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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
170:教授2003/02/14(金) 00:32
「………」
「………」
すたすたと廊下を歩く法正。
その1メートルほど後方から付いて歩く簡擁。
法正が歩く速度を上げると簡擁も歩幅を広くして付いてくる。
法制は立ち止まって後ろを振り返る。
簡擁はカメラを片手にじーっと法正を眺めている。
「憲和…何で後を付けてくるわけ?」
当然の疑問だった。
しかも、相当機嫌を損ねている様子である。
「写真撮らせてよ」
答える簡擁はそれを意にも介しない。
「絶対に嫌。何か企んでるでしょ」
簡擁に対してひどく警戒心を抱く法正。
これまでに何度となく恥ずかしい思いをしてきたのだから仕方ないが。
「何か企んでるなんて人聞き悪いなー。企んでたらこんなに露骨な真似しないってば」
「そりゃそうだけど…とにかく何かされちゃ敵わないから断わるわ」
手をひらひらと振ると法正はまた歩き始めた。
と、いきなり肩を組まれる。
「うわっ!」
「卒業アルバム用なんだ。協力しろって!」
その言葉に法正の動きが止まった。
「卒業…アルバム?」
「そ。私も部長も益徳も…それから法正だって卒業じゃん。だから、帰宅部用の卒業アルバム作成♪」
屈託なく微笑む簡擁。
いつもと変わらない顔…だけど、今日は何処か違う。
何かは分からない、でも…嘘は言ってない事だけははっきりと分かった。
「…一枚だけならいいよ」
法正は苦笑いを浮かべ、ため息を吐く。
「んー…それじゃ、もう少しこっちに寄って…」
ぐいぐいと組んでいる法正の肩を引き寄せフレーム圏内に入れようとする。
ちなみにカメラは右手に持っている、自分も写るつもりで撮るようだ。
「ち、ちょ…近すぎ…」
法正がかあっと頬を朱色に染め上げる。
簡擁の顔がもう間近にあるのだから気が気でない。
そっちの趣味は法正には皆無だし、当然経験もある訳が無い。
いかに法正といえど、こんなシチュエーションに遭遇したのは生まれて初めての事。
どう対処してよいのか分からず、ただただ頬を赤らめるだけだった。
「よーしっ! 撮るよ!」
そうこうしている内にシャッターが切られる。
眩しい光が二人を包んだ。
「ありがとね〜。それじゃ、私はこれで!」
用事が済むと案外あっさりとしている簡擁。
さっさと何処かへ行ってしまった。
その場に残された法正、まだ顔が紅潮している。
「な、なんでドキドキしてるんだろ…」
何故か高鳴っている心臓に首を大きく振って悩む法正。
「突然だったから…そうよ! 突然だったからびっくりしてるだけなんだ!」
法正は気をしっかり持ち直したようだ。
「…でも、憲和の髪…いい匂いがした…………って違ーーーーう!!!」
…そうでもないようだ。
そして一週間くらい本気で悩み続けた法正でありました。
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