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578:北畠蒼陽 2005/02/19(土) 22:51 [nworo@hotmail.com] 「いや〜、ごめんね、さっきは〜」 孫程と名乗った少女と照れ笑いを浮かべていた。 「ホント、気にしなくていいから」 ここまで謝られると曹騰のほうが恐縮してしまう。 2人は屋上で弁当を広げていた。 孫程も『集団行動』というやつは苦手らしい。 その意味でも収穫、という言い方は正しそうだ。 「いや、私、今でこそカムロやってるけどもともと体育会系だからね〜」 タコさんウィンナーをぱくつきながら、いかにも図書委員的な外見の少女はさらっと体制批判して見せた。 ここまで素直に言われると逆に心配になってくる。 しかし……曹騰は孫程の頭からつま先までをゆっくり見つめた。 カムロの象徴であるオカッパ。 フレームなしのメガネの下のちょっとタレ気味の目。 ほんのちょっとでも力を入れたら折れそうなくらいに細い首。 曹騰よりも小さいのじゃないか、と思わせる胸。 華奢、という言葉以外で言い表せそうにない腕。 すらりと伸びた、といえば聞こえはいいがやせっぽち、とも言いかえられる足。 曹騰はゆっくりと孫程の全身を眺めてから目線をもう一度合わせた。 「体育会系ってうそでしょ?」 「たは〜。まいったなぁ」 孫程は自分の後頭部をぺしん、と叩いて見せた。 体育会系かどうかはともかくとして図書委員ではありえないことだけは納得できた。 「本当ですか!?」 『ただいま〜』の声よりも先に部屋の中から劉保の叫び声にも似たような声が響く。 クエスチョンマークを頭に浮かべながら曹騰は室内に入った。 劉保は少し顔を青ざめさせて電話に向かっていた。 受話器をぎゅっと握り締めている。 「えぇ……えぇ、わかっています」 顔を青ざめさせながら、それでも普通に対応している。 明らかにまずい案件だ…… 曹騰はそう判断し劉保の邪魔にならないよう部屋の隅で着替える。 着替えがようやく終わる頃、劉保の電話がようやく終わった。 電話が終わった瞬間、劉保はソファに倒れこむように座り込んだ。 相当まずい案件であることが伺える。 「ただいま。どうしたの?」 劉保はちらっと曹騰の顔を見て、再びうなだれた。 「おかえりなさい……」 そして意を決したように、それでも目を伏せたままぼそぼそと言った。 「摯實長がご病気で副会長を辞任なさるそうよ。階級章もすでに返上なさったんだって……」 予想以上にとびっきりまずい案件だった。
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