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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
392:7th 2003/12/21(日) 16:20 或る夏の暑い日。 「むー………」 蒼天学園の学食。そこに入るなり、何晏 は形の良い眉を顰めて唸った。 暑い。とにかく暑いのだ。 外の気温は既に35度を超している中、あろう事か食堂の冷房が壊れたというのだ。 直射日光は当たらないとはいえ、厨房の熱と大勢の人の熱がこもり、下手をすると外より暑い。 この環境下で食べるものといえば冷たいもの…素麺なんか良いかも。そう思い何晏は長蛇をなしている行列に並ぶ。 「ふっふっふ…なってないわね、何晏」 突然、後ろから聞こえた声に、何晏は振り返る。 「会長、他人の食べるものにケチを付けるのは如何なものかと思うんですけど」 会長と呼ばれた少女は腕をびしぃっ!と突き出し、人差し指で何晏を指さしていた。 彼女の名は曹叡。この学園の生徒の頂点に君臨する蒼天会長、その人である。 「甘い、甘いよ何晏。この暑い中にソーメン?栄養がないし美容に悪い。そして何より、そんなもの食べたって涼しくなんかなんないわよっ!」 夏の風物詩、素麺に対し何て事を。素麺業者の方に失礼だぞ。と何晏は思った。 「では会長は何を食べるおつもりで?まさか煮麺(にゅうめん)なんて言いませんよね」 「うどんよ。それも熱いやつ」 「………はぁ?」 何言ってんだこの女。暑さで頭がイカレたか?と半分茹だった頭で滅茶苦茶失礼な事を考える何晏。 「逆療法ってやつよ。暑い中で熱いものを食べると涼しくなるってアレね。それにソーメンよりうどんの方がカロリー低くて美容に良いのよ。何晏、あなたもうどんにしなさい。私がおごるから。」 おごると言われては是非もない。曹叡は何晏に席取りをさせ、人もまばらなうどんコーナーへと駆けていった。 ………やられた。そう思わざるを得なかった。 目の前には熱々の鍋焼きうどん。てっきり、かけうどんの類だとばかり思っていたのに。 「会長、本当にコレで良いんですか?」 「もちろんよ!見なさい、貧相なソーメンと違うこのボリューム、この栄養価!」 鍋焼きうどんの上に乗っている具材を指さして曹叡は言った。野菜、カマボコ、かしわ、卵。確かに栄養価は素麺を軽くしのぐし、体にも良いのは間違いない。 しかし、しかしである。この溶岩の如く煮えたぎる鍋焼きうどん。食べて涼しくなる前に熱さでもだえ死ぬのではないだろうか。 「コレを食べれば、夏バテなんて絶対しないわ!」 ぱきぃん、と勢いよく割り箸を割り、果敢に鍋焼きうどんに挑む曹叡。 確かに夏バテはしないだろう。だがその前に熱さで…やめた。考えても埒があかない。何晏はそう判断しうどんを食べることにした。 じわじわとにじみ出る汗をハンカチで拭き、熱々のうどんをすすり込む。周囲の視線がやや気になるが、なかなか旨いものである。 何分、いや何十分経っただろうか。とにかく二人は鍋焼きうどんを完食した。 顔は汗まみれであるが、二人とも清々しい表情をしている。 何晏の顔をしげしげと覗き込んでいた曹叡が不意に言った。 「………美白」 「は?何のこと?」 「ほら、何晏の顔って白くて綺麗じゃない。それで、それが化粧か地肌かって事でもめたのよ。それを確かめる為に鍋焼きうどんを食べてもらったんだけど…。いいなぁ…美白」 「…で、会長。いくら儲けました?」 「配当8倍で4ま…っっ!」 慌てて口をふさぐ曹叡。だが時既に遅し。何晏は微笑んでいる…ただし、目は笑っていない。 「ごごご…ごめん何晏!悪気は無かったの!つい出来心っていうか………」 「良いですよ、許します。ですが、代わりに………」 びくぅっ、と身を竦める曹叡に、何晏は目に一杯の笑みを浮かべて言った。 「また、鍋焼きうどんおごって下さい。ただし、今度は冬の寒い日に」 「お安い御用よ」 安堵の笑みを浮かべ、曹叡は何晏に微笑み返した。
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