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314:★教授 2003/08/03(日) 23:49 ■■ 帰宅部連合夏の陣! 〜第一章〜 ■■ ここは益州校区内にある学生用私設プール。 夏という事もあって利用する生徒は星の数程いる。 ――が、今日に限っては違った。 入り口には『本日貸し切り、ゴメンネ 幹部達、一日だけの夏休み』と書かれた紙が貼られているのだ。 これには一般生徒達も引くしかなかった。…と言うよりも『一日だけ』という文字を見て可愛そうになったのだった。 そして…熱い一日が幕を開けた―― 「やー…夏は泳ぐに限るよなー」 プールサイドに立ち、降り注ぐ陽光に劣らぬ笑顔の張飛。 「さよか。そんでも準備運動はしぃや」 麦藁帽子を片手に劉備が今にも飛び込みそうな張飛を窘める。 「分かってるって。健康には人一倍気を使ってるからなー」 張飛はそう答えて柔軟体操を始めた。 「やれやれ…普段からこう素直に人の言う事聞いてくれたら苦労せんのになぁ」 「仕方ないでしょう、半ば本能で生きてるような所がありますし」 肩を竦める劉備の後ろから諸葛亮が声を掛けてきた。 「上手い事言うやんか…って。それは…何か? 新しいジャンルの開発に成功したんか…?」 「これが私のスタンダードです」 涼やかに白羽扇を口元に当てる諸葛亮。黒のビキニに玉虫色のパレオ、ここまでは普通。しかし、更に白衣を着こなしているのだ。これは劉備でなくとも言葉に疑問詞を付けてしまうだろう。 「総代、中々涼しそうなお姿ですね」 「シチュー。あんたは泳がんのか?」 「私は泳ぐよりもパラソルの下で読書してる方が好きなんですよ」 白のビキニの上からいつものパーカーを着る劉備。そして、これまた白いワンピース姿のビ竺。自称『プチ清純派』と通称『お嬢様』の名にそぐわぬ井出達だ。 「あんたらしいけど…あっちももう少し色気欲しいもんやな」 ちらりと柔軟体操をしている張飛を横目に見る。スクール水着という何ともお約束な姿だが、実によく似合ってたりする。 「関さんも子龍も来れたら良かったのになぁ」 「仕方ないでしょう。関羽殿は荊州棟の守り、趙雲殿にはアトちゃんの看病がありますから」 溜息混じりの劉備に諸葛亮が静かに答える。 ちなみにこのアトちゃん、先日まで元気だったのに今朝になって突然熱を出してしまったのだ。本番に弱いタイプなのかもしれない。 そんな彼女に付きっきりになっているのが趙雲。アトちゃんの一大事とばかりに颯爽と現れて看病を買って出ているのだ。 劉備とビ竺がパラソルと折り畳み式の椅子をセットしていると、黄忠と厳顔が姿を見せた。 黄忠は青ラインの縦縞ビキニ、厳顔は赤ラインの横縞ビキニ。二人ともサンバイザーとサングラスを装備して大人の雰囲気を出している。 「おー…流石やなぁ。大人の魅力が炸裂しとるで、二人とも」 ひゅうと口笛を吹いて感嘆の声を出す劉備。 「大人…まあ、そうでしょうね」 「その辺の子供には負けない自信はありますよ」 サングラスの下から余裕の眼差しを見せる年増二人組。しかし、あんまり誇れる事でもないのだが。 「それじゃ、私達は準備体操してきますね」 そう劉備に告げるとプールサイドで準備運動している張飛の元へ移動した。だが、その時、一筋の稲妻…は言い過ぎだがそれっぽいモノが劉備の横を駆け抜けた。そして―― 「雷同(ライドゥー)キーック!」 「はぶっ!!!!」 どばっしゃぁんっ!!!!!! 厳顔が物凄い勢いでプールに飛びこんだ。厳密には蹴り込まれたのだが。 「厳顔!」 慌てて黄忠が柔軟体操もそこそこにプールへ飛び込む。 プールサイドには一瞬の出来事を呆然と見ていた張飛と、飛び蹴りを叩きこんだ雷同の姿があった。 「やった…遂に完成した! あたいの雷同キックが遂に!」 見事に飛び蹴りが決まった事が余程嬉しかったのだろう。プール際で狂気乱舞する雷同。 だが、喜びもつかの間だった。 突然、水中から伸びてきた手が雷同の足を掴むと、あっという間に彼女をプールへ引きずり込んだ。 「雷同ーっ! テメー、殺す!」 「キャー! イヤー! 悪気はなかったのーっ! 背伸びしたかっただけなのーっ!」 「うるせーっ! こーしてやるっ、こうだっ!」 「やーめーてーっ! 下克上じゃなかったのーっ! 殺さないでーっ!」 「オラオラオラオラオラ!」 「っギャーーーーーっっっっ」 …断末魔の叫び、そして喧騒が止んだ。 厳顔と黄忠がプールから上がってくる。しかし、雷同の姿は見えない。 暫くするとぷかぷかと雷同が水面を漂っているのが見えた。 張飛はこの時の事を後にこう語った。 『ありゃあ…鬼だったね。雷同も自業自得っちゃあそうなんだけど…それ以上にあの二匹の獣を怒らせたってのが間違い。俺、絶対にあの二人を怒らせないようにしようって心に誓ったよ』 ――場所は変わって更衣室。 「なー、法正。それウソ胸?」 「違うわよ! 素よ、素!」 かなり失礼な簡雍に本気で返す法正。黒ビキニとパレオに身を包み、疑惑視された胸を隠す。 「素が一番だって。外観を取り繕うのはサイテーだね」 「う…そ、そうだね」 痛い所を突かれた法正。簡雍はデジカメを首からぶら下げて法正の横を通り過ぎる。 だが、簡雍が何もせずに通りすぎる訳がなかった。 なんと、法正のビキニの上のヒモを引張ったのだ。 「…!! わああっ!!」 咄嗟にビキニが落ちないように手で押さえる法正。 「いただき♪」 簡雍の本日一枚目のシャッターが切られた。法正の怒りのボルテージが最高潮に達した。 「憲和コロスーっ!」 「あははっ、早く直さないと小ぶりの胸が見えちゃうよー」 投げキッスを法正に寄越して簡雍が更衣室を出ていった。 悔しさに握り拳を震わす法正。 「憶えてなさいよーっ!」 どうやら復讐を誓ったようだ。具体的に何をするかは決めてないようだが。 こうして帰宅部の長く熱い一日が幕を開いた。 乙女達の夏は始まったばかりなのだ――
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