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222:彩鳳 2003/03/06(木) 03:09 長々と掛かってしまいましたが、SSの第三部が完成致しました。 長くなったので二つに分割します。 ■ 一月の花時雨 ■ 第三部 ―大食堂の臨時会合― 時計の針は十二時半を指している。 この頃から学園の各クラスとも午前の授業が終了するようになり、学園は 昼休みに入り始めた。 時間が時間だけに、お腹を空かせた生徒たちは先を争う様にして学食や売店へと 足を向ける。 廊下を歩く女生徒達の中には、彼女らの姿もあった。 「あ〜ぁ、もうお腹減ったよ〜ぅ。元譲は何にする?」 「カレーか麺類かな。今日みたいな寒い日はそういうのに限るよ。」 「え゛〜〜!? またカレー!? 昨日食べたばっかじゃん〜。」 「ならラーメンだな。」 速い。即答だ。どうやら彼女の中で、既にメニューは決まってしまっているようだ。 「ほ〜んと、元譲はいい加減だね〜。いつか体壊すよ?」 「いい加減って・・・単純明解と言って欲しいんだけどね。人間時には単純でないと。孟徳も 心当たりがあるんじゃない?。」 「う゛〜」と不機嫌な声を上げていた曹操だったが、急に挑発的な目つきになる。その顔には 妙な笑みまで浮かべていた。 「元譲〜?麺類は太るんだからね〜。消化が速いから太らないと思ったら大間違いだよ〜。」 これは事実だ。麺類はなまじ消化が速いだけに、無意識の内に沢山食べてしまうものだ。 何より、麺を主に構成しているのは澱粉(デンプン)、即ち炭水化物だ。 炭水化物は体内で糖分に変わり、糖分は脂肪となって熱になる。消化が速いと言うことは、 血糖値が急速に上がるということでもあり、同じ炭水化物でも消化が緩やかな米飯やパン類とは 大きい差となるのである。 「そうなのか?でもまぁ、食べた分は消費してるし問題無いだろ・・・。」 まぁ、夏侯惇の得意な剣道の様に、激しく動く運動ではカロリーの消費量は人並み以上だ。 増してや今は冬。カロリーの消費量が当然増大する。冬の朝、朝食を摂らないで登校・出勤し、 寒さに震えた経験がある人なら、季節の変化とカロリー消費量の関係はピンと来るのでは ないだろうか? かく言う私も麺類は好きなので、他人の事をどうこう言える立場ではないが、余り食べ過ぎると 塩分抜きでも危ないという事は言わせて頂きたい。もっとも、消化が早いので急ぎの用の時には 米飯よりも麺類の方が良いのもまた事実である。赤穂浪士が討ち入り直前に食べたのは 蕎麦だったと言われているくらいだ。 話を戻すが、夏侯惇の場合、本人が言うように摂取量と消費量の釣り合いが保たれているので、 特に問題にはならないのだ。 「元譲なら心配ないと思うけどね。けど気を付けてよ?私達はもう、学校中から注目されてる 立場なんだから。」 「まあ、確かに目立ってるね。余り目立つのは好きじゃないんだけど・・・仕方ないか。」 そうこうしている内に、二人の眼前に冀州校区の学生食堂が見えて来る。 「うわ〜込んでるね〜。」 「今日は凄いな・・・どうしたんだ?」 多数の校区に無数の校舎が林立する蒼天学園内でも、[業β]棟の学食は最大規模の キャパシティ (利用者収容能力)を誇っている。その学食が、今日は大勢の生徒で 溢れかえっていた。 思わず顔をしかめる二人。この日は学食に呼び出した人間が多々居るので、早いうちに 並びたかったのだ。 「今日は雪だからね〜。まあこういう事もあるって事。」 普段ならば、外の椅子やベンチを利用する人が多いのだが、今日は生憎の大雪である。 いつもより込み具合が激しくなるのも仕方のない事であろう。だが、雪が降るような寒い日は、 学食利用者の行動にもう一つのパターンが現れてくるものだ。 「参ったな・・・考える事はみんな一緒か・・・。」 廊下で夏侯惇は「寒い日はカレーか麺類・・・」と言っていたが、これは並んでいる者の大半が 同じだった様だ。トレーを持った生徒たちは、カレー類と麺類のコーナーに集中して並んでいる。 思わず夏侯惇も苦笑してしまう。 