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582:北畠蒼陽 2005/02/25(金) 20:52 [nworo@hotmail.com] 「劉保、それは間違ってるよ。彼女は決定的に悪い」 曹騰が劉保のほうに視線も向けずに使者を睨みつけながら言い捨てる。 「決定的に『運』が悪いんだ。梁商さんも私も……機嫌の悪いところにこの部屋に来てしまったんだから」 「曹騰さんの仰るとおりですね。今ならどんなに無様に土下座されても許さない自信がありますよ」 曹騰と梁商、2人の腹心の言葉に……それでも劉保は言った。 「お願い。やめてあげて」 部屋を沈黙が支配する。 「2人がなにに怒っているのか、わかるつもりです。でも、やめて、あげて」 曹騰は憎々しそうに目線を落とした。 梁商は竹刀を床に叩きつけた。 そして…… 劉保はただの劉保になった。 次期蒼天会長から済陰の君、というなんの権限もないただの名誉職に格下げされた劉保は、それでも表面上だけでも明るく振舞っていた。 曹騰も梁商もその明るさにずいぶんと助けられた。 くる日もくる日も好きなだけ勉強をし、好きなだけ体を動かし…… 権力という鎖から解き放たれ…… それはそれで楽しい日々だった。 1ヶ月が過ぎた。 安サマが急病のために引退を宣言した。 「……蒼天会長の引退を新聞で知る羽目になるとはね」 曹騰が苦笑しながら蒼天通信を梁商に放った。 「まぁ、1ヶ月前であれば考えられないことですね」 肩をすくめながら新聞を受け取り、トップページを開く。 「ふ〜ん、ヘルニアですか」 どうでもよさそうに新聞をナナメ読みして梁商が呟く。 「腰痛い、とか言われてもねぇ」 曹騰が苦笑を返す。 制服を着た劉保が奥の部屋から姿を現したのはそのときだった。 「おや? 劉保、どっかいくの?」 曹騰が見咎める。 梁商も不思議そうな顔を劉保に向けた。 「えぇ……季興さんもついてきてください」 「いいけど……どこいくん?」 不思議そうな曹騰に……決心をこめて劉保は言い切った。 「安サマの……お姉さまのお見舞いに行きます」
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