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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
435:★教授 2004/02/25(水) 23:41 ■■ THE EARLY DAY -法正と簡雍- ■■ ▲15:40 法正専用作業室という名の図書準備室 「参ったなぁ…」 法正は鉛筆を動かしながらため息を吐く。しきりに柱時計や腕時計をチェックしながら筆を進めていた。随分と焦っている様子が見て取れる。 傍らには『定軍山攻略報告書』と書かれたA5の用紙が山のように積まれていた。そう、法正は劉備に提出する為の報告書を書いていたのである。メインの活躍を見せた黄忠&厳顔の御姐様コンビは別件でこの場にはいない。法正に言わせてみれば一人の方がスムーズに作業が進むのでむしろいない方がいいらしい…のだが、今回ばかりは後悔していた。 「こんなに報告書があるなんて…予想外だったわ。憲和待たせてるからなー…」 どうやら想像以上の報告書と重なって簡雍と約束をしていたようだ。 待たせたりすっぽかしたりしたらどんな恐ろしい事が待っているか――法正の脳内で想像するには容易い事であった。それ故にのんびり筆を進めている場合ではなかったのだ。 「絶対17時までに完成させなきゃ!」 凝った肩を数回叩くと集中作業モードに以降した―― ▲16:00 某喫茶店 「可愛いバイト雇ってるねー…マスター」 「ははは、よく働いてくれるし助かってるよ」 カウンター席に腰掛けて紅茶を飲む簡雍。その正面で喫茶のマスターが愛想良く話相手になっていた。 「マスター! 私、表を掃除してきます!」 そして、可愛いと評されたバイトの娘さんは照れ隠しかどうかは分からないが、怒りながら箒とちりとりを持って外へ出て行ってしまう。その様子をマスターと簡雍が微笑みながら見送った。 「張任ちゃんも案外照れ屋だからね。あんまり囃したてないでよ」 「マスターの頼みじゃ断われないね」 こんな調子でちっとも待っているという素振りのない簡雍だった。 ▲16:58 法正専用作業室という名の図書準備室 「終わらないっ! 絶対ムリっ!」 壊れかけの法正が冷や汗を流しながら筆を進めていた。自分では頑張っているのだが、思うように作業が進まない。苛立ちと焦りが余計に作業を滞らせるのだ。 別に今日中に提出という訳ではないが、中途半端に残すのも寝覚めが悪い。変な使命感が後押ししながら死に物狂いで報告書を仕上げていく。 しかし、待ち合わせ時間は17時半…柱時計の短針が5になった。 ▲17:27 某喫茶店 「おっそいなー…いつもなら5分前には来てるのに」 小洒落た柱時計を見ながら簡雍がぼやきはじめた。真正面ではマスターが夕刊を、張任が食器を洗っていた。柄無しの赤いエプロンが似合うがどこか家庭的な印象を受ける。 やがて時刻が17時半になると、簡雍はため息を吐いた。その仕草にマスターが新聞から顔を上げる。 「簡雍ちゃん、待ち人来ず…かい?」 「今、約束の時間丁度。もう少しだけ待ってみるよ」 「そうかい。ま、ゆっくり焦らずにね」 「いぇっさー」 ぷらぷらと足を揺らしながら簡雍の目は柱時計を見据えていた―― ▲19:00 法正専用作業室という名の図書準備室 「お、終わったー…」 がたんと椅子から立ち上がり勢い良く背伸びをする法正。その顔は達成感に満ちた何とも爽やかなものだった。 報告書をまとめてファイリングしながらちらりと柱時計を見てため息を吐く。 「流石にこんな時間じゃね…明日憲和に謝らなきゃ…」 何されるか分かったものではないが、仕方ない。自分が蒔いた種だ…と覚悟を決めると、再び大きなため息を吐いて図書準備室の明りを落とした―― ▲20:30 某喫茶店 「………」 簡雍はうっすらと目を開け、顔を上げる。マスターの顔が目に入った。 「おはよう…と、言いたいけど…もう閉店の時間なんだよね」 「やべ…寝ちゃってたのか…」 無造作に頭を掻く簡雍。柱時計に目を遣りため息を吐いた。 