下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
627:海月 亮 2005/03/18(金) 18:16 自作品について、泣き言をひとつ。 結局のところ、初心者スレで呉派を宣言して入って来た以上、どうしても作品の方向性が呉に偏らざるを得ないのですよ、ワタクシ。 ただ、それだけですから。ええ。 でも次はそろそろ、蒼天会で何か書きたい気分…陳矯か、陳泰&昜あたりで。 北畠様へ。 >メール つかこちらこそ、返信が随分遅れて面目次第も(以下略 もしかしたら、おいらのは宛名が本名になってる可能性が(オイ >孫権たん 海月のなかでは大体、(シラフのときは)あんなイメージなんですよ。 あれが二宮の変の頃になるとどうコワれていくか、想像するだけでも萌えると思いませんか? >毋丘倹と毋丘秀 仲恭ねーさん哀れすぎ…。 個人的には泣きながら走り去る胡遵がツボです。なんか、絵ぇ描けそうなくらいはっきり想像できました(w あと、どもり昜と暴走諸葛誕もいい味出てますなぁ〜。
628:★ぐっこ@管理人 2005/03/22(火) 01:35 >卒業 。・゚・(ノД`)・゚・ そうですよねっ!袁紹は曹操にとって、長年世話になったお姉さまですもの!グランスールですもの! 許攸…難しいキャラですよねえ(^_^;) リヨみての中では白薔薇っぽい立ち位置にいますが。彼女の場合、「おこった事」の解説 (言い訳ともいう)は天才的。難解な事態に遭遇しても、蕩々と現状分析とかするから、 みんなそれに感心して、よほどの鬼謀の女と思い込むのですが、実は「これから起こる事」 の予測は凡人レベルだったり。荀揩竓s嘉たちとの決定的な差ですな。 袁紹や袁術は、それぞれ財閥の後継者として巣立ち、例えば荀揩ネんかは、後に天才 経営コンサルタントとして、財界に名を馳せることになったり。 曹操と劉備はどうなるんだろ(^_^;) >王凌 なるほど…。最後まで読んで、王允の亡霊の意味がわかりました〜 太原王氏も含め、このへんの王姓のひとってややこしいなあ(^_^;) 揃いも揃って高官になってるし…久々に辞書読み返して再確認…。 そういや王淩も、叛乱を起こす直前まで、三議長のポストを歴任するほどの大物だったのですね… >牛金 そういえば今週の蒼天。・゚・(ノД`)・゚・ 牛金ネタといえばhttp://gukko123.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/12ch/read.cgi?bbs=sangoku&key=1036208714&ls=50 あたりが懐かしい。 彼女も曹仁の下で相当に鍛えられて、司馬姉妹に恐怖されるほどの女傑に成長したっぽい。 牛氏の小吏に関する真偽はさておき、学三的には彼女をピックアップしたいところ( ゚Д゚)! >銀幡流儀 大作乙( ゚Д゚)! むう、シーンとしてはあのへんか! 魏は魏で、呉は呉で色々あるんだなあ、というドラマが詰め込まれてるシーンんになって ますやね〜。 まだまだ甘寧に貫目が足りない凌統はもとより、丁奉が健気な後輩ってのもいいなあ〜。 この暴風娘甘寧の姉貴分である呂蒙が、登場しないぶん頼もしく感じる… でも、学三の戦闘、もうちとソフトのがいいかも… >同期の説得とか ワロタ。みんな個性がある…つうか毋丘秀いい娘や…(´Д⊂ そういや彼女だけなんとか 逃げ延びるあたりがまたツボ。 個人的には諸葛誕の「死んじゃえー」がヒット。さすがは諸葛たん! 全てにツッコミを入れてる王基のキャラに、新しい何かをかんじますた。 >議論 …(-_-) >棟の範囲 ケースバイケースになりますねえ(^_^;) 特に魏呉の国境あたりは校区が入り乱れてるから特に…
