛亮「事態は急を要します。幹部だけが先に避難すべきと存じますが。」 劉備「部員をひとりでも見捨てることは、うちにはできへん。 帰宅部連合はいつでも一緒や。みんな、行くで〜!」 急に帰宅部連合の全員が一斉に避難を始めたので、江夏棟までの連絡通路は 渋滞してしまう。生徒会がそんな状況を見逃すはずもなく、少なからぬ数の 帰宅部部員が生徒会に捕まってしまうのであった。 荊州校区の本部と江夏棟の中間あたりに用水路があり、長坂橋という小さな 橋がかかっていた。大部分の部員たちが橋を渡り終えたのを確認したところで、 張飛と趙雲がしんがりとして生徒会の進撃を食い止めようとする。 張飛「これで主なメンバーは無事に避難できたようだな。」 趙雲「……劉禅ちゃんが!」 張飛「劉姉貴の妹じゃねえか。 あいつトロいし、どこかで道草でも食ってるのかもしれんな。」 趙雲「……行ってくる。劉禅ちゃんを助けに……。」 張飛「…って、待てよ、趙雲!ま、いいか。 生徒会の雑魚どもの相手なら、オイラひとりで十分だし。」 わき道を進んでいると、見覚えのある一匹の猫と出くわす。 趙雲「(あれは……劉備部長のところの……びぃちゃん?)」 猫は趙雲の姿を目にすると、草むらのほうへ駆け出す。 趙雲「(ついてこいってことか…?)」 猫を追いかけると、そこには怪我をして倒れていた劉禅の姿があった。 趙雲「どうした…?」 劉禅「わ〜い!趙雲さんが来てくれたよ〜。 阿斗ちゃんはねぇ、道に迷って、それで転んで怪我しちゃったの。」 趙雲「もう大丈夫だ。……私に任せろ。」 趙雲は怪我をした劉禅を背負う。 劉禅「趙雲さんってどうしてそんなに背が高いんですか?」 趙雲「…小さいほうがかわいくていいよ……。」 劉禅「ふ〜ん、そうなのかなぁ? それとさぁ、びぃちゃんも一緒につれてってくれるよね?」 趙雲「う、うん……。(ドキドキドキ……)」 趙雲は猫を抱きかかえようとするが、逃げられてしまう。 趙雲「………なぜ?」 劉禅「あ〜っ、びぃちゃん、逃げちゃったよ〜。」 趙雲「追いかけなくては!」 謎の声「追ってはいけない。ネコの気持ちを察してあげるのだ。」 趙雲「(……誰!?)」 謎の声「あのネコは、自らの身を挺して阿斗の居場所を伝えに来たのだ。」 趙雲「(ええっ……!?でも、びぃちゃんが生徒会に捕まってしまう。)」 謎の声「君はネコの好意を無にするのか?まずは無事に阿斗を送り届けるのだ。」 劉禅「趙雲さん、どうしたの?ボーっとしちゃって。」 趙雲「いや……何でもない。劉禅ちゃん、しっかりつかまっていろよ。」 迫り来る生徒会の大軍を目前にしながら、趙雲と劉禅の逃避行が始まるのであった。 (つづく)
90:一国志3 2002/12/23(月) 02:48 >>89の続きです。 劉禅を背負いながら、生徒会の手から逃れようとする趙雲であった。 途中、夏侯恩から曹操所有の竹刀「青[金工]」を奪い、この竹刀を振るいながら、 晏明ら生徒会の追っ手を退ける。 劉禅「すご〜い!趙雲さんは無敵だぁ!」 張[合β]「哀れなるものよ。戦場の華となって散りなさい。 曹操直属の五剣士の一、張[合β]儁艾ここにあり。」 趙雲「……………。」 劉禅「ねぇねぇ、戦場の花ってきれいなの?」 仮面をつけたまま、張[合β]が挑んでくる。 張[合β]「どうです?私と剣の勝負を受けてみませんか。 美しき戦いになりそうですよ。」 趙雲「(今は劉禅ちゃんを送り届けるのが先だ。) ……断る。」 張[合β]「敵を目の前にして逃げ出すとは、美しくありませんねぇ。」 趙雲「しっかりつかまって、劉禅ちゃん。」 劉禅「は〜い!がんばれ趙雲さ〜ん。」 しかし、趙雲たちが逃げた先には落とし穴が仕掛けてあった。 