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722:北畠蒼陽2005/07/10(日) 00:17 [nworo@hotmail.com]
……残りは文舒。
……だがこれは難敵だ。
毋丘倹と別れ、王基は廊下を走る。
どこにいるか想像もつかないがどこにいたとしてもおかしくない。
王基は長い付き合いの親友に思いを馳せる。
……文舒なら絶対にありとあらゆる策略を駆使して自分を葬り去ろうとすることだろう。
王基は考えながら走り……
前方から旅館の仲居さんが歩いてきた。
ぶつかるのもアレなので王基は走るスピードを少しだけ落とそうと……
「……ッ!?」
バランスを崩しながらも仲居さんが投じる枕を避けた。
「……なるほど。そうきたか」
「ま、着替えちゃダメ、ってルールもなかったしね」
仲居さんから着物を借りたのであろう、にやにやと王昶が笑う。
……まずいな。
心の中で王基が思う。
さっき枕を無理に避けたから、あまりにも体勢が悪すぎる。だが姿勢を直そうとする隙を見逃してくれるほど甘い相手ではない。
王昶はふ、と唇の端だけで笑いながら枕を持つ右手を下ろし、なにも持たない左手を上げる。
「……?」
いぶかしそうな表情の王基にくいくいと手首だけで挑発。
「待っててあげるから体勢立て直しなさい」
……なにを考えているのかわからない。
……でも彼女がなにを考えてるか想像して泥沼にはまるよりはマシか。
王基はゆっくりと体勢を立て直し、構えを取る。
「……礼はいわないからね」
「言ってほしくもない」
対峙する2人。
「……でもそんな優しい文舒に選択肢をあげる。Bチームはあとあなた1人だけ。降参するなら枕をぶつけないでおいてあげるけど?」
「わぁ、嬉しい。断ったらどうなるのかな?」
お互いに会話を楽しむ風を装いながら相手の隙を探そうとする。
「……そうね。断った場合は……何世紀も変わらない措置を繰り返すことになるわ」
「やれやれ……肉体労働は苦手なんだけどなぁ」
王昶は苦笑しながら背を丸め……左足を少し前に出し、手をだらんと下げた構えをとる。
右手にはしっかりと枕が握られ……
……なるほど。王昶はホンキってわけだ。
……恐らくあの体制から一瞬で間合いを詰めながら振りかぶった枕で攻撃してくるつもりなのだろう。
王基には王昶の攻撃までの動きがありありと脳裏に浮かんで見えた。
……だったら王昶が動いた瞬間、機先を制して枕を投擲する。
王基の心は決まり……そしてお互いが相手の動きを待つ……
ふ、と王昶の目が驚いたように見開かれ、伸び上がって左手を振った。
王基の後ろにいる『誰か』に合図するように。
……誰!?
王基の集中力が一瞬削がれ……
それが致命傷になった。
気づいたとき、王昶の顔がほんの目の前にあり……
「もうBチームは私1人だー、ってさっき言ってたじゃん」
優しくすら聞こえる言葉と同時に王昶は右手の枕をぽん、と王基の肩に当てた。
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