629:海月 亮 2005/03/22(火) 22:01 >戦闘 ………………気がついたら結局殴り合いしか書いていないという。 「学園モノ」ならでは、という対決を考えつけない未熟者ゆえ…_| ̄| ...○オユルシヲ このあたりはもちっと考えて然るべきところですよね。 樊城の曹仁vs関羽とか、漢中攻略とか、まだ誰もSSでやってない戦役も多いことですし、そのあたりで何か考えてみようかと思います。 どこかで水泳大会とかやってみたいなぁ…孫策の江南平定戦とかどうかなぁ…むぅぅ。 あと、ここでの争論も原因は私…狼藉の数々、平にご容赦の程を…。
630:★ぐっこ@管理人 2005/03/28(月) 00:58 いえいえオキニなさらず〜。 というかアレです、最近リヨみてとかで、マターリした学園モノが念頭にあるから。 でもまあ、基本的に女の子同士の喧嘩ですから、流血とか骨折とかは無しで、 コミック時空よろしく、「吹っ飛ばす」くらいの流れの方がよいかなあ、と(^_^;)
631:国重高暁 2005/05/21(土) 18:12 ■■ シ水関 ■■ 劉備・関羽・張飛が蒼天学園高等部へ進んだ頃、その内側はかなり荒れていた。 涼州校区総代だった董卓が、生徒会執行部員十名の追放を口実に洛陽棟へ入り、一挙に学園の主機能を制圧し、蒼天会長を少さまから献さまへすげ替えるなどの暴威を振るったのである。 これをみて、陳留棟の曹操は中華市内各地へ檄を飛ばし、南皮棟の袁紹らと「董卓追討軍」を結成。横河の南岸のシ水関で衝突したが、苦戦を強いられ、果ては敵将・華雄により、孫堅軍の剛勇・祖茂をリタイアさせられたのであった。 「たれか、あいつを飛ばせる娘はいないの?」 追討軍の盟主・袁紹が、本陣全体を見渡して号令した。と、そこへ、冀州校区総代・韓馥の部下、潘鳳が進み出て言う。 「俺が飛ばしてやるぜ!」 「頼もしいですね。では、お任せしましょう」 癒し系の声援を受け、彼女は戦場へ飛び出した。 「行くぜ!」 気合一閃、模造刀を振るって斬りかかった次の瞬間。 (き……消えちまった?!) 何と! 相手の姿が、視界から外れたではないか。 (全く、あんたは猪武者ね) 華雄は、潘鳳の切先をかわし、背後へ回り込んでいた。そして、自分の模造刀で、うろたえる彼女を袈裟懸けに斬った。葛餅みたいに三角に……はならなかったが、それでもうつ伏せにばったり倒れた。 「じゃ、これはもらっていくわ」 華雄は、潘鳳の階級章を引きちぎり、横河へ向かって思い切り投げ捨てたのである。 「たれか、あいつを飛ばせる娘はいないの?」 袁紹は、再び本陣全体を見渡して号令した。と、そこへ、彼女の異母妹・袁術の部下、兪渉が進み出て言う。 「先輩、わたしにお願いできないでしょうか?」 「では、あなたが潘鳳さんのリベンジを果たすというのですね」 「はい。この兪渉、必ず、あの娘を飛ばしてまいります!」 不退転の決意と共に、彼女は出陣した。 「先輩、胸を借りさせていただきます」 両手両足をおっ広げ、ちらちらと誘いの隙を見せる。 (もらったわ!) 挑発された華雄は、模造刀を振るって斬りかかったが、それが相手の思う壺。先刻とあべこべに、自分がバックを取られる破目となった。 (見せましょう。わたしたち、柔道部員の力を……) 兪渉は、腕をフックし、担ごうとする。 (甘い!) これをみて、華雄は右足を振り上げ、恥骨結合の辺りをぼかんと蹴りつけた。相手がびっこを引いて飛びのくと、容赦なく鉄拳制裁を食らわす。 