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987:韓芳 2006/11/05(日) 23:54 咲かぬ花 外伝 隠された1枚 これは、呂布陣営最後の時の、語られることのなかった数日間の物語である――― 「候成!・・・失礼しました!」 魏続と宋憲が後を追った。 「ハァ・・・ハァ・・・ やっと追いついた・・・」 そこは下丕棟の屋上だった。 2月の屋上の寒気は痛くも感じられる。 そんな中で候成は、フェンスに1人もたれかかっていた。 「さっ、寒い・・・こ〜うせ〜い!とりあえず中で話し合おうよ〜!」 「・・・」 「無視か・・・まあ、当然と言えば当然か。」 宋憲がボソッと言った。 「ねぇー!聞こえてるのー?」 諦めず魏続は話しかける。 「・・・」 だが、相変わらず無言だった。 「ここはそっとしておこう。」 宋憲は魏続にそっと話しかけた。 「・・・そうだね、そうしようか。じゃあ、私達先に戻ってるからねー!」 そう言って戻ろうとした瞬間だった。 「・・・星・・・見えないね・・・」 急に候成が喋りだした。 あまりの突然さに、2人は顔を見合わせた。 「急に・・・どうしたの?」 「私・・・この先どうなっちゃうのかな?・・・この空のように、真っ暗なのかな?」 候成はずっと空を見上げている。 魏続が元気づけようと声をかけた。 「大丈夫だって!呂布様のことだから、明日にはコロッと態度が変わって―――」 「あいつの名前を・・・口に出すな!」 「!!」 「魏続!」 「大丈夫。かすり傷だから・・・」 魏続の頬をかすめたのは、候成の階級章だった。とっさに避けなければ、大怪我になっていたかもしれないほどの速さだった。 「あ・・・ごめん・・・」 「いいよ。候成の気持ち・・・分かるから。」 3人の間を風が吹きぬけた。まるで、何かを後押しするように。 「・・・私ね、決めたの。」 候成がぽつりと言った。 「決めたって、何を?」 「私・・・曹操に降る。」 「!!」 「何だって!?」 「本気だよ。それで・・・お願いがあるの。」 魏続はただ呆然としていた。 「候成、裏切り者になると言うのか?」 「そうじゃない。現に、もうこの軍団には所属してないし。」 宋憲をなだめる様に言った。 「その階級章、返しといて。曹操に下るから、もういらないわ。」 「えっ・・・」 「それから、曹操に下っても、私がここを攻めたりしないわ。絶対に約束する。だから安心して―――」 「安心なんて・・・出来っこないよ・・・」 魏続は涙目で話し出した。 「・・・あなたが居ないのに、どうして安心できるの?」 「・・・あなたには高順様が居るじゃない。私が居なくても・・・きっと・・・」 「・・・高順様も確かに大切な人だけど・・・けど、あなたの方が・・・あなたの方が私には大切なのに!・・・そんな、そんな仲だったの?候成・・・?」 「そうだ、私たちはいつも3人一緒だったじゃないか。それを1人でなんて、許さないわ!」 「魏続・・・宋憲・・・ でも、いいの?」 「私達も最近のりょ・・・あいつにはうんざりしてたからね。お互い様だよ!」 「・・・ありがとう。」 寒空の中誓ったこの約束・・・ その後ろで動いた人影に、3人は気付かなかった。
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