趙雲「ああっ……。劉禅ちゃん、大丈夫か?」 劉禅「ううん、阿斗ちゃんはなんでもないよ。それよりも、上、見て!」 張[合β]「淑女たる私であっても、大義のためならば、時には醜い手段を 使わざるを得ないのです。」 趙雲「………………。」 張[合β]「あなたがたには、万に一つの勝ち目もありません。 これ以上あなたの名を辱めたくはありません。潔く降伏しなさい。」 劉禅「ねぇ、趙雲さん。どうすればいいの?」 趙雲「………だめだ。あくまでも帰宅部として……。」 張[合β]「そうですか。あなたに美しき散り際を提供しましょう。」 趙雲「(劉備部長………ごめんなさい。)」 張[合β]の竹刀が振り下ろされたとき、猫型の不思議な赤い光が趙雲を包む。 趙雲「………………!!」 張[合β]「し、竹刀がはね返るとは!?」 謎の声「今のうちに逃げるといい。」 趙雲「あなたはさっきの……。」 謎の声「ああ、名乗るほどのものではないが、阿斗の父です。 娘が世話になっています。」 趙雲「お父さん…?劉禅ちゃんの?」 劉禅「あたしのパパ?学校には来てないよ。」 張[合β]「くっ、私の剣が通じぬとは…。醜い戦いはやめておきましょう。」 趙雲「(……ありがとう、お父さん。)」 生徒会の追っ手として、今度は曹洪が現れる。 曹洪「よっしゃ、趙雲ゲット〜!賞金が……。」 趙雲「ん……?」 曹洪「あんたが趙雲ね。おとなしく生徒会に降伏しなさい。 あんたが生徒会に従えば、あたしも賞金十万元ゲットできるのよ!」 劉禅「ねえ、阿斗ちゃんの賞金はいくらなの?」 曹洪「あんたは無能だから賞金ゼロよ。ってわけで、あたし的には価値ないの。 曹操さんが惚れこんでいる関羽なら、賞金百万元よ!いつかは説得して…。」 趙雲「悪いが、付き合っている暇はない。」 曹洪「ふふふ………。逃がすものですか。あんたの弱点は調査済みよ。 行け〜っ、『百万の青州兵』!!」 曹洪の号令とともに、無数の猫たちが趙雲めがけて一斉に襲いかかる。 趙雲「あ……噛み猫!」 劉禅「あ〜〜っ!ネコの爪はバイキンがあって! おばあちゃんがひっかかれてすごいはれて!」 猫たちが趙雲に飛びかかろうとしたとき、行方不明だったびぃちゃん(劉備の飼い猫) が立ちはだかる。 趙雲「……びぃちゃん!?」 びぃちゃんは渾身の力を振り絞って雄叫びをあげる。 その気迫に押されて、猫の大群は四散してしまう。 趙雲「(猫を抱きかかえて)……ありがとう。」 だが、この瞬間、びぃちゃんは息を引き取ったのであった。 趙雲「うそだ………。」 劉禅「死んじゃったの?」 曹洪「まあ、所詮、ネコはネコね。役に立たないったらありゃしない。 趙雲、今度こそおとなしく生徒会に降伏しなさい!」 趙雲「(睨み付ける)」 曹洪「い、いや、なんでもないです。(せっかく賞金もらえると思ったのに〜)」 生徒会の追っ手を振り切り、何とか長坂橋までたどり着いた趙雲と劉禅であった。 趙雲「……劉禅ちゃんを連れてきた。でも、まだ追っ手が……。」 張飛「よ〜し、あとはオイラに任せとけ!」 長坂橋は張飛に任せ、趙雲は劉禅を劉備の元に送り届ける。 趙雲「……劉禅ちゃんは無事です。でも、びぃちゃんが……。」 劉禅「お姉ちゃ〜ん!会いたかったよ〜!」 劉備「どアホ!おまえは何遍、人に迷惑かけたら気が済むんや!」 劉備は劉禅の頭をハリセンで、これでもかというほどにどつきまわす。 劉禅「え〜ん、え〜ん…。お姉ちゃん、痛いよ〜。」 趙雲「あの……、そんなに叩かなくても。」 劉備「こいつのせいで、危うく優秀な部員を一人失うところやったんや。 え〜い、叩いても叩いても叩き足らんわ。」 諸葛亮「劉備部長、お気持ちはわかりますが、気を静めてくださいませ。 