「人の三大急所、それは眉間・鳩尾・恥骨接合よ。覚えときなさい!」 彼女は、仰向けに倒れた兪渉の階級章を引きちぎり、横河へ向かって思い切り投げ捨てたのであった。 「たれか、あいつを飛ばせる娘はいないの?」 袁紹は、三たび本陣全体を見渡して号令した。 「本初ちゃん、あんたの部下を出したら?」 と提案したのは、傍らにいた曹操。彼女とは、幼馴染で同級生の間柄である。 「いえ、それが、その……わが冀州校区の誇る『ソードマスター』と『ナイトマスター』が、まだここへ到着しておりませんので……」 袁紹は、歯噛みしてそう言った。 こんな彼女たちの会話を、本陣の片隅で聴いていた三人娘がある。 「何や、かったるいな……」 最も小柄な、ショートカットの眼鏡っ娘が、大きく伸びをしてそう言った。 「姉者、いかがなされた?」 最も大柄な、ストレートロングの少女が問う。 「どないしたもこないしたもあるかい。本初先輩の派遣した娘が、あっちうまに二人も飛ばされて……うち、もう観ちゃおれんのや」 「よし、ほな、うちがやっつけたる!」 立ち上がるなり、右手を高々と挙げて叫んだのは、両者の向かいに座っていたツインテールの少女である。 「益徳、行くな!」 やにわにその場を離れようとする彼女の袖を引き、ストレートロングが警告した。 「何でやねん?」 「あの娘は腕っ節も強いが、頭脳プレーもできる。お前のような猪武者では危ない」 「はあ、さよか……」 ツインテールがしおしお引き返す。入れ替わりに、ショートカットがストレートロングへ近づいて言う。 「雲長、どないする?」 「姉者、お任せくだされ。私には、あの娘を飛ばす自信がある。早速、本初先輩へ掛け合うといたそう」 寸考ののち、ショートカットはぽんと手を打って答えた。 「よし、ここはあんたに頼も。ほな、飛ばされんように頑張りや!」 ストレートロングは小さくうなずき、袁紹の元へ馳せ参じたのである。 「見慣れない娘ですね……あなたは、一体たれなのでしょう?」 盟主の問いに答え、かの少女は自己紹介をした。 「私は、姓を関、名を羽、字を雲長と申す者。平原棟の弓道部長を務めておる」 「平原棟といえば……玄徳さんのところですね」 「いかにも」 「わかりました。それはそうと、この私に何の御用でしょう?」 関羽は、戦場の華雄を指して言った。 「当方、あの娘の階級章を剥奪したいと存ずる」 「何ですって?!」 驚いたのは袁紹である。幾ら平原棟長・劉備の義妹といっても、身分の低い者を前線へ出すわけにはいかない。 「ちょっと、地位をわきまえてくださいません?」 「身分などどうでもいい。私には、あの娘を飛ばす自信がある」 「とはいえ、うかつにあなたを派遣いたしますと……」 悩んでいるところへ、曹操が再び首を突っ込んだ。 「本初ちゃん、この娘は闘いたくてうずうずしてるわ。罪を糾すなら、負けて逃げ帰ってからでも遅くはないわね」 寸考ののち、袁紹は答えて言う。 「わかりました。あなたがそうおっしゃるなら、私も従いましょう」 そして、温かい緑茶の缶を関羽へ差し出した。 「雲長さん、景気付けに飲んではいかがですか?」 「いや、今はいらん。まず、あの娘を飛ばしてからいただくとしよう」 彼女は、袁紹のもてなしをはねつけ、凛々と戦場へ向かったのである。 腰の模造刀を抜き、関羽と華雄は身構えた。互いの眼が光る。 「華雄先輩、階級章は奪わせていただく!」 「さあ、それはどうかしら?」 と、先に仕掛けたのは相手方であった。 「わが刃、受けなさい! 燕返し!」 右腕一本で模造刀を持った華雄が、体をぶん回しながら斬りかかる。 