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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
214:教授 2003/03/03(月) 23:36 ■■卒業 〜法正の涙〜■■ 卒業式も滞りなく終わった。 周りには泣いてるコもたくさんいたけど…私には込み上げてくるものが何一つ無かった。 自分でも驚くくらい呆気なく感じられた。 卒業…まあ、勉学に関しては修めてるから卒業とは言えるだろうけど。 でも、何か納得できない。 満たされない…何かがまだあるの? 難解な迷路の何ランクも上の迷宮に迷い込んだみたい…。 答えは…何処? 「おーい、法正〜」 「ん…?」 コートを羽織り、教室を出たところで『酔いどれクイーン』こと、簡擁憲和に声を掛けられた。 いつも通りの元気そうな笑顔。 だけど、それも今日で見納めかしら。 「憲和、どうしたの?」 「一人で帰るの?」 一人で帰る? まあ…確かに誰かを誘うつもりもなかったし、お呼びが掛かってるわけでもないからね。 「そうね。一人で帰るつもりだったけど」 私の答えに憲和が首を傾げた。 「今日で最後なんだから、一人で帰るのは勿体無いぞ〜」 「…別に。今までとそう変わりはないわ…」 「さみしー事言わないように。友達甲斐のないセリフだからね、それ」 「友達…」 その単語に心の中で何かが揺れた…。 私を…友達だなんて…。 …何だろう、胸が…苦しい。 痛い程に締めつけられてる…。 それに…自分の鼓動が耳に届いてる…。 分からない…何でこんな事に…。 「ほーせー?」 「…憲和……っ! 何でもないよ」 心配そうに私を覗き込む憲和に我に返った。 でも…まだ症状は治まらない。 「何でもないって顔じゃないけどなー。っと、シチューとパシリが来た」 「卒業してもパシリ扱いってのも…」 私は苦笑いを浮かべ、憲和の見ている方に向き直る。 『お使い乾ちゃん』こと孫乾と『おじょーさま』ことビ竺のコンビが仲良く私達の元にやってきた。 と、早々に子仲がにこにこと微笑みながら口を開く。 「法正さん、一緒に打ち上げ行きませんか〜?」 「打ち上げって…私はやめとく…」 「何でよー」 憲和が抗議の声を上げる。 「…私が行っても…」 私はここで言葉を切った。 後には『楽しくなんかならないよ』って続くはずだったけど…。 三人に気を遣わせてしまいそうでイヤだった。 でも、それ以上に気になる事があった。 「それに、何で私を誘うの?」 私の言葉に三人がきょとんとした目を私に向けた。 な、何よ…その目は…。 「何でって…ねぇ?」 「うん、そうですね」 憲和と孫乾が互いを見合って頷き合う。 それにビ竺も加わった。 何か分からないけど…。 「あのね…法正さん」 孫乾が三人を代表して私に話し掛けてきた。 「何?」 「法正さんを誘うのって…友達だからなんですけど…」 「友達って…」 再び蘇る諸症状。 顔まで熱くなってきた…。 「え、えーと…友達って…、わ、私の事?」 な、何動揺してるのよ…。 「はあ? 法正以外の誰を指してると思うのよ」 憲和がさも当然のように答えを返してきた。 孫乾とビ竺も頷く。 「私が…友達…」 やっと…自分に納得いかなかった理由が分かった気がする。 私の事を…友達として見てる人がいなかった…。 いや、いないと思い込んでいた。 課外活動だけの仲間、友達未満の繋がり。 それだけ…ただ、それだけだと…ずっと思ってた。 でも…今、こうして目の前に私を友達と呼んでくれる人達がいる。 霞に隠れていた…もやもやしていた部分が見えてきた…。 「ほーせー♪」 「え…っ!」 憲和の声に顔を上げた途端、強烈な光が目に飛び込んできた。 「憲和…」 「へへー…法正の泣き顔ゲット♪」 「私の泣き顔って…あ…」 慌てて自分の頬に触れると、濡れた感触が伝わってくる。 「さぁて、法正の泣き顔も手に入れた事だし…行きますか!」 憲和が私の肩をぐいっと引き寄せ、そのまま歩き始めた。 「け、憲和〜…だから、近すぎるってば…」 「恥ずかしがる事ないじゃん」 悪戯っぽく笑う憲和。 「仲がいいですね」 「…喧嘩する程仲が良いと言いますし」 孫乾とビ竺もくすくすと微笑みながら、私達の後ろから付いて来る。 「全く…」 私は…無意識に自分の顔が綻んでいた事に気付いてはいなかった。 私達が校舎から出ると…そこには見た事もないような綺麗な光景が広がっていた。 「うわ…」 「綺麗…」 憲和と孫乾が感嘆の声を漏らす。 朝はまだ蕾だった桜が…今は大きく花を開き、文字通り咲き乱れていたのだ。 「早咲きの…桜ですか…」 ビ竺はそんな事を呟き、風に吹かれてきた桜の花弁を手に取る。 「私達の門出には…最高の祝福…だと思いませんか?」 にこりと微笑むビ竺。 その目尻には涙が滲んでいた。 私も目頭が熱くなるのを感じている。 孫乾は…溢れてるし、憲和は…潤んでる。 「卒業は別れじゃない…また…いつでも会えます」 「そうだね…。会えなくなるわけじゃないもんな」 ビ竺の言葉に感慨深く答える憲和。 答えてはいないが、私も孫乾もきっと憲和と同じ事を思ってるだろう。 と、憲和が何かに気が付いた。 「おっ、あそこにいるのは…玄徳とその妹達じゃん。合流しよっか?」 憲和の指差す先には…元総代達の姿が見えた。 私と…孫乾、ビ竺は顔を見合わせる。 「行こう!」 三人の声が重なった。 憲和はその答えに微笑みを返すと、そのまま駆け出した。 「私達も行こっ」 孫乾とビ竺は並んで走り始める。 私は…ゆらりひらりと舞う桜の流れを見上げていた。 「こんなにも心が軽くなったのは初めてだよ…ずっと、ずっと続いてほしい…」 心の中にあった本当の気持ちが素直に言葉に出来た。 もう少し早く気付いていれば良かったなぁ…。 ちょっと後悔。 「法正〜! 早くおいでよ〜!」 遠くの方から憲和が私を急かす。 「分かってる! そこで待っててよ!」 私は笑顔を向けると、親友のいる場所へと駆け出した。 きっと…心の底から笑っていられてるよね?