ただでさえ足りない劉禅ちゃんの頭の中身が……。」 劉備「…す、すまん。つい、ウチとしたことがカッとなってもうてな。 そうか、びぃちゃんが亡くなったんか。 そこらへんに埋めとくしかできへんな……。」 趙雲「私のせいで……。」 劉備「いや、趙雲のせいやない。気にしたらあかんで。」 諸葛亮「気を取りなおして進みましょう。江夏棟まではあと少しです。」 江夏棟にたどり着いた劉備たちは関羽と合流し、舞台は赤壁島に進むのであった。 (おわり) *張[合β]のキャラは三国無双を参考にしました。(実は未プレイですが)
91:★ぐっこ 2002/12/24(火) 01:21 [sage] おお、コレは力作! オールあずまんがですが…あずまんが知らない人はちとキツイかも… そういえば、長坂消したままだったな…(^_^;) いや、殺伐よりも、こういう のんびりした活劇を目指しておりますので、演義のほうは、たぶんこっち に近いものになるでしょう〜。 ナル張[合β]…その手があったか。
92:惟新 2002/12/27(金) 16:59 ナル張[合β]Σ( ̄□ ̄;) そこ来るとはとてつもなく予想外でしたが(^_^;) てか、張[合β]は三人いるという説も… それはさて置き、私はあずまんがわかりますので(^_^; 楽しんで読ませていただきました。 けっこうパロディって入れられるものなんですね〜勉強になりましたですよ。
93:教授 2003/01/07(火) 23:48 ■■親友 〜黄忠と厳顔〜■■ 夕暮れの巴西棟。 その屋上に一人の女性が物憂げな表情で眼下に広がる景色を見ている。 大人びた容姿、風に靡く艶やかな髪に凛とした顔立ち。 彼女の名は厳顔。 劉備率いる帰宅部連合の中でも名うての人物だ。 「帰宅部連合に加わってから…色々な事があったわね…」 小さく呟き、柵を背にもたれかかった。 現在の主、劉備玄徳の益州校区攻め…漢中アスレチック戦…。 厳顔が活躍した場はそれ程多くはない。 しかし、それは彼女の中で生涯忘れる事のない出来事。 大切な記憶なのだ。 「学園生活の最後に楽しい思い出が出来たかな…」 感慨深く言葉を紡ぐと深く息を吐いた。 と、屋上のドアがゆっくり開く。 「ここにいたのね。話って何?」 ドアの向こうから大人しそうな印象のウェーブがかった髪の女性が姿を見せた。 だが、その格好は少し変わっていた。 ――弓道着。 練習中だったのだろう、制服姿の厳顔とは明らかに違う。 厳顔は親友の姿を捉えると優しくも哀しげな眼差しを向けた。 「漢升…忙しい所呼び出したりしてすまないね」 「それはいいけど…珍しいわね。貴方が大事な用事があるなんて…」 厳顔は特に大事がない限り自分の用件は後回しにする。 それが人づてに修練中の黄忠を呼び出したのだ。 漢升…黄忠は厳顔の心中を察してか茶化すような事はせず、真面目な顔を見せる。 余談だが二人は3留というかなり不名誉な経歴を持つ。 それが故か学園内で年増コンビ呼ばわりされる事が多々見うけられた。 憤る黄忠、それを宥める厳顔。 無論、厳顔も腹が立たないという事はない、所詮は人間だ。 しかし、彼女が怒りを露わにする事は滅多にない。 以前、理由を劉備に尋ねられた。 『厳顔の姐さんは何で怒らんのや? ああも言われ続けたらいい加減キレるやろ…』 『総代…私と漢升の二人ともが怒り狂ってちゃ歯止めが利かないでしょ? だから私が気にしないようにして抑え役に回ってるってわけ』 『そんなん…腹にたまって気分悪いやろ。ウチが言わさんようにしたるさかいにな…』 『気を遣ってもらわなくてもいいよ。人の口に戸は立てられない…昔から言うでしょ。別に諦めてるとかいうわけじゃないわ…ホントの事だし』 その時は苦笑いをしてやんわりとしていた。 劉備も大人やなぁと感心した程だ。