そんな簡雍の前に一杯の珈琲が差し出される。珈琲とマスターを交互に見遣る。マスターは微笑するとエプロンを外した。 「それは奢りだよ。ぐいっと飲んで眠気覚ましてから帰りなさい」 「太っ腹だねー…それじゃ、遠慮なくいただきまーす」 丁度、金銭面で四苦八苦してたので珈琲一杯でも随分助かる。簡雍に取っては優しさも立派な渡りに舟にもなっていた。 「それじゃ、マスター。私はこれで失礼します」 張任がエプロンを外しながら奥から出てきた。…どうやらこの店では学生服の上からエプロンで仕事をしているようだ。 「ああ、お疲れ様。明日もよろしくね」 「はい。それじゃ失礼します」 礼儀正しく挨拶をすると入り口から出て行く。実直なその姿は簡雍も魅せられるものがあった。 やがて、珈琲を飲み終える。カップを返却して鞄を掴むと笑顔を見せた。滅多に人には見せない、そんな笑みだった。 「ごちそうさまでした」 ▲21:00 寮前 「はー…随分遅くなっちゃったわ」 とぼとぼと歩く法正。学校を出る頃にはもう真っ暗になってしまっていた。 報告書は科学室で怪しげな発明をしていた諸葛亮に渡してあるから問題無い、取りあえず今日はゆっくり寝て明日の簡雍の襲撃に備えよう――半ば開き直りを見せているようだ。 寮の門をくぐった時だった。目の前に馬超が――鉢合わせてしまっている様子。 「馬超じゃない…何してるのよ、こんな時間に。寮が違うでしょ? もしかして寝ぼけてる?」 「そんな訳ないわよ! 何で『夜はこれから♪』な時間に寝ぼけなきゃならないのさ!」 疲れてるから普段の2割増しで言う事がキツイ法正に何処となく不良じみてきた馬超、姦しい。やがて疲れてる法正が折れる事に。 「まあ…何でもいいけど。早く戻らなくてもいいの?」 「憲和にこの間の漢中での写真貰おうと思ったんだけどな。待ってても帰ってこないから」 「あー…ずっとシャッター切ってたものね…って、今何て言ったの!?」 危うく聞き流しかけた。法正が馬超に詰め寄る。 「え…いや、簡雍いなかったからって…」 「ウソ! じゃ…まだ待ち合わせ場所にいるの…もしかして!」 「ちょ…いてっ!」 法正は馬超を突き飛ばすと踵を返して駆け出した。馬超は門で頭をぶつけて悶絶。馬超1回休み―― ▲22:00 某喫茶店 「………憲和」 閉店した様子の喫茶店の前に立つ法正。明りも消えて人の気配すらしない店内をちょろちょろとカーテンの隙間から覗きこむ。もしかしたら――そう思うと必死になって辺りも探し始めた。 元々は自分が誘ったのに何で一番最初にここに来なかったのだろう、法正は激しく後悔していた。――次の瞬間! 「いつまで待たせるのよ! このバカ法正!」 「きゃっ!」 後ろから鞄で法正の頭を殴った輩に痛そうに頭を押さえて蹲る法正。痛みを堪えながら後ろを振り返ると、そこに立っていたのは簡雍だった。 「憲和…ずっとここにいたの!?」 「待たせすぎ! 自分から誘っておいて…許せないぞ!」 今度はでこぴん。小気味いい音が静かな通りに響いた。 「…ごめん」 額を押さえながら深く頭を下げる法正。流石に悪いと思っているようだ。その姿を見て簡雍も怒るに怒れなくなってしまう。 「…牛丼奢ってくれたら許す」 「…いいの? そんな事で…?」 「お腹空いてるの!」 ふんっと鼻を鳴らすと歩き始める簡雍。慌てて法正も後に続く。 「言い訳しなくていいからなー…来たんだから謝る代わりに奢れよー」 「…味噌汁と玉子も付けるわ」 「んじゃ、手打ちね」 くるりと簡雍が振り返ると法正に微笑みかけた。その笑みを見て法正も自然と笑顔になれていた―― ▲22:30 某牛丼チェーン店 「いらっしゃ…マジ…?」 バイト着に身を包んだ張任に呆気に取られる簡雍と法正。そそくさと外に出て大笑いしていた―― ▲24:00 法正の部屋 「くー…」 「………ぐぅ…」 法正と簡雍が静かに寝息を立てていた。 この後から二人の少し変わった日常が始まる―― 糸売 or 糸冬
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