215:惟新 2003/03/04(火) 10:36 >岡本様 >広宗のG・P・M むむっ! 相変わらず圧倒させられる作品! こりゃガンパレやっときゃよかったなぁ… それなりに楽しんで読ませていただきましたが、それだけに何か悔しい(^_^;) >雪月華 >烏丸征伐反省会 あ、こんな所にも簡雍が(^_^;) ド迫力戦闘描写は岡本様に続く超新星のヨカーン! 今後とも大期待〜! >懊悩 ALSといえば、ホーキング博士も若くしてこの病にかかられたんでしたね… ああ、郭嘉…(ノД`) >教授様 >簡擁と張飛 〜こんな日常もたまにはね〜 うおっコミカルだっ! スカートめくられて慌てる張飛カワ(・∀・)イイ! >卒業 〜序章 曹操編〜 郭嘉がコンボでキタヨ…(ノД`) そうです。みんなで卒業するんですよ、ね… >卒業 〜法正の涙〜 ああ、ヨカタね法正…(T▽T) それにしても教授様、苦手とか言いながらシリアスでも良いものを書かれているじゃないですか! >アサハル様 郭嘉。・゚・(ノД`)・゚・。 近い終末を知りつつ、最期まで自分らしくあり続けた彼女。 そこには多くの苦悩や、恐怖があったことでしょう。 それを見事に一枚の絵で表現なされましたね… 余談ですが、自分の前途に絶望して地下鉄に火を放ち、多くの人を巻き添えに自殺を図る人だっているわけで。 願わくば、郭嘉のような、絶望に打ち克つ強さを… >彩鳳様 >雪道の交錯 三姉妹の心温まる冬の光景。 いいですな〜ほんわかぷーですよ〜 そしてここにも湧いて出た簡雍! もうすっかり簡雍ブームですな(^_^;) 続きが楽しみ…
216:雪月華 2003/03/05(水) 00:45 長湖部夏季強化合宿。 孫堅が提唱し、孫策が受けついだ、夏休み開始から1週間にわたって行われる長湖部名物行事であり、そのハードさは孫権が三代目部長に就任した今も衰えていない。そのスケジュールは、 6:00 起床・洗顔・身支度 6:30〜7:30 長湖南岸(10km)早朝ジョギング 7:30〜8:10 朝食&宿舎の掃除 8:15〜10:00 全員での基礎体力づくり (10分休憩) 10:10〜12:00 〃 12:00〜13:00 昼食・ミーティング 13:00〜15:00 各種目ごと練習 (10分休憩) 15:10〜17:30 〃 17:30〜18:00 全員での柔軟体操 18:00〜 自由時間(外食可) 21:00 門限(違反者は翌日、練習量2倍のペナルティが課せられる) 23:00 消灯 となる。 生徒会が荊州校区を席巻し、赤壁島の決戦が差し迫った今、イメチェンに成功した周瑜が部長の孫権の全権代理として総指揮にあたっている。脱落者、不適応者は容赦なく退部となるため、黄蓋ら3年生からは不評を買っていたが、その効果については異論のはさみようがなく、いわば実績が不満を押さえ込んでいた形であった。 …23:30 消灯時間は過ぎているが、いまだ眠る気配の無い一室がある。消灯といっても、3年生が一度各部屋を見回るだけで、それさえやり過ごせば後は結構自由な時間が持てる。 灯りを消し、なにやらボソボソと語り合う数人の気配。 魯粛、甘寧、凌統、呂蒙、蒋欽の長湖部問題児軍団に加え、陸遜、朱桓ら数名の1年生の姿も確認できる。話の内容は、怪談のようだ。修学旅行、合宿など、若い者同士の一夜の定番である。 「…つまりさ、いないはずの5人目がいたのよ。」 懐中電灯で顔を下から照らした魯粛が話を締めくくる。話をする者には懐中電灯が渡され、場を演出するために使用される。 「つまんねぇな。どっかで聞いたぜ。その話。」 「黙って聞きなよ。」 洗いざらしの金髪を無造作にタオルで包んだいわゆるタオラー状態の甘寧に凌統がつっこむ。 この二人、仲は悪いくせに不思議と隣り合って座ってしまう。教室でも、食堂でも、練習でもシャワー室でも。 「次は、えーと、一年生の君。」 「はいっ!任せてください、とっておきがあるんですから!」 仕切り役の呂蒙に指名を受けたのは朱桓休穆。部長の孫権の同級生で、スポーツ万能で学業成績もいい。性格も思い切りがよく、長湖部期待の新星の一人である。 「これは、人に聞いた話じゃなくて私が実際に体験したことなんです…」 「私が小学校4年の頃、母が風邪をこじらせて入院したので父はお手伝いさんを雇ったんです。Aさん、としておきますね。外国の方らしいのですが、日本語が堪能で、仕事も速く、正確なので父はとても気に入ってたんです。」 