ジャキーン! 互いの刃が触れた次の瞬間、彼女は仰向けに倒れていた。必殺の「燕返し」を関羽に受け止められ、頚動脈を斬られたのである。 (な、何という強さ……) あわれ、華雄は階級章を剥奪され、永久に蒼天学園の歴史から除去されたのであった。 大きな戦利品を手に、関羽は本陣へ舞い戻った。 「お帰り。結果はどないやった?」 「うち、それだけを気にしとってん……」 劉備や張飛から声がかかる中、彼女は華雄の階級章を提示する。 「わお、華雄先輩の階級章やないか!」 「ほんまや……ほんまに、華雄先輩の階級章や……」 しばし茫然とする両者を差し置き、関羽は袁紹の元へ向かった。 「当方、約束どおり、あの娘を飛ばしてまいった」 「何ですって?!」 盟主も驚きを隠せない。何しろ、既に友軍武将を三人も飛ばされたのだから。 「ちょっと、冗談は止してくださいません?」 「冗談ではない。彼女の階級章がここにござる」 と、関羽は後ろ手に握っていた物を提示した。 「な、何と! あ、あなたが華雄さんを……い、一介の棟長の部下にすぎないあなたが、よくも、まあ……」 不快感を覚えた袁紹が、彼女へ撃ちかかろうとすると、曹操が割り込んで制止した。 「本初ちゃん、あたしの言ったとおりでしょ? 『罪を糾すなら、負けて逃げ帰ってからでも遅くはない』って」 そして、乳房の間から、先刻の缶入り緑茶を取り出す。 「これ、懐で保温しといたわ。さあ、一気に飲み干しなさい」 「かたじけのうござる。では、お言葉に甘えて……」 関羽は、軽くタブを開け、両手で缶を奉げ持ち、まだ冷めていない緑茶をキューッと空けた。彼女の傍らには、華雄から奪った階級章が投棄されていた。 糸冬
632:国重高暁 2005/05/21(土) 18:14 いかがでしたでしょうか。 当方としては、約七ヶ月ぶりのSSとなります。 虎牢関の戦いについては、既に新・参・者さんが 書いていらっしゃいますが……こちらは、それに 先行する「シ水関の戦い」を小説化してみました。 なお、潘鳳・兪渉の出撃順は、演義とあべこべに してあります。 以上、国重でございました。
633:海月 亮 2005/05/24(火) 22:22 -水際の小覇王- 「暇だねぇ…」 揚州学区の中心地、寿春棟の屋上に少女がひとり、大の字になって流れる雲を見上げていた。 スタイルには難があるが、顔立ちそのものは十分に美少女の範疇に入るだろう。明るい栗色の髪をショートに切り、見た感じも少年のようである。 少女の名は孫策、字を伯符。 かつて荊州学区は長沙棟を中心に、様々な暴動を鎮圧して名をあげ、反董卓連合軍でもその人ありといわれた孫堅の妹である。 司隷特別校区における一連の騒乱が沈静化してきた頃、孫堅は荊州学区の覇権を賭け、襄陽棟において権勢を振るう劉表と妨害、直接攻撃何でもありのトライアスロンで対決したのだが…あと僅かで勝利、というところで劉表側の仕掛けたトラップに引っかかり、高さ数十メートルの崖に落ちて大怪我し、引退を余儀なくされてしまった。 普通の人間なら死んでるだろうが、それでも何の後遺症もなく、二月ほどベッドの上に居ただけで済んだのが彼女の凄い所だ。 とはいえ、この事件で孫堅の軍団は瓦解してしまう。その妹達を取りまとめることになった孫策は、彼女等を比較的騒乱の影響が少ない曲阿寮に留め置くと、数ヶ月前からここ寿春棟を支配する袁術のもとに厄介になっていた。 何をするでもなく、ただぼーっと空を眺める孫策の視界を、ひとりの少女が遮った。年の頃は孫策とさほど変わらない、ちょっとキツめの顔に散切りの黒髪を載せたその少女は、皮肉めいた笑みを浮かべる。 