94:教授 2003/01/07(火) 23:51 それから後も、年増発言は後を立たなかったが二人はいつも通り過ごしていた。 周りからどう言われようとも、二人の仲は間違いなく良かった。 同じ3留だからとか、年が同じだから…そんな陳腐な理由ではなく、本当に気が合う親友同士なのだ。 「総代よりも…先に貴方にだけは話しておきたかったから」 厳顔は真っ直ぐに黄忠の目を見据える。 黄忠もその言葉と真剣な眼差しを受け、それに応える。 そして続きを促すように頷いた。 「私…ここで引退する事に決めたわ」 ひどく重圧感のある言葉。 だが、黄忠は取り乱さなかった。 いつもと何ら変わらぬ姿勢を崩さない。 「そう…」 「…漢升は驚かないんだな」 落ち着き払った黄忠を見て、却って厳顔の方が動揺する。 「ここに呼び出された時に…何となくそんな気がしてたからね」 黄忠がどこか寂しげな笑みを浮かべて付け加えた。 「そっか…」 厳顔はどこか嬉しいような安心したような気分になった。 親友は自分の考えてたよりも、ずっと強い。 引退しようとは前々から考えていた。 だけど、自分の言葉で親友の心を乱すような事があれば…今後の指揮系統に支障を来たすかもしれない…。 そんな事が脳裏を過ってなかなか言い出せなかった。 でもその考えは杞憂に過ぎなかった。 だが…黄忠はそんな事を言ったのだ。 「それじゃ…私も一緒に引退しようかな。年が年だしね」 ひゅうと吹いた一陣の風が二人の髪を大きく靡かせた。 一瞬の沈黙の後…厳顔はその言葉に首を横に振る。 「まだ…貴方は駄目」 ここで初めて黄忠の瞳に動揺の色が表れた。 「何でなのよ…。貴方が引退するのは自由…私が引退するのも…」 「自由だ…って言いたいの? 貴方にはまだ大事な仕事が残ってるわ」 厳顔は神妙な表情で黄忠の言葉を遮った。 「大事な…仕事?」 黄忠は自分の言葉を先に言われ、どうしたらいいのか分からないような顔で聞き返す。 「そう…大事な仕事よ。貴方には…まだ後輩達への指導がある」 「そんな…そんな事なら貴方にだって…!」 感極まって普段出さないような大声を張り上げて厳顔の肩を掴む。 その顔は悲壮感で一杯だった。 厳顔はゆっくりと首を振ると、言葉を紡ぎ始めた。 「貴方じゃないと出来ない事よ…。荊州校区の生徒に関しては私は全く分からない、何よりも貴方の方が私より優れてるし…他の誰よりも経験が豊富だから」 「それなら…二人でやればいいじゃない! それが嫌なら貴方は益州校区の生徒達だけでも…」 「…この校区の生徒達には早く総代達に慣れてもらいたいの。それに私はもう十分役目を果たしたわ…だから、ここで身を引くの」
95:教授 2003/01/07(火) 23:51 「一人より二人の方が指導も…」 「漢升…分かって…」 確固たる信念と決意、そして哀しく淀みのない眼差し。 澄んだ瞳から発せられるどこまでも真っ直ぐな想いは黄忠の心を射抜いていた。 「………」 黄忠は厳顔を掴む手を離すとそっぽを向いてため息を吐いた。 そしてくるりと向き直る。 悲壮感のない、苦笑いだ。 「しょうがないわね…貴方の気持ちは分かったわ。後は…私に任せなさい」 力強く言い放つ。 「頼んだよ……あ、それから」 「何?」 「年増やおばさん呼ばわりされても怒るなよ〜。もう、宥める役はうんざりなんだからさ。引退してから呼び出されても困るしね」 「そんな事、保証できないわよ」 思わず吹き出す二人。 彼女達の明るい笑い声が屋上に響いた…。 翌日、厳顔は劉備の元へ赴き理由も告げず自らの階級章を返上した。 勿論、劉備や他の幹部達は厳顔を引き止めようとする。 