「外国っていうと、東南アジアあたりか?」 「タイ人だとAさんは言っていましたが…なぜか、うちの飼い犬がやたらとAさんに吠え付いたんです。今までは絶対に他人に吠えたりしなかったのに。」 「へぇ…」 「雇って1週間たったあたりで、…見てしまったんです。」 「何を?」 「あの日の夜、2時ごろでした。私はトイレに行こうと思って、2階の自分の部屋から1階に降りていったんです。そこで信じられないものを見てしまったのです。」 座が静まり返る。 「Aさんがいました。ただし首だけで。首から下が無くて、向こう側の洗面台が見えたんです!」 朱桓が懐中電灯をつけて顔を下から照らした。 その顔が3m近く上、天井近くに見えた! 「うわあぁーーー!!!」 どすん、ばたん、ゴキッ! 電灯がつけられた。 朱桓は積み重ねた布団の上に立っていただけだった。 面白そうな顔をしている魯粛。あまり動じていない蒋欽。後ろ手をついて仰け反っている呂蒙。微妙な表情をしている甘寧。そして…なぜか甘寧の首にしっかりと抱きついている凌統。一番驚いたのは間違いなく彼女である。 「ほ、ほんとの話、それ?」 「はい。信じてもらえないかもしれませんが、本当です。あの後、Aさんの部屋へ逃げていったので、追いかけたら、部屋の中でAさんが泣いていました。あのあと、すぐ辞めちゃいましたっけ。」 「追いかけたって…あんたは凄いわ。」 「……凌統。」 「なに?」 「…いつまで抱きついてるつもりだ?」 「あっ…」 慌てて凌統が離れる。 「俺様にはそんな趣味は無いんだが…」 「う、うるさい!物のはずみよ!」 「ところで陸遜は…あ」 呂蒙の隣に座っていた陸遜が目を回して仰向けに倒れている。暗闇の混乱の中、仰け反った呂蒙のエルボーをまともに顎に受けたらしい。 無防備に気絶している陸遜を眺めていた魯粛にふと、悪戯っぽい笑みが浮かんだ。計画を他の者に耳打ちする。 やがて話がまとまり、甘寧が頭側を、魯粛が足を持って部屋からいずこかへ運び出していった。 …視界のエメラルド色のもやが晴れてくる。起きたら顔を洗って、歯を磨いて、寝床を整理したら着替えて食堂に。今日はトーストと紅茶のセット。残っていたらベーコンエッグも… 陸遜が目を開けるとそこには見知った、しかしそこにいるはずの無い人の寝顔があった。意識の混乱が収まり、その人物が周瑜であることに気がつくと、慌てて跳ね起きる。つられて周瑜も目を覚ました。 「な、なに、何?なんで!?」 「ちょ、ちょっと陸遜!?どうして私の布団に!?」 「ち、違います!違います!!違いますっ!!!」 何が違うのかわからないがとにかく否定する。董襲、陳武、徐盛らが起きだしてきた。絶体絶命のピンチである。昨夜、魯粛の提案で集まり、怪談話をしたところまでは覚えているが、そこから先の記憶が無い。なにやら顎のあたりが痛むが…。 廊下のほうで複数の笑い声が聞こえ、逃げるように足音が遠ざかっていった。 「あ!まさか…まてー!」 陸遜が慌てて部屋を飛び出してゆく。部屋の隅では魯粛が狸寝入りで笑いを堪えるのに苦労していた。 …夏休みの間、陸遜は周瑜に口を聞いてもらえなかったらしい。 ーーーーーーーーーーーーー ちょっと季節外れですが、張角SS推敲の合間に息抜きのつもりで書いたものです。 実際の朱桓もこの妖怪に遭遇しているらしいです…。 最後の悪戯は、高校時代、実際に修学旅行で悪友数人と行ったもので、真っ先に寝た者を隣の部屋の誰かの布団に添い寝させるという荒技です。異性の布団だとシャレにならないことになるので、同性の布団に添い寝させ、そのまま私達も部屋に戻りました。…翌朝、隣の部屋から絶叫が(^^;)…徹底したアリバイ工作&黙秘で事件を迷宮入りさせましたが、今、この場で真相を明かします。
217:アサハル 2003/03/05(水) 01:07 >教授様 ・゚・(ノД`)・゚・法正たん…!! 確かに彼女、自分から友達だと思ってたのって張松ぐらいなイメージが… 簡雍の相変わらずっぷりも、またいつもと違う感じでいい味出しっぷり… >雪月華様 !!わ、私もやりましたそれ!つかやられた経験アリ…!! 陸遜、いろんな意味でご愁傷様…。 帰宅部に簡雍がいるなら長湖部には魯粛って感じですねー。笑いました! てゆーか朝イチで10kmって…そりゃ脱落者も出るわ…