「なによ伯符、またこんなことろでふててるの?」 「別にぃ」 孫策はその顔を避けるように寝返りを打つ。しかし、少女はその動きを見透かしたかのように一瞬早くその視線の先に自分の顔をもってきた。逆に返しても、その先には変わらぬ表情が待っている。 「…なぁ君理…あたしの顔なんか見てて楽しいか?」 呆れ顔の孫策。君理と呼ばれた少女は、その傍らに腰掛けた。 君理こと、朱治は揚州学区でも名門の一族の子息である。孫策の姉・孫堅が作り上げた軍団の若手として課外活動に参加していたが、軍団瓦解後は呂範、孫河らと一緒になって、孫策と行動を共にしていた。 「人に話をしたいときはその人の顔をちゃんと見なさいっていうのが、うちの父ちゃんの口癖でね。親孝行なあたしとしては、何時でもそれを実践するよう心がけてんのよ」 「自分で言うなっての」 孫策は苦笑して、その身体を起こして座り直す。 「で? その親孝行な君理さんが、このヒマ人に何の御用で?」 「御用もへったくれもないわよ…伯符、あんた何時までこんなところでくすぶってるつもり?」 朱治の表情から、笑みが消えて真剣なものにかわる。 「聞いたわよ、慮江の話。あのバカ令嬢、またあんたとの約束破ったんでしょ」 「毎度のこった。いちいち腹立ててられるかよ」 再び仰向けに寝転がる孫策の顔を、朱治は覗き込んだ。 「…ねぇ伯符、あんた何時まで袁術の飼い犬で居るつもり? いっておくけど、あんなバカが好き勝手やってられなくなるのも時間の問題よ」 「そうだな…でも、姉貴の軍団は散り散り、あたしに独り立ちできる基盤もない…せめて、袁術お嬢様から手下をパクる材料があれば…?」 そこまで言った時点で、何かを思い出したように跳ね起きた。唐突だったので朱治は吃驚して、 「きゃ…! な、何よ伯符」 「ある…あるぞ、あのドケチから兵隊をふんだくる方法が!」 嬉々とした表情の孫策に、朱治はその意味を図りかねて小首を傾げる。 「ちょ…どういう事?」 「へへっ、まぁ、今に解るさ」 怪訝な表情の朱治を尻目に、孫策はおもむろに立ち上がり、その場を立ち去った。
634:海月 亮 2005/05/24(火) 22:23 「兵を借りたい?」 「ええ」 それからすぐ、孫策は袁術に面会の約束を取り付け、会うなりそう切り出した。 「従姉妹の呉景たちが今、丹陽地区で劉ヨウの圧力に苦しめられているのを、助けてやりたいんです。貴方にとっても、劉ヨウは勢力拡大の障害。悪い提案ではないと思いますけど」 ふぅん、と怪訝そうに鼻を鳴らす袁術。袁術としても、勢力拡大の手駒として孫策の存在は魅力的であったに違いない。 しかし、孫策の能力を知っているだけに、あまり大きな力を持たせるのは危険であることも、袁術は理解していた。このあたり、袁術がただのタカビーお嬢様ではないことを良く物語っているが…同時に、それが彼女の器の限界でもあった。 「でもねぇ…今徐州攻めの計画が進行中で、余分な労力を割く余裕なんてないですわ」 「ほんの数人で構いません。あとは、道すがら頭数を集めますから」 「う〜ん」 あくまでとぼけた感じで答えを渋る袁術。しかし、孫策にとってはそんなことも想定内の反応だ。 「まぁ、ご信用ならないのも無理もない話です。こちらもただで、とは申しませんよ。あたしの姉がかつて洛陽棟に一番乗りを果たした際、校舎の片隅で見つけた蒼天会のマスターキー、質として献上いたしましょう」 懐から袋を取り出し、中から一枚のカードキーを捧げ出す。 それを見た瞬間、袁術の顔は瞬時に綻んだ。 「え? 私にこれを?」 「歯牙無い居候の身が持っていても役に立たないものです。