「孟徳、空いている方に行く?私達も時間があるわけじゃないし・・・。」 「うん、子孝たちが待ってるから。麺もダメ、カレーもダメ、となると―――」 二人は同時に周囲を見渡し――― 「―――あそこ(にしよ?)しかないか。」 ―――同時に口を開いていた。 一方、学食の上級幹部専用席では、曹操に呼び出された面子――曹仁・曹洪・李典・楽進が 既に集まっている。 「あぁ・・・ったくもう、今日は何でこんなに混んでるのよ!?」 「知らねぇよ。私らは座れてるからまだましだって。」 「ねぇ文謙?私らが呼ばれたのってやっぱり・・・」 「并州でモタついているから・・・に決まってるじゃない。他にどんな理由が?」 それぞれが、各自の話題で花を咲かせる中、呼び出された少女がやって来る。 「おっ、奉公じゃねぇか!お前も呼び出しか?」 「まぁね。けど、呼び出しだ本人がまだ来ていない様だな?」 郭嘉の言葉に、皆の視線が学食のカウンターに注がれる。だが、長々と連なる長蛇の列の中に 曹操らの姿を見つけることは出来なかった。 「あれじゃぁ会長もご苦労されてますよねぇ・・・まったく・・・」 嘆息を漏らす李典に続き、今度は楽進が口を開いた。 「ホント嫌になるよね〜。せっかく幹部専用席があるんだから、専用のカウンターも造って 欲しいよね〜。」 「いやいや文謙さん、そりゃまずいぜ。何せ一部じゃ『専用席は逆差別だ』なんて声もあるからな。 まぁ、便利なのは確かなんだけど、『あの席が空いてれば・・・』って思う連中が居るんだよ。 そこでだ、専用のカウンターを造ったら連中はどう思うか? 私らだって下っ端からいまのポスト(役職)まで来たわけだし、あんたも連中の気持ちは 分かるだろう?」 席に座りながら、郭嘉が口を開く。作戦会議以外ではあまり長話はしない彼女だけに、 皆の視線が集まる。 「ま、あまり深く考える事はないんだけどさ、この学園じゃ一般生徒の不満がきっかけで 大騒ぎになった例はいくらでもあるだろう?最近だと黄巾の連中とか。 だから、あまり生徒連中の不満を煽るような事は止めたほうがいいぜ。要するに生徒会と 生徒の間の信頼関係に気を配らないといけない、って事なんだけどな。」 楽進が「そうね・・・奉公の言う通りだね。」と返事を返そうとしたが、それより先に――― 「さ〜っすがは奉公!!うんうん、よーく分かってるじゃん!! 文謙も謙虚な気持ちを 持たなきゃダメだよ!」 「いや、別にそこまで真摯に受けとめなくても・・・で、いつから聞いてたんだ、会長サンよ?」 「う〜んと『不満がきっかけで』の辺りから。」 ―――楽進よりも先に、いつの間にやって来たものやらトレーを抱えた曹操が口を開いていた。 主催者もやって来たので、各自が自分の皿をつつきながらの臨時ミーティングが始まった。 だが、その内容は最初から脱線してしまう。それも主催者の手によって。 「それにしても珍しいよね〜。奉公があんなに長話するなんて。」 「そうか? アレがそんなに長いかねぇ?」 「うん。奉公はそう感じないのかも知れないけど、十分長いと思うよ。」 これには曹操のみならず、全員が頷いて見せる。だが、郭嘉は別段気を悪くした様子は無く、 「そうか・・・オレとしては、自分の意見は言える時に言っておきたいんでね。だから話が 長くなる時もあるんだろうな。 で、それはさて置き何の為にオレらを呼んだんだ?メンツからして大体の予想は付くけど・・・ 放課後までに伝えなきゃならないほど重要でもないと思うぜ。今日はあのドカ雪だから、戦いは 無理だろうし。」 返事のついでにミーティングの軌道修正を仕掛けて来た。これには逆に曹操の方が 気を悪くした様で、口を尖らせる。 「も〜奉公もつれないね〜。ま、いいけどさ・・・。まずは曼成と文謙?」 「「はいっ!」」 「高幹との戦いの件だけど、苦戦してるんでしょ? 長引く様だったら私と子孝が加勢するけど、 現場の指揮官としての状況報告を聞かせてくれない?」 「分かりました・・・」
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