218:★ぐっこ 2003/03/05(水) 23:31 >教授様 皮肉にも、卒業をむかえる日になって初めて友情なるものを知って しまった法正たん…。私意と利害と劉備への妙な忠誠心だけで波乱に 満ちた学園生活を送っていた法正たん。卒業した後、はじめて彼女の 学生生活がはじまるのかな…。案外女子大とかでは耳年増な純情な女の子に なるタイプだったり… >雪月花様 激しく笑いましたが、何と言ってもツボは甘凌ペア。これ。 おそらく一方的に突っかかる事が多いと思われる凌統たん… 魯粛も悪戯好きなんですねえ…(;´Д`)ハァハァ…ていうか周瑜 その他の面々が「小うるさい上役」になって、下の面々が のびのび遊んでる長湖部の雰囲気が好きだなあ…
219:★ぐっこ 2003/03/06(木) 00:32 [sage] >惟新様、てかALL ガンパレードマーチは、親を売ってでも入手・プレイするべきです。
220:教授 2003/03/06(木) 01:46 ■■ 卒業 〜孫策と周瑜〜 ■■ 「…周瑜〜」 卒業式の朝。 面会時間にもなってない病院の一室。 カーテンの閉まったその窓を外から叩き親友の名前を呼ぶ孫策。 下では梯子を懸命に支える甘寧と魯粛がいた。 「周瑜…寝てるの…?」 再度、窓を叩く。 あまり強く叩くと看護婦や医師に気付かれる可能性があるので、なるべく弱く。 しかし、この状況。かなり目だって仕方がないのだが。 「…周瑜」 寂しそうに呟く孫策。 周瑜――かつて長湖部を支え、かの赤壁島の決戦で圧倒的不利な状況を引っ繰り返して勝利に導いた名参謀である。 そして、孫策の親友でもあった。 赤壁島の決戦の後、周瑜は矢傷を負い…それが元で引退を余儀なくされてしまう。 引退してからの周瑜は傷の影響か、病気を併発し入退院を繰り返していた。 卒業式の当日、その日も周瑜は病院のベッドの上だった。 孫策はどうしても彼女と一緒に卒業したかった。 それが故に無理と危険を冒して、このような行動を取ったのだった。 「周瑜…一緒に卒業したかったな…」 諦めて梯子を降りようとした時だった。 「孫策…?」 病室のカーテンが開き、周瑜が顔を出したのだ。 「周瑜!」 「ち、ちょっと孫策! 何してるのよ!」 「見れば分かるだろ!」 「分からないわよ!」 窓から顔を覗かせる周瑜。 その顔は少しやつれているように見える。 腕や脚だけではなく全身が痩せていた。 学園一の美女と呼ばれていた頃に比べれば大分衰えてはいる。 それでも、美女と呼ぶには差し障りはなかった。 「こんな押し問答はどーでもいい。周瑜、今日は卒業式だ」 「知ってるわよ。…私は出られないけど」 「出るんだよ! 私と一緒に…卒業するんだ!」 毅然とした強い眼差しを向ける孫策。 「駄目だよ…私…お医者様に外出禁止って言われてるもの…」 その目を受ける周瑜は、ゆっくりと首を横に振り、そう呟いた。 「駄目なもんあるか! 駄目だったら抜け出せばいい! だから…迎えに来たんだ!」 「孫策…」 「早く!」 孫策はさっと自分の利き手を周瑜に差し出す。 信頼している相手だからこそ、利き手を預けるのだ。 その事は周瑜自身が一番よく理解していた。 「孫策…行こう!」 周瑜は笑顔を見せると孫策の手を取り、身を乗り出す。 「しっかり掴まってろよ…」 「分かってる…って! わわっ!」 注意深く梯子を降りようとした孫策と周瑜。 しかし、予期せぬアクシデントが起こったのだ。 強烈な横風が二人を襲う。 俗に言う春一番という強風だ。 間一髪、孫策は梯子に掴んで難を逃れたが、周瑜はそうはいかなかった。 長い入院生活で衰えた体には自分を支えられるだけの体力はなかったのだ。 周瑜の手が梯子から離れる―― 「周瑜!」 咄嗟に宙に舞う彼女を捕まえる孫策。 しかし…この行動が裏目に出た。 周瑜の体を捕らえるのに孫策自身が両手を梯子から離してしまったのだ。 「ヤバ…」 無我夢中になっていた。 二人の体が引力に従い地面に落下していく。 そして地面に打ち付けられる…はずだった。 不思議と衝撃が走らなかった。 ぎゅっと閉じた目を開くと澄みきった青い空が孫策の目に映る。 「先代…周瑜さん…無事ですか…?」 その声は下から聞こえてきた。 「甘寧…? …甘寧!?」 孫策は周瑜を抱えたまま起き上がり、下にいるその姿を確認する。 「へへ…無事で良かったですよ」 彼女の心配を余所に甘寧が埃を払いながら立ち上がる。 「怪我は! 怪我はない!?」 「大丈夫です。