これを代賞とし、是非貴方の厚恩に対する恩返しの機会を与えていただければ、それ以上のことはありません」 その、由緒ある品物を手渡された袁術は、もはやそれを手に入れた喜びで頭が一杯になりかけていた。辛うじて保っていた僅かな理性でも、長湖周辺地区の勢力を孫策が平らげきれないだろうという考えしか出てこなかった。 「仕方ないですわね〜…でしたら、部下として三十名、貴方に預けて差し上げますわ。それに今確か、蒼天学園水泳部長のポストが空いていた筈…蒼天会に掛け合って、そのポストに就けるよう、取り計らいますわ。そうすれば、討伐遠征主将としての名目も立ちますわね?」 「勿論です…破格の待遇、痛み入ります」 恭しく一礼する孫策、その顔には「してやったり」の表情が張り付いていた。 「はぁ!? あんたいったい、何考えてるのよっ!」 水泳部長の認定を表すバッジを階級章の脇につけた孫策を迎えた朱治の第一声が、それだった。 「随分な言われ様だなぁ…要らないものを要るものに変えてもらっただけだぜ、あたしは」 「だからって…だからって何も蒼天会のマスターキーを渡すことないじゃない!」 「だって此処にいる分にはまったく使い道なんてないし、思いうかばないし」 孫策の言うことも、あんまりといえばあんまりな言葉である。 蒼天会のマスターキーといえば、東西南北へ広大に広がる蒼天学園都市の、いわば最大権力者の証。確かに司隷特別校区から遠く離れた一校区支配者にとっては、その実際の大きさからは想像もできないほど重い。ましてやそんな一校区の支配者の下に飼われているような身分であればなおさらだ。 そう言う意味で言えば、孫策の言い分も理解できないこともない。もっとも、孫策自身はカードキー一枚“ごとき”にどうしてそんなに大騒ぎしなければならないのかあまり解っていないようだったが。 この思い切りの良さだとか、物怖じしないようなところは彼女の長所でもあることは朱治も解っている。それでも、使い方次第では“天下取りの特急券”にもなるマスターキーをこんなにあっさり手放してしまったことを惜しくも思っていた。孫策の天運、天賦を考えればなおさらのこと…朱治は心底残念そうに項垂れた。 「それにしたって…くれてやる相手が違うよ。あいつがそんなの持ったら何仕出かすか…」 だが、孫策は真顔で言った。 「あたしが欲しいのはあんなちっぽけなものじゃない…この学園の覇権、そのものだ」 「伯符…あんた」 「抜け殻になった権力の象徴なんて要らないんだ…そんなの、欲しいヤツにくれてやればいい。今の公路お嬢様にこそ、お似合いだよ」 手摺りにもたれ、掻き揚げた前髪をそっと風が薙いでいく。 「あたしは手始めに、この地に覇を唱えてみせる。姉貴がやれなかったことを、あたしは存分にやってみたい」 「…伯符」 「それにさ」 振り向いた孫策が、不意にいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべた。 「本当に必要になれば、きっとまた戻ってくるんじゃないかな、ああいうのってさ?」 その笑顔が妙に眩しかったのは、照り返した太陽の光のせいじゃないように、朱治は思った。 その笑顔につられるように、彼女も微笑んだ。 「そうだね…あんたなら、またきっと手に入れちゃうかもね、あれくらい」 「そう言うこった」 朱治も孫策に倣って、手摺りにもたれて吹く風に身を任せてみた。 心地よい風。 「一応な、散り散りになってた連中とかにも声掛けたよ。子衡や伯海も来るし、徳謀さん達とは途中合流だ」 「そっか…じゃあまた、賑やかになるね」 「ああ、そうだな」 こんな風に、これから隣の少女が巻き起こす“風”に身を任せてみたら、きっともっと凄いだろう。 「さ、そろそろ出かけようぜ…あたし達の、天下を獲りに!」 「ええ!」 互いの拳を突き合わせた少女ふたり。 その眼下には、いくつもの水路が蒼く彩る揚州学区と、広大な長湖が広がっていた。
