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478:玉川雄一 2004/05/01(土) 21:45 ◆ 学園世説新語・第六話 〜豪華三本立て! 荀勗の名門でいってみよう!〜 ◆ はぁい、アタシは荀勗。潁川の荀氏っていったらみんなも聞いたことあるんじゃないかな? 自分で言うのもなんだけど、まあちょっとしたお嬢様ってわけなんだなこれが。 …あー違う違うの、別にそんなこと自慢したいんじゃなくて! 今日はね、アタシの実力の程をちょこっとだけご披露しちゃおうってわけ。 清流会の七光りじゃないってところ、よーく見ておいてね。それじゃいってみよー! ★ その1・絶対音感頂上対決! ★ えーと、やっぱり自慢になっちゃうかなあ? アタシってば音感には自信があるのよ。 これは決して思いこみじゃないんだよ? オーケストラ部の人たちだって認めてくれてるんだから。 それで、みんなが使ってる楽器の調律をやったわけよ。 そうそう、どうしても合わせられない音階がひとつあったんだけど、 アタシは以前に趙で聴いたカウベルの音がそれだ!って閃いたの。 さっそく趙の学区からありったけのカウベルを集めてもらって調べたら、 そのものズバリの音が見つかった、なんてこともあったわね。 ちょっとした大仕事だったけど、効果のほどは覿面ね。 試しに演奏してもらったら、これまでよりは確実に音が良くなっていたわ。 微妙な、本当に微妙な差なんだけど、分かる人には分かっちゃうんだな。 『闇解』(これでも褒め言葉よ)なんて呼んでもらっちゃって、悪い気はしない… のだけど。 一人だけ、そうたった一人だけ文句ありそーな顔をしてる娘がいたの! その娘は阮咸。ほら、阮籍っているじゃない? 気分のままに好き放題しててさ、 何様のつもり? ってカンジでアタシは嫌いなんだけど… って、ごめんあそばせ。 その阮籍の従妹なんだけど、悔しいけど音楽のセンスはなかなかのものを持っているのよね。 クラシックギター同好会をやってたりするんだけど、 ズバリ彼女の名前がついた“阮咸”なんてモデルが人気らしくてね。 ううん、別に羨ましいわけじゃないのよ? アタシは他人の実力だって認める…つもりだし。 なにせ彼女も『神解』なんて呼ばれちゃってね、まあ学園でも指折りの音感を持ってるって評判なの。 で、アタシが気に入らないのはよ? 言いたいことがあるんならはっきり言えばいいのに、 アタシの調律した演奏を聴いててもなーんだか文句ありげな顔して黙ってるのよ! あーもうムカつくったらありゃしない! さすがのアタシも腹に据えかねて、 始平棟長に左遷してやったわ。あら、ちょっと意地悪だったかしら? ……でね、ここからはオフレコなんだけど。 倉庫の掃除をしていたら、学園設立のころに使われていたモノサシが見つかったの。 これがまた年代物のくせに、もうこれこそがスタンダードっていう精巧さだったわけよ。 それでこっそり調べてみたら、どうもアタシの調律はびみょーにズレてたんだなこれが。 でもでも、ちょっぴりよちょっぴり! ほんの黍(あわ)一粒分だけだったんだから! …そりゃ、アタシだって完璧ではないってことよ。謙虚にならなきゃね。 でも癪だから阮咸には言わないでおくわ。 ★ その2・違いの分かる女 ★ えーっと… そうそう、たしか、安世(司馬炎のこと)が蒼天会長になってからのことだったんだけど。 ちょっとしたパーティーをしよう、って話になってね、 そしたら安世が趣向を凝らした内容にしよう、とか言い出して、 まああの娘もちょっとかわってるところがあったんだけどさ、タケノコご飯を炊く、ってことになったのよ。 何とも渋い趣向もあったもんだけど、 安世はそりゃもう乗り気で材料の調達やらかまど(本格的!)の手配から指示して回ってたっけ。 さて、当日になってみれば気合いを入れただけあって、出来映えはさすがのものだったわね。 みんなたいがい舌の肥えた(それなりに、ね)連中ばかりだったけど、絶賛の嵐で安世も喜んでたわ。 そこで水を差すつもりはなかったんだけど、アタシは気付いてしまったの。 「これ、使い古しの木を薪にしてかまどの火を焚いてるよね」って。 みんなは信じようとしなかったけど、かまど担当の生徒に訊いてみたらどうしても薪が足りなくて、 古いリヤカー(というか大八車ね)を解体してその車輪の木を使ってたんだって。 どう、アタシの目利きもなかなかのものじゃない? え? 薪が違うと何か影響があるのか、ですって? そりゃアレよ、ご飯の炊きあがりとか、味の染み込み具合とか… だからァ、その辺の微妙な機微がね、違いの分かる女ってやつなのよ! 続く
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