丈夫な事が俺の取り柄なんスから」 笑顔で答える甘寧。 その元気そうな様子に安堵の息を漏らす孫策。 「孫策…ごめんなさい…」 丁度、お姫様抱っこのような状態になっている周瑜。 彼女は今にも泣き出しそうな表情をしていた。 「気にすんなって! それよりも…早くここからずらからねーと…」 屈託のない笑みを浮かべて周瑜を嗜めると、ちらちらと周りの様子を窺い始める。 「孫策…?」 「結構、大きな音だったからな…。気付かれでもしたら厄介だよ」 そう呟くと、孫策は甘寧と魯粛の方に向き直る。 「それじゃ撤収!」 「了解!」 元気良く返事をすると、三人は疾風の如き速さで駆け出す。 「そ、孫策! 自分で走れる!」 「無理言ってんな! こんな軽くなっちまった体で…走れるもんか!」 抗議する周瑜に言い放つ孫策。 その言葉と同時に彼女の目から涙が溢れた。 「ごめん…私が不甲斐なかった所為で…いらない迷惑をたくさん掛けて…挙句の果てにはこんな目にも遭わせちまって」 「…貴方の所為じゃない。だから…泣かないで…」 嗜める周瑜の瞳にも涙が浮かぶ。 互いに信頼し合い、そして誰よりも気遣い合った。 以心伝心――二人の心は誰よりも…どんな人にも負ける事はない。 程なくして三人は止めてあったバイクに飛び乗る。 「それじゃ、先代! 俺等がケツ持ちしますので!」 「頼んだよ!」 ケツ持ちを買って出た甘寧(その後ろに魯粛)にこの場を託す。 「今度は飛ばされないように…しっかり掴まってろよ!」 「…今度は…離さない…絶対に!」 孫策は力強い周瑜の言葉に思わず笑みを浮かべる。 「行くよ!」 孫策は勢い良くアクセルを全開にする。 そして…朝霧の中、二人を乗せたバイクは走り出した…。 二人の未来を差す光に向けて――
221:彩鳳 2003/03/06(木) 02:29 >教授様 〜法正の涙〜より 良いですね。やはり卒業式は・・・私も一年前は高校の卒業式でした。 一応後輩から花束は貰いましたが、花吹雪はありませんでした。校門の前は 桜並木になっているのですけどね・・・(−−; 〜孫策と周瑜〜 ああ、やっぱ孫策は格好良いですね〜(^^) 孫策に限らず、ヤンキー揃いの長湖部は みんな格好良いんですけど。 しかし、ヤンキー揃いの中だと、周瑜はさぞかし目立つ事だろうと 今更ながら気付きました(^^; >雪月華様 やっぱ会談話は合宿のお約束ですね(^^; 私は高校時代、天文部の合宿の時に墓地の隣で天体観測と言う 今思うととんでも罰当たりな事もやってましたが、私が墓地のベンチで寝ていたら 誰も気付かなくて行方不明扱いされました(^^;;; しかし陸遜も気の毒に・・・ただし、見ている分には面白いのですが・・・(^^; 凌統は凌統で、甘寧に軽くあしらわれそうなイメージがあります(^^; どうあれ、個性派揃いの長湖部は、何をやっても盛り上がりそうですね。
222:彩鳳 2003/03/06(木) 03:09 長々と掛かってしまいましたが、SSの第三部が完成致しました。 長くなったので二つに分割します。 ■ 一月の花時雨 ■ 第三部 ―大食堂の臨時会合― 時計の針は十二時半を指している。 この頃から学園の各クラスとも午前の授業が終了するようになり、学園は 昼休みに入り始めた。 時間が時間だけに、お腹を空かせた生徒たちは先を争う様にして学食や売店へと 足を向ける。 廊下を歩く女生徒達の中には、彼女らの姿もあった。 「あ〜ぁ、もうお腹減ったよ〜ぅ。元譲は何にする?」 「カレーか麺類かな。今日みたいな寒い日はそういうのに限るよ。」 「え゛〜〜!? またカレー!? 昨日食べたばっかじゃん〜。」 「ならラーメンだな。」 速い。即答だ。どうやら彼女の中で、既にメニューは決まってしまっているようだ。 「ほ〜んと、元譲はいい加減だね〜。いつか体壊すよ?」 「いい加減って・・・単純明解と言って欲しいんだけどね。人間時には単純でないと。孟徳も 心当たりがあるんじゃない?。」 「う゛〜」と不機嫌な声を上げていた曹操だったが、急に挑発的な目つきになる。その顔には 妙な笑みまで浮かべていた。 「元譲〜?麺類は太るんだからね〜。消化が速いから太らないと思ったら大間違いだよ〜。」 これは事実だ。麺類はなまじ消化が速いだけに、無意識の内に沢山食べてしまうものだ。 何より、麺を主に構成しているのは澱粉(デンプン)、即ち炭水化物だ。 炭水化物は体内で糖分に変わり、糖分は脂肪となって熱になる。