厳顔は振り返る事なく、ただ一つだけ皆に言い残し…。 「後は若い子に任せるわ、それじゃ」 そして、静かに去っていった。 「………」 黄忠は去り行く親友の背中を見送る。 ――無意識の内にに涙が頬を伝った。 はっと我に返り慌てて涙を拭う黄忠。 誰にも見られていないかと内心ひやりとしたが、幸い誰も気付いていない様子に安堵の息を吐く。 …と、劉備が黄忠の服の裾を引っ張った。 「漢升はん…ちーと話あるんやけど」 「…総代?」 「ここやとなんやし…ちょっと奥まで来たって」 黄忠は引張られるがままに会議室の奥の部屋に連れ込まれる。 「総代…何の用です…」 「漢升はん、あんた…厳顔の姐さんの引退の理由…知っとるやろ」 「…っ!」 「やっぱりやな…。理由も言われずにコレを返されても…かなわんわ。…理由…聞かせてくれへんか?」 劉備の放つ威圧感に気圧される。 黄忠は重い口を開き始めた。 「彼女…引っ越すんです。ここからずっと遠い所に…」 「そないな事やったら…言うてくれてもええのに…」 「静かに去りたかったそうです…」 「…ウチら騒がしくしたか?」
96:教授 2003/01/07(火) 23:52 「…送別会が嫌だったんじゃないですか? 彼女なりに気を遣ってくれてるんです…『私なんかの為に予算使わなくてもいいよ』って…」 その言葉に劉備は深いため息を吐いた。 「厳顔姐さん…こないな時にまで遠慮せんでもええやん…」 呟くように言うと黄忠に暫く一人にしてくれと告げる。 黄忠は頷くとそのまま部屋を後にした。 「………」 黄忠の足は部室に向かっていた。 いつも隣に居た厳顔はもういない。 果てしない喪失感が心を支配している。 少しでも気を紛らわせたい。 そんな一心で部活動に励もうとしていた。 道場の方からは既に気合いの入った声が聞こえている。 もう練習は始まっているのだ。 急いで更衣室に入ると、自分のロッカーを開く。 そこには…自分の弓道着と弓、そして見慣れない竹刀袋と手紙が添えられていた。 「何かしら…」 手紙を開く。 『漢升へ 私がここにいなくても心はずっと傍にいるよ 辛くなっても漢升ならきっと乗り越えられる がんばれ! 私の竹刀…置いて行くから、使ってあげてね その子も喜ぶと思うし それじゃ…また何処かで会おうね! 親愛なる友人、黄忠漢升へ… 厳顔』 「厳顔…」 手紙の文字がぽつりぽつりと涙で滲んでいく。 そして竹刀袋を開き、中から竹刀を取り出す。 見間違える事はない、親友が振るっていた竹刀だ。 「う…うう…」 黄忠は溢れる涙を抑えられなかった。 ただ、声を殺して泣いた。 親友の残してくれた竹刀と優しい別離の手紙を抱きしめて…。 「漢升…総代…そして皆…元気でね」 荷物をまとめたバッグ(大体の荷物は既に小包にして実家に送ってある)を肩に引っさげた厳顔。 益州校区が見える場所から静かにその景観を眺めている。 「楽しかったよ…こんなに胸が一杯になる程…」 踵を返すと止めてあったバイクに跨る。 ヘルメットを手にし…もう一度振り返った。 「漢升…私達はずっと親友だからね…。そう…遠くにいても…」 厳顔の頬を涙が伝い落ちる。 その涙を拭う事無く、そのままヘルメットをかぶると勢い良くエンジンをふかせた。 「…じゃあ…またね!」 誰にともなく言うと、一気にアクセルを絞り込んだ…。
97:教授 2003/01/07(火) 23:54 あとがき 長くなりました。しかも稚拙で申し訳ないです。 厳顔の引退で非常に悩みましたが、引越しという形にしてみました。 多分、これは賛否両論になりそう…。
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