635:海月 亮 2005/05/24(火) 22:48 うおー、二ヶ月ぶりになんか書いてみたー(゚∀゚) てなわけで、海月です。 同じシーンでは居たはずの呂範がいなかったりとか、 話的には相方はむしろ周瑜のほうがしっくり来るんじゃないかとか、 袁術のキャラがえらく薄味な感じがするだとか… 久しぶりにやった割にはあまり覇気が感じられない作品だな_| ̄|○ >国重さま お初にお目にかかります…(<今ごろかよ!)海月というケチなモノ書きもどきでございます。 いや、もうなんと申しましょうか、曹操の行動がナイスですね(´ー`)b てか関さんもツッコミなしですか。さらしと流して飲み干しちゃうとこが更にいいです…すいません、真面目な話なのにヘンなトコばかり見てしまって(つД`)
636:北畠蒼陽 2005/06/05(日) 22:03 [nworo@hotmail] 飢狼の血族 「あんた、呂布に私と戦うな、っていったらしいね?」 烈女と呼ばれ、学園にその名をとどろかせた少女が両の指をぽきぽきと鳴らしながら横を静かに歩くその少女に語りかけた。 真っ暗で人気のない廊下。 月明かりが窓から差し込んでくる。 「ねぇ……」 少女……姉が無実の罪で陥れられたとき自分のチーム、たった十数人を率いて倍以上の数の護送者に囲まれた姉を助け、張角の乱では陶謙に従いそれを打ち破った武勇の人。のちに琅邪棟長の蕭建が呂布の脅迫を受け、その圧力に屈したとき、それに反発し蕭建をトばした硬骨の人。またそのまま蕭建の守っていた校舎に立て籠もり呂布の猛攻を守りきった知略の人……数々の賛美で彩られながら面白くなさそうな目で月の明かりを睨みつける少女、臧覇は感情を浮かべないまま自分の横でぴったりと歩む少女を見る。 臧覇は呂布と敵対し、しかしまた和睦した。 今、この下ヒ棟まで出向きこれからの方策について話し合ってきたところだ、が…… 臧覇は人知れずため息をついた。 自分の横にいる少女はこの世の中になにも冗談がない、というような眼をして前だけを見ている。 呂布が今、ここでこの少女に臧覇をトばせ、と命令すれば少女は一瞬すら迷わずにそれを実行するだろう。 それでなくても少女のその鍛え上げられた体は歴戦の臧覇すら引くものであった。 つまり、これは……呂布はまだ自分を信用してない、ってことか。 私をこうして威圧して屈服できないようにするつもりか。 2回目のため息。 信用しないのなら盟約など結ばなければいい。盟約を結んだからには骨まで信用してほしいものだ。 臧覇は心のうちで自分の理論を展開し、憤慨する。 「……多方面に敵を抱えた状態で呂布さんにあなただけを見ることは危険だ、と思っただけです」 「?」 臧覇はきょとんとした顔でどこからか聞こえてきた声の主を探した。 廊下には自分たち2人以外誰もいない。 ということは…… 「今、しゃべったの……もしかしてあんた?」 大柄な少女、高順はさっきまで無表情だった顔を少し照れたように歪ませながら一度だけ頷いた。
上
前
次
1-
新
書
写
板
AA
設
索
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★ http://gukko.net/i0ch/test/read.cgi/gaksan2/1013010064/l50