消化が速いと言うことは、 血糖値が急速に上がるということでもあり、同じ炭水化物でも消化が緩やかな米飯やパン類とは 大きい差となるのである。 「そうなのか?でもまぁ、食べた分は消費してるし問題無いだろ・・・。」 まぁ、夏侯惇の得意な剣道の様に、激しく動く運動ではカロリーの消費量は人並み以上だ。 増してや今は冬。カロリーの消費量が当然増大する。冬の朝、朝食を摂らないで登校・出勤し、 寒さに震えた経験がある人なら、季節の変化とカロリー消費量の関係はピンと来るのでは ないだろうか? かく言う私も麺類は好きなので、他人の事をどうこう言える立場ではないが、余り食べ過ぎると 塩分抜きでも危ないという事は言わせて頂きたい。もっとも、消化が早いので急ぎの用の時には 米飯よりも麺類の方が良いのもまた事実である。赤穂浪士が討ち入り直前に食べたのは 蕎麦だったと言われているくらいだ。 話を戻すが、夏侯惇の場合、本人が言うように摂取量と消費量の釣り合いが保たれているので、 特に問題にはならないのだ。 「元譲なら心配ないと思うけどね。けど気を付けてよ?私達はもう、学校中から注目されてる 立場なんだから。」 「まあ、確かに目立ってるね。余り目立つのは好きじゃないんだけど・・・仕方ないか。」 そうこうしている内に、二人の眼前に冀州校区の学生食堂が見えて来る。 「うわ〜込んでるね〜。」 「今日は凄いな・・・どうしたんだ?」 多数の校区に無数の校舎が林立する蒼天学園内でも、[業β]棟の学食は最大規模の キャパシティ (利用者収容能力)を誇っている。その学食が、今日は大勢の生徒で 溢れかえっていた。 思わず顔をしかめる二人。この日は学食に呼び出した人間が多々居るので、早いうちに 並びたかったのだ。 「今日は雪だからね〜。まあこういう事もあるって事。」 普段ならば、外の椅子やベンチを利用する人が多いのだが、今日は生憎の大雪である。 いつもより込み具合が激しくなるのも仕方のない事であろう。だが、雪が降るような寒い日は、 学食利用者の行動にもう一つのパターンが現れてくるものだ。 「参ったな・・・考える事はみんな一緒か・・・。」 廊下で夏侯惇は「寒い日はカレーか麺類・・・」と言っていたが、これは並んでいる者の大半が 同じだった様だ。トレーを持った生徒たちは、カレー類と麺類のコーナーに集中して並んでいる。 思わず夏侯惇も苦笑してしまう。 「孟徳、空いている方に行く?私達も時間があるわけじゃないし・・・。」 「うん、子孝たちが待ってるから。麺もダメ、カレーもダメ、となると―――」 二人は同時に周囲を見渡し――― 「―――あそこ(にしよ?)しかないか。」 ―――同時に口を開いていた。 一方、学食の上級幹部専用席では、曹操に呼び出された面子――曹仁・曹洪・李典・楽進が 既に集まっている。 「あぁ・・・ったくもう、今日は何でこんなに混んでるのよ!?」 「知らねぇよ。私らは座れてるからまだましだって。」 「ねぇ文謙?私らが呼ばれたのってやっぱり・・・」 「并州でモタついているから・・・に決まってるじゃない。他にどんな理由が?」 それぞれが、各自の話題で花を咲かせる中、呼び出された少女がやって来る。 「おっ、奉公じゃねぇか!お前も呼び出しか?」 「まぁね。けど、呼び出しだ本人がまだ来ていない様だな?」 郭嘉の言葉に、皆の視線が学食のカウンターに注がれる。だが、長々と連なる長蛇の列の中に 曹操らの姿を見つけることは出来なかった。 「あれじゃぁ会長もご苦労されてますよねぇ・・・まったく・・・」 嘆息を漏らす李典に続き、今度は楽進が口を開いた。 「ホント嫌になるよね〜。せっかく幹部専用席があるんだから、専用のカウンターも造って 欲しいよね〜。」 「いやいや文謙さん、そりゃまずいぜ。何せ一部じゃ『専用席は逆差別だ』なんて声もあるからな。 まぁ、便利なのは確かなんだけど、『あの席が空いてれば・・・』って思う連中が居るんだよ。 そこでだ、専用のカウンターを造ったら連中はどう思うか? 私らだって下っ端からいまのポスト(役職)まで来たわけだし、あんたも連中の気持ちは 分かるだろう?」 席に座りながら、郭嘉が口を開く。作戦会議以外ではあまり長話はしない彼女だけに、 皆の視線が集まる。 「ま、あまり深く考える事はないんだけどさ、この学園じゃ一般生徒の不満がきっかけで 大騒ぎになった例はいくらでもあるだろう?最近だと黄巾の連中とか。 だから、あまり生徒連中の不満を煽るような事は止めたほうがいいぜ。要するに生徒会と 生徒の間の信頼関係に気を配らないといけない、って事なんだけどな。」 楽進が「そうね・・・奉公の言う通りだね。」と返事を返そうとしたが、それより先に――― 「さ〜っすがは奉公!!うんうん、よーく分かってるじゃん!! 文謙も謙虚な気持ちを 持たなきゃダメだよ!」 「いや、別にそこまで真摯に受けとめなくても・・・で、いつから聞いてたんだ、会長サンよ?」 「う〜んと『不満がきっかけで』の辺りから。」 ―――楽進よりも先に、いつの間にやって来たものやらトレーを抱えた曹操が口を開いていた。 主催者もやって来たので、各自が自分の皿をつつきながらの臨時ミーティングが始まった。 だが、その内容は最初から脱線してしまう。それも主催者の手によって。 「それにしても珍しいよね〜。奉公があんなに長話するなんて。」 「そうか? アレがそんなに長いかねぇ?」 「うん。奉公はそう感じないのかも知れないけど、十分長いと思うよ。」 これには曹操のみならず、全員が頷いて見せる。だが、郭嘉は別段気を悪くした様子は無く、 「そうか・・・オレとしては、自分の意見は言える時に言っておきたいんでね。だから話が 長くなる時もあるんだろうな。 で、それはさて置き何の為にオレらを呼んだんだ?メンツからして大体の予想は付くけど・・・ 放課後までに伝えなきゃならないほど重要でもないと思うぜ。今日はあのドカ雪だから、戦いは 無理だろうし。」 返事のついでにミーティングの軌道修正を仕掛けて来た。これには逆に曹操の方が 気を悪くした様で、口を尖らせる。 「も〜奉公もつれないね〜。ま、いいけどさ・・・。まずは曼成と文謙?」 「「はいっ!」」 「高幹との戦いの件だけど、苦戦してるんでしょ? 長引く様だったら私と子孝が加勢するけど、 現場の指揮官としての状況報告を聞かせてくれない?」 「分かりました・・・」
223:彩鳳 2003/03/06(木) 03:10 并州校区は学園北部のに位置しており、劉備の新野棟並みに辺鄙な校区である。袁紹が華北を 制した際に高幹が校区総代に就任し、それ以来彼女が校区を管理している。 前年の年末に南皮棟の袁譚を下し、冀州を制した曹操は、年度の始めから李典と学進を派遣して 并州校区の攻略に着手した。 高幹と生徒会の戦力差は大きい。しかし、高幹には強力な切り札が残されていた。 その切り札こそ「壺関ロック・ガーデン」(Rock garden=岩が主役の庭園・築山)である。 岩山で構成されたこの自然公園は登山同好会の上級練習コースとしても使用されており、 屈強な要塞としての高い評価を得ている。高幹はこの公園を決戦場に選択し、地形を駆使しての 防衛戦を目論んだのである。 高幹の判断は正しかった。狭く急な道を登ってくる生徒会の大部隊は、進撃ルートを制限されるが 故に用兵家のタブーである戦力の分散・逐次投入を半ば強制されたのである。 生徒会勢は狭い道の中でダンゴ状態となり、味方同士で立ち往生しているところへ高幹の手勢から 容赦の無い十字砲火を浴びせかけられた。 地形が地形だけに、生徒会勢は兵力の優位を生かした車懸かり(連続波状攻撃)戦法や 機動包囲戦法を取る事が出来ない。このため生徒会勢の連日の攻撃はワンパターン化してしまい、 生徒会の手勢は次々と倒れた。 「ロック・ガーデン」はその前評判を裏切らず、未だに生徒会勢の攻勢を跳ね返し続けている。 生徒会側も何とかしようと打開策を考えてはいたのだが、その答えはまだ出てきてはいなかった。 「―――と言う訳で、残念ですが并州攻略の目処は今のところ立っておりません。」 半ば予想された報告ではあったが、どうしても皆の口から溜息が出てしまう。重い空気の中、曹操が 口を開いた。 「流石は壺関と言うところね。打開策は考えているけど・・・。子孝?壺関では薔苦烈痛弾のみんなに 頑張ってもらうから、そのつもりでいてね。この雪だから今日は無理だけど、雪が消えたら仕掛けるよ。」 「―――っし!待ってました!! それで、何をすれば良いんだ?」 曹操が考えていたのは、薔苦烈痛弾の面々による少数精鋭での奇襲作戦だ。先にも述べたが 「ロック・ガーデン」は大人数での戦闘には全く不向きな地形である。ならば、戦闘能力の高い者を 少数差し向けたほうが却ってやりやすいのではないか?と考えたのである。 口には出さないが、すでに南の荊州・揚州校区の動向に目を向け始めている曹操としては、 ここで時間を取られるわけにはいかない。春休みまでに北方を制し、春休みを南方(特に荊州校区) 制圧のための準備期間に充てたいのが曹操の本音なのだ。 「要するに殴り込みか! ・・・上等だ・・・!!」 曹仁の身体から、心なしか激しいものが発せられる。その“気”を受けとめながら、曹操は次々と 指示を出す。 「曼成と文謙はしばらく休みね。薔苦烈痛弾の皆が動く時は陽動で動いてもらうけど、こっちからは 仕掛けなくて良いよ。 それから元譲は、南の抑えをお願いね。劉表や長湖部が動くとは考えにくいけど、元譲がいるなら 向こうから仕掛けて来る事は無いと思うから。あ、もちろんだけど北の方が片付くまでは仕掛けちゃ 駄目だよ。」 「「分かりました。」」 「了解。任せてもらう。」 「・・・あの〜・・・私は何をするの?さっきから呼ばれてないけど・・・。」 口を開いたのは、最後まで呼ばれなかった曹洪だ。参謀の郭嘉もまだ呼ばれていないので (最後に呼ばれるからには、きっと大事な仕事を・・・) と半ば覚悟していたのだ。が、それに反して曹操の言葉は彼女の全く予想しないものであった。 「あっ、ごめ〜ん。子廉の仕事は大事だよ。并州と幽州を取ったら祝勝会を―――」 「ゲぇッ!!!」 曹洪の顔が一気に青くなる。そして、彼女に寄せられる同情の眼差し。 「何よ〜『ゲッ』って。―――祝勝会をやる予定だから、会計係として頑張ってもらうってだけなのに〜。」 「はぁ・・・新年会の残務処理が終わったばかりなのに・・・。」 ゲンナリする曹洪。一方、それを見ていた夏侯惇や李典の脳裏には、書類の山と格闘する曹洪の 壮絶な姿が思い出されていた。 冬休み期間中はクリスマス会や忘年会、そして新年会と大きなイベントが連続する。無尽蔵に等しい 資金力を持つ蒼天学園の生徒会ともなれば、その支出は半端ではない。 増してや、曹操はこういう時はド派手に金を掛けるのだ。 盛大に行われる大パーティ。そして、パーティにつぎ込んだ金額に比例して増える書類と会計係の仕事。 冬休みが終わってから一気に寄せられてきた書類の山は、さながら霊峰・泰山の様だった。 書類の山の麓では、曹洪が印を傍らに置きながら、必死の形相でペンを走らせている。 寝不足気味で赤くなった目、目の下の隈、そして沢山並んだ栄養ドリンクのビン。 年頃の女子高生のあるべき姿でない事は、誰にも分かるであろう。 「けどさ、あの時は時間も掛かったけど、どうにかなったでしょ?今回は一回だけだからそんな 気にしなくて良いよ。」 「はは・・・その『一回』が問題なのよ・・・その『一回』が。」 「じゃあ会長、資金調達の方はオレに任せてもらうけど、構わないよな?」 「うん、そっちは奉公にお任せするから、どんどん稼いじゃってね!」 「ああ、今度は500円から頑張ってみるよ。どこまで稼げるか・・・オレの腕の振るいどころだ・・・!!」 半ば放心状態の曹洪を脇に見ながら、郭嘉と曹操が言葉を交わす。思いっきり不謹慎な会話だが、 この生徒会が公認しているので特に問題は無い。 「500円って、お前本気か?0が一つ足りないんじゃないか?」 「いや、奉公さんの事です。多分なんだかんだで大儲け・・・」 「なんと言うのか・・・よくやるよ・・・」 いつの間にか、ミーティングはお喋りへと変わってしまった。しかし、誰もそんな事を咎めはしない。 もう先に言うべきことは言ってしまったのだから。 楽しげに話すその姿は、一般生徒たちのそれと何の変わりも無い。 身も蓋も無く語り合う少女達の声は、他の生徒たちの声と重なり合い・・・喧騒となって 広い学食を満たしてゆく・・・。 時間は午後の一時を回ったばかり。 まだしばらくは、この喧騒が続きそうな気配であった。 ―第三部 END― ■作者後記■ すみませぬ。思ったよりも長くなりました。今のところ、一部と二部を合わせて26kbだったのですが、三部はそれ自体で27kbに達しました。ちょっと余計な話が多かったかも知れません。 第四部では、いよいよお待ちかね、放課後編となりますので、どうか気長にお付き合い下さい (m‐‐m) あ、ここだけの話、壺関の攻防戦は信州上田城の真田昌幸の戦い方を参考にしております。 (多分気付かれた方